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評価制度

あらかじめ決めている順番になるように点数を操作している評価者がいます

Last Updated on 2025年9月2日 by

一部の評価者は、あらかじめ部下の順位を決めて、その順位になるように評価点を操作しているそうです。不公平になりかねないので改めさせたいのですが?

それは、「メイキング」という評価エラーの一つです。どのようなものか、どう対策すればよいか以下で解説します。

メイキングの具体例

人事考課における「メイキング」とは、評価者が事前に決めた評価結果に合うように、後から理由や事実をでっち上げる評価エラーのことです。先に結論があり、後付けで理由を探すため、「事実に基づく評価」ではなくなってしまいます。

メイキングは、以下のような状況で起こります。

例1:嫌いな部下の評価

ある評価者が、個人的にそりが合わない部下を「仕事ができない」と決めつけていたとします。その部下は真面目に業務をこなしていますが、評価者は「その部下を低く評価する」という結論を先に持っています。

そこで評価者は、面談の際に「君の報告は要領を得ない」などと些細なミスを強調したり、実際にはない「君の言動で困っている人がいる」などと決めつけたりして、低い評価に結びつけます。

例2:好きな部下の評価

逆に、考課者が個人的に親しい部下のことを「優秀だ」と先に決めていたとします。その部下が大きな成果を出していないにもかかわらず、評価者は「彼は見えないところで努力を続けている」「大変成長している」といった曖昧な理由を並べ立て、高い評価を与えます。

このように、メイキングは個人の感情や先入観が評価の根拠を歪めることで発生します。

メイキングをやめさせる方法

メイキングは、多くの場合、無意識ではなく意識的な行動です。本人が意図的に行う不正行為に近い側面があるので、やめさせるのは困難なケースもありますが、いくつか対策を提示します。

評価を補正する

簡単な方法としては、上司や人事が評価を強制的に修正する方法があります。しかし、評価結果を強制的に補正するアプローチには、いくつかの大きな問題があります。

  • 補正の基準が不透明:どのくらいの割合で、どの評価者の点数を補正するのか、その基準を客観的に設定するのは非常に困難です。
  • 客観的に補正したとしても、「補正された」という事実が評価者に知られると、不信感を生み評価者自身の責任感やモチベーションがさらに低下する恐れがあります。
  • 本質的な問題の放置:補正はあくまで対症療法に過ぎません。なぜその評価者がメイキングをするのか、という根本的な問題(個人的な感情、不公平感、評価制度への不満など)を解決することにはなりません。

推奨される対策

強制補正よりも有効な対策は、評価のプロセスを厳格に管理することです。

考課者トレーニングの実施

考課者に対し、メイキングを含む様々な評価バイアスについて理解を深めるための研修を行います。バイアスが存在することを知り、その対策を学ぶことで、自身の評価行動を客観的に見つめ直すきっかけとなります。ただし、メイキングは、バイアスの存在などの評価制度を理解した上で行うことが多いので、トレーニングの効果は限定的です。

複数評価者による評価と調整

360度評価を行い、直属の上司だけでなく、同僚や他部署のリーダーなど複数の視点から評価を行うことで、一人の評価者の主観が入り込む余地を減らせます。

また、複数の考課者が評価を行い、その結果をすり合わせることで、一人の考課者の個人的な感情が評価に影響するのを防ぐことができます。

評価プロセスの可視化と

考課面談の記録や評価の根拠を詳細に記録させ、第三者が確認できるようにします。

評価の根拠を明確化する仕組み

評価者が、具体的な行動や成果に基づいた詳細なコメントを記入することを必須とします。たとえば、「真面目さ」「積極性」といった抽象的な評価項目ではなく、「数字」を中心にした事実に基づいた評価項目を多めに設定します。これにより、感情的な理由付けが難しくなり、客観的な評価がしやすくなります。

評価会議の実施

評価者全員が集まり、各被評価者の評価結果と根拠を共有する評価会議を行います。この場で、評価が甘すぎる、または厳しすぎるケースについて議論し、評価の統一を図ります。これにより、個人的な感情や先入観が入り込むことを防ぎ、評価の公平性を高めることができます。

これらの方法を組み合わせることで、「事実を先に、評価は後に」という健全な評価プロセスを定着させ、メイキングを防ぐことができます。


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