Last Updated on 2025年8月22日 by 勝
当社では、「始業時間には席に着き、仕事を始められる状態にしておきなさい」と指示されています。なので、最低10分前には席について、パソコンを起動させて、書棚から書類を出して、今日のスケジュールにざっと目を通して段取りを考え始めることにしています。定時に入室していては間に合いません。ということは、事実上、毎日10分程度のサービス残業を強いられていると考えてもよいと思うのですがどうでしょうか。
会社の指示を守るためには、最低10分前には席にいなければならない、という状況であれば、その準備行動は、時間外労働に該当する可能性があります。
労働時間とは
労働基準法上、「労働時間」とは労働者が使用者の指揮命令下に置かれている時間を指します。したがって、会社が定時前の出社や作業準備を事実上義務付けている場合、指揮命令下にあるとみなされますので、その時間は労働時間に該当します。
労働時間になるケース
- 始業前ミーティングへの参加を義務付ける
- 制服への着替えや清掃などを指示する
- パソコン立ち上げや資料準備を「定時前に終えておくべき」と指導する
今回のケースはこの3に当たります。
パソコンの立ち上げや資料準備は、業務に不可欠な作業ですから、労働時間と認定されます。
もし、名目上は、自主的にやっていた場合でも、準備という「仕事」が始まっているので、使用者の指揮命令下にあります。労働時間に算入しなければなりません。
指示がなく、慣習的なものだとしても、会社の雰囲気として、これをやらないと評価が下がる、といった状況があれば、実態的に強制とみなされる可能性があります。
しては使用者の指揮命令下にあるため、労働時間に算入しなければならないとされています(裁判例・行政通達あり)。
労働時間にならない場合
- 労働者が自主的に早く来て雑談している、私物整理をしている、コーヒーを飲んでいる、といった時間は労働時間に含まれません。
実務上のリスク
未払い残業に当たる可能性があります。1日10分だとしても、年間200日とすると、2000分になります。時間にすれば33時間強です。時給2千円で計算すると6万6千円強になります。これを全従業員に対して数年分払わなければならないこともありえます。
企業としての対応策
「始業時刻に業務開始できること」を求める場合、準備行為の時間を労働時間に含めることが望まれます。具体的には始業時間の変更か、時間外労働賃金の支払いが必要です。
準備を業務に含めないのであれば、準備不要の運用に改めるべきです。就業規則や通達で「定時前の準備作業は必要ない」と明示しましょう。
結論として、会社が定時前出社を事実上強いている場合は「早出残業」にあたる可能性があります。対策としては、「労働時間として認める」か「準備作業をさせない」と整理になります。
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