被扶養者に対する給付
健康保険に加入していれば、病気やケガなどのときに、治療代金などに対する保険給付が行われますが、その被扶養者についても保険給付が行われます。
被扶養者の範囲
被扶養者というのは健康保険の用語です。一般的には扶養家族と言い、配偶者や子どものことを言いますが、健康保険の被扶養者はわりに広い範囲の親族が含まれます。
基本的には被保険者の三親等以内の親族です。被保険者の直系尊属(自分の祖父母、曾祖父母)、配偶者子(自分とは血縁の無い子)、孫、弟妹、兄姉です。
戸籍上婚姻の届出はしていないが事実上婚姻関係と同様の配偶者については配偶者本人、その父母および子も被扶養者になります。
血縁関係が遠くなると、同居が条件になる場合があります。被保険者の直系尊属、配偶者(事実上婚姻関係と同様の人を含む)、子、孫、兄弟姉妹については、必ずしも同居している必要はありません。
国内に居住している必要があります。住民票が国内にあれば原則として要件を満たします。留学生や赴任する者の家族などは、日本に住所を有しない場合でも、日本に生活の基礎があると認められる場合は、省令に規定する条件に合致すれば認められます。
生計維持の関係
上記の親族関係にあっても収入があるなど独立して家計を維持している人は被扶養者になれません。
「主として被保険者に生計を維持されている人」という条件があります。
これは、被保険者の収入により、その人の暮らしが成り立っていることを意味するのですが、被保険者といっしょに生活をしていなくてもかまいません。別居でも認められます。ただし、以下のような収入による判断基準があります。
同一世帯に属している場合の収入基準
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者の年間収入の2分の1未満である場合は被扶養者となります。
上記に該当しない場合であっても、被保険者の年間収入を上回らない場合には、被扶養者となる場合があります。
同一世帯に属していない場合の収入基準
認定対象者の年間収入が130万円未満(認定対象者が60歳以上またはおおむね障害厚生年金を受けられる程度の障害者の場合は180万円未満)であって、かつ、被保険者からの援助による収入額(いわゆる仕送りの額です)より少ない場合には、被扶養者となります。
19歳から22歳までの被扶養者の認定要件
健康保険の19歳から22歳までの被扶養者の認定要件は、令和7年(2025年)10月1日より年間収入の基準が変更になっています。
主な変更点は以下の通りです。
- 対象者: 19歳以上23歳未満の親族(被保険者の配偶者および事実婚の配偶者に相当する者を除く)
- 適用開始日: 令和7年(2025年)10月1日以降の扶養認定日
- 年間収入要件の変更:
- 現行: 130万円未満
- 改正後: 150万円未満
その他の要件(生計維持関係など)に変更はありません。また、「学生であること」は要件に含まれません。年齢は、扶養認定日が属する年の12月31日時点の年齢で判定されます。具体的な手続きや詳細については、ご加入の健康保険組合や日本年金機構の情報を確認してください。
扶養から外れる場合
75歳になると、後期高齢者医療制度の被保険者になるので、健康保険の被扶養者になれません。なっていた人は外れます。
被扶養者だった人が就職して自身が被保険者になったり、別居や離婚等で生計が別になったり、収入が基準以上に増えたときは被扶養者から外す手続きをとらなければなりません。
協会けんぽの場合は、「被扶養者資格再確認について」が10月下旬頃に送られてきます。収入等をしっかり確認して提出しましょう。
年間収入の判定方法の変更(2026年(令和8年)4月1日)
変更内容
健康保険の被扶養者認定における年間収入の判定方法について変更が予定されています。この変更は、2026年(令和8年)4月1日以降の扶養認定日より適用されます。
現在の認定基準では、原則として「今後1年間の収入の見込み」により年間収入を判定しています。
これが、2026年4月1日以降に認定を受ける方については、以下の方法に変わります。
| 現行の判定方法 | 2026年4月1日以降の判定方法 | |
|---|---|---|
| 判定基準 | 過去の収入、現在の収入、将来見込みなどを総合的に勘案し、「今後1年間の収入の見込み」で判断。 | 「労働契約で定められた賃金から見込まれる年間収入」で判断(他の収入が見込まれない場合)。 |
実務上の留意点
この変更に伴い、年間収入が基準額(130万円未満など)未満であることを確認するために、労働契約の内容が分かる書類の提出が求められるようになります。
- 提出書類の例: 労働条件通知書など、労働契約の内容が分かる書類。
- 確認事項: 認定対象者が「給与収入のみである」旨の申立てを行い、その内容が確認されます。
- 労働条件の変更: 労働契約の内容に変更があった場合は、変更後の内容に基づき、都度、書類の提出が必要となります。
この改正は、年間収入が恒常的に基準額未満であることをより明確に確認できるようにすることを目的としています。
恒常的に基準額未満であることをより明確に確認とは?
「年間収入が恒常的に基準額未満であることをより明確に確認」という点について、説明します。
この変更の背景には、主に以下の点があります。
「恒常的」な収入の明確化
今までの判定では、過去の収入や現在の状況などから「今後1年間」の収入を予測していました。この予測には、例えばアルバイト代の急な増加や減少などが影響し、実際の働き方が変わっていないのに、一時的に扶養を外れる/入れるといった状況が起こり得ました。
判定の予見性の向上
2026年4月以降は、「労働契約書(労働条件通知書)」に記載されている時給や所定労働時間、日数など、固定された条件に基づいて年間収入を計算するようになります。
これにより、以下のメリットがあります。
- 予測が容易に: 労働契約の時点、つまり働き始める前に、自分の収入が扶養の基準(130万円や150万円など)を超えるかどうかの予見性が高まります。
- 一時的な変動の影響を軽減: たとえ繁忙期に残業が増えたり、一時的なボーナスや手当があったりして、結果として年間収入が基準額を少し超えてしまったとしても、それが労働契約に基づかない一時的な収入であれば、直ちに扶養削除とならないような運用が想定されています。(ただし、社会通念上妥当な範囲内での臨時収入に限られます。)
客観的な根拠の利用
これまでの「見込み」の申告は、主観的な要素も含まれることがありましたが、新しい判定方法では、会社と被扶養者が取り交わした公的な書類(労働契約書)を根拠とするため、判定の客観性が高まります。
つまり、「年間収入が恒常的に基準額未満であることをより明確に確認」するとは、
「一時的な収入の増減ではなく、労働契約という安定した条件に基づいた年収の見込みが基準額未満であること」を公的な書類で確認できるようにする
という意味になります。
この変更は、特に学生やパートタイマーなど、収入に変動がある被扶養者の方々の就業調整をしやすくし、安心して働ける環境を整えるという側面もあります。

