障害者雇用促進法の特例子会社とは?

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特例子会社とは

障害者雇用促進法は、障害者雇用率を設定して事業主に障害者の雇用を義務付けています。

この場合、子会社が、一定の要件を満たし、厚生労働大臣の認可を受ければ、その子会社の障害者雇用数を親会社および企業グループ全体の雇用分として合算することが認められています。これを「特例子会社制度」といいます。

本来は会社ごとに障害者雇用率を満たすことが望ましいのですが、事情により、障害者に合わせた労働環境の改善が難しい会社等では、特例子会社を設置することで全体として障害者雇用率を満たすことが認められます。

特例子会社の主な要件

1.親会社が子特例会社の議決権の過半数を有すること

2.親会社からの役員派遣、従業員出向等、人的交流が緊密であること

3.雇用される身体障害者及び知的障害者が5人以上で、かつ、子会社の全従業員に占める割合が20%以上である等

4.身体障害者等の雇用管理を適正に行う能力を有していること

5.その他、重度障害者等の雇用の促進及びその雇用の安定が確実に達成されると認められること

メリットとデメリット

特例子会社は、企業と障害者双方にメリットがある一方で、運営上の課題もあります。

企業側のメリット(親会社・グループ)

  • 法定雇用率の達成:子会社の雇用分を親会社の実雇用率に算入できるため、雇用義務の達成が容易になる。
  • 効率的な雇用管理:障害者雇用に必要な設備投資やノウハウを特例子会社に集中させ、コスト効率を高められる。
  • 高い定着率:障害特性に配慮した環境や独自の労働条件を設定しやすいため、障害者の職場定着率が向上しやすい。

企業側のデメリット

  • 経営・収益性の確保:特例子会社も営利企業であり、利益を上げ続ける必要があるが、単純業務の集約などにより、収益確保が難しい場合がある。
  • 親会社の意識希薄化:「雇用は子会社任せ」となり、親会社・グループ全体の障害者雇用への意識が薄れるリスクがある。
  • 管理者への負担:障害特性への理解やサポートに携わる管理職や少数の健常者社員に負担が集中しやすい。

障害者側のメリット

  • 安定した就労:障害特性に合わせた設備(バリアフリー等)、柔軟な勤務時間、手厚い支援体制のもとで、安心して働ける。
  • 孤立感の軽減:同じ障害を持つ仲間が多く、お互いを理解し、助け合いながら働ける環境がある。
  • 雇用機会の拡大:一般の障害者雇用枠だけでなく、特例子会社という選択肢が増える。

障害者側のデメリット

  • キャリア形成の制約:任される業務が定型的なものに限定されやすく、幅広い知識やスキルの習得、キャリアアップが難しいと感じることがある。
  • 給与水準:手厚い配慮やサポートを維持するコストが高いため、一般企業と比較して給与水準が低めに設定される場合がある。

企業グループ算定特例

一定の要件を満たす企業グループとして厚生労働大臣の認定を受けた場合は、特例子会社を使わなくても、グループ全体で障害者雇用率を通算できます。

この制度は、特例子会社を設立するほどの障害者雇用の集中が難しい、あるいはグループ内の複数の会社で既に一定程度の雇用が進んでいる場合に、グループ全体として雇用率を算定するために活用されます。

事業協同組合等算定特例

中小企業が事業協同組合等を活用して協同事業を行い、一定の要件を満たすものとして厚生労働大臣の認定を受けた場合は、事業協同組合等(特定組合等)とその組合員である中小企業(特定事業主)で障害者雇用率を通算できます。

これは、個々の中小企業単独では障害者に合った仕事量の確保や安定した雇用管理が難しい場合があるため、事業協同組合など(以下「組合等」)と組合員である中小企業(以下「特定事業主」)が共同で障害者雇用を促進する事業を行い、一定の要件を満たす場合に、組合等と特定事業主の実雇用率を合算して算定できるようにする特例です。