Last Updated on 2025年9月19日 by 勝
中央化傾向とは?
人事考課における中央化傾向とは、評価者が評価対象者の能力や成果にかかわらず、評価を平均的な点数(例:5段階評価の3)に集中させてしまう現象のことです。この傾向は、人事考課の公平性と有効性を大きく損なうため、評価者はこのバイアスを認識し、適切に対処する必要があります。
中央化傾向が起こる原因
中央化傾向が起こる背景には、いくつかの心理的な要因があります。
- 無難な評価をしたいという心理: 高い評価を付けると反発を恐れたり、低い評価を付けると相手との関係が悪化することを懸念したりする心理が働き、結果的に無難な中間点を選んでしまうケースです。
- 評価基準への自信のなさ: 評価項目や評価基準の理解が不十分な場合、自身の判断に確信が持てず、中間的な評価に落ち着くことがあります。
- 評価の手間を省きたい: 個々の従業員の詳細な評価を分析・検討するのが面倒に感じ、一律に平均的な点数を付けてしまうケースです。
- 組織内の調和を優先する: 特定の従業員を突出させた評価をすると、チーム内の人間関係に波風が立つことを避けたいと考える心理が働くことがあります。
中央化傾向がもたらす問題点
中央化傾向は、組織にとって以下のような深刻な問題を引き起こします。
- モチベーションの低下: 努力して高い成果を出した従業員が平均的な評価しか得られないと、正当に評価されていないと感じ、やる気を失ってしまいます。
- 人材育成の停滞: 成果や課題が明確にならないため、従業員一人ひとりに合わせた具体的なフィードバックや育成計画を立てることが難しくなります。
- 公平性の欠如: 貢献度が高い従業員とそうでない従業員の区別がつかなくなり、評価制度そのものへの信頼が失われます。これにより、組織全体の士気が低下する可能性があります。
中央化傾向への対策
評価者は、以下の点を意識することで中央化傾向を回避できます。
- 評価基準の再確認: 評価を行う前に、評価項目とそれぞれの定義、および具体的な評価基準をしっかり理解しましょう。どのような行動や成果がどの点数に値するのかを明確にすることが重要です。
- 具体的なエピソードを記録する: 評価期間中、従業員の優れた行動や改善が必要な点について、具体的なエピソードを日頃からメモしておきましょう。これにより、評価時に漠然とした印象に頼ることなく、客観的な事実に基づいた評価ができます。
- 相対評価ではなく絶対評価を意識する: 他の従業員との比較ではなく、個々の従業員が設定された目標に対してどれだけ貢献したかという視点で評価しましょう。
これらの対策を講じることで、評価の精度と公平性が向上し、人事考課をより有効な人材育成ツールとして活用できるようになります。