従業員の方が75歳の誕生日を迎えた際に、会社として行うべき社会保険の手続きは主に健康保険に関するものです。厚生年金、雇用保険、労災保険については、75歳での大きな変更はありません。
健康保険・介護保険
従業員の方が75歳になると、それまで加入していた会社の健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)の被保険者資格を喪失し、自動的に後期高齢者医療制度へ移行します。
保険制度 | 75歳の誕生日の取り扱い | 会社が行う手続き |
健康保険 | 資格喪失(75歳の誕生日当日) | 「健康保険被保険者資格喪失届」の提出 |
後期高齢者医療制度 | 自動的に加入 | 従業員本人の加入手続きは不要 |
会社が行う手続きの概要
- 「健康保険被保険者資格喪失届」の提出
- 提出先: 事業所を管轄する年金事務所または健康保険組合
- 提出期限: 75歳の誕生日から5日以内
- 添付書類: 従業員本人および被扶養者全員分の健康保険証と高齢受給者証(70歳以上の方に交付されている場合)を回収し、届出に添えて返却します。
- 被扶養者の資格喪失に注意
- 従業員本人が健康保険の資格を喪失すると、その被扶養者(75歳未満の家族)も同時に被扶養者の資格を喪失します。
- 被扶養者は、国民健康保険に加入するか、家族の別の健康保険の被扶養者になるなどの手続きが必要になります。会社は被扶養者にその旨を伝え、必要な書類(健康保険の資格喪失証明書など)を発行して、市区町村窓口での手続きを促す必要があります。
- 介護保険
- 介護保険料の徴収は、40歳から65歳になるまでの間、健康保険料と一緒に給与から天引き(第2号被保険者)されていましたが、75歳以降も介護保険の負担は継続します。
- 75歳以降は、加入する後期高齢者医療制度の保険料に介護保険料が含まれ、原則として年金からの天引きや市区町村への納付に変わります。
厚生年金保険
厚生年金保険の資格は、原則として70歳に到達した時点で喪失しています。
- 70歳以降も厚生年金に相当する仕組みとして「70歳以上被用者」という扱いになり、在職老齢年金の調整対象となりますが、75歳になったからといって追加で会社が行う手続きは基本的にありません。
- 70歳到達時に「厚生年金保険被保険者資格喪失届」と「70歳以上被用者該当届」が提出済みであれば、75歳時点での手続きは不要です。
労働保険(雇用保険・労災保険)
労働保険には、加入年齢の上限はありません。
雇用保険
- 雇用保険の加入要件を満たしていれば(週の所定労働時間20時間以上、31日以上の雇用見込みなど)、75歳以降も引き続き「高年齢被保険者」として加入が継続します。
- 75歳到達による会社での手続きは特にありません。
- 保険料も引き続き徴収・納付されます。
労災保険
- 労災保険は年齢に関係なく、雇用されているすべての労働者に適用されます。
- 75歳到達による手続きは不要です。
まとめと注意点
75歳到達時に会社が最も注意すべき手続きは、健康保険の資格喪失手続き(75歳の誕生日から5日以内)です。
保険の種類 | 75歳到達時の取り扱い | 会社の手続き |
健康保険 | 資格喪失し、後期高齢者医療制度へ移行。 | 資格喪失届の提出(5日以内) |
厚生年金 | 70歳で既に資格喪失済み。 | 手続き不要 |
雇用保険 | 継続加入。 | 手続き不要 |
労災保険 | 継続加入。 | 手続き不要 |
人事・総務担当者は事前に誕生日を確認し、確実に手続きを進めることが大切です。