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労働時間

退職時の有給休暇

Last Updated on 2023年10月11日 by

有給休暇取得を拒むことはできません

退職前に残っている有給休暇を全部使いたい、という申し出を受けることがあります。

退職の意思表示と同時に、明日から有給休暇を使うのでもう出てきません、などと言われることもあります。

会社としては最低限の引継ぎくらいはしてから退職してもらいたいところですが、基本的には有給休暇の求めを拒むことができません。

会社が時季指定をしたくても、退職日を過ぎた日を時季指定することができないからです。

昭和49年1月11日基収5554号
時季変更権の行使は「労働基準法に基づくものである限り、当該労働者の解雇予定日を超えての時季変更権行使は行えないものと解する。」

引き継ぎができないと慌てる会社は、業務運営が組織的に行われていない会社です。日頃から業務をマニュアル化し、関係書類のファイリングがしっかりできていれば、一日で引継ぎを終えることも可能です。

引継ぎはさせられないのか

就業規則に引継ぎをしなければならない旨の規定をしている場合もあると思います。その点を強調して有給休暇取得を拒否することも、手段としてはありえますが、従業員が応じなければどっちみち引き継ぎは行われません。

裁判上の争いになった場合は、会社に生じた損害を求めるくらいしかできません。認められた判例もあるようですが、一般的には、スムーズな引き継ぎができないのは会社の業務体制の不備にもあるわけですから、勝ったとしてもさほどの利益はないと思われます。

現実的な手段としては、業務の引き継ぎに必要な日数分の有給休暇を金銭で買い取る、または退職日を延期してもらうことが妥当な線でしょう。あまり意地にならず、穏便に収める方が得策です。

有給休暇の買い上げ

なお、年次有給休暇の未消化日数に応じて一定の賃金を支払う(これを「休暇の買い上げ」といっています。)は、休養を与えるという制度の趣旨に反しているので、やってはいけないことになっています。

関連記事:有給休暇の買い取り

買い取りしてもよい場合もあります。その一つが退職時における未消化分の買い上げです。

裁判例にも、退職時の有給休暇の買い取りについて、従業員の退職時において、会社が未消化分の有給休暇を買い取ることは「違法ではない」というものがあります。(〇〇学院事件(神戸地裁判決昭和29年3月19日)


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