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解雇

運転手が運転免許を失えば解雇もやむを得ないと思いますがどうでしょうか?

Last Updated on 2025年9月2日 by

配達業務に従事している従業員が、休日に自家用車でドライブをしているときに事故を起こして、運転免許が取り消しになりました。運転しなくてもできる仕事があれば良いのですが、当社は規模が小さいので、その従業員を配置する職場がありません。運転手として採用された者が、運転することが出来なくなったのであれば、解雇もやむを得ないと思っていますが、どうでしょうか?

従業員が運転免許を失ったことを理由にする解雇は、有効な解雇と判断される可能性があります。ただし、解雇権濫用と見なされないためには、会社側がいくつかの点を慎重に考慮する必要があります。

法的な観点

労働契約法第16条は、解雇が客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして無効とすると定めています。したがって、運転免許の喪失が解雇の合理的な理由となるかどうか、また解雇が社会通念上相当であるかどうかが問われます。

このケースでは、以下の点が重要になります。

職務遂行能力の喪失

従業員は運転業務を主な職務として採用されており、運転免許の喪失によりその職務遂行能力が完全に失われたと見なせます。これは、解雇の客観的かつ合理的な理由となり得ます。

配転可能性の有無

会社が他の職務に配置転換する努力をしたかどうかが問われます。今回のケースでは、会社が小規模であり、配置転換が困難であるという事情は、解雇の合理性を補強する要素となります。

自己都合による能力喪失

事故が業務外(休日の自家用車でのドライブ)に起因するものであり、従業員自身の行為によって職務遂行能力が失われたことも、解雇の正当性を高める要因となります。職務中の事故であれば、事情は異なります。

他に検討すべきこと

上述した要件に該当するとしても、さらに、以下の点を慎重に検討する必要があります。

就業規則の確認

運転免許の喪失が解雇事由として明記されているかを確認してください。

本人との話し合い

状況や今後の見通しについて、本人と十分に話し合う機会を設けるべきです。

代替業務の検討

他の業務がないかを真摯に検討した記録を残すことが重要です。

結論

ご提示のケースでは、従業員の主たる職務遂行能力が喪失したこと、会社の規模から配置転換が困難であること、そして業務外の自己の行為に起因するものであることから、解雇は法律上、判例上有効になる可能性が高いと考えられます。ただし、解雇の手続きを慎重に行うことが、紛争を回避するために非常に重要です。

休職という選択肢

就業規則に、資格喪失による休職という規定があれば、解雇せずに運転免許回復まで、休職とすることができます。なお、会社が休職を命じる際に必ずしも本人の同意は必要ではありません。

休職期間は一般に無給であるため、本人にとっては厳しい処置ですが、本来は免許喪失によって解雇もやむを得ない状況を温情で従業員としての地位を繋ぎ止めるものですから、必ずしも非情な処置ではありません。

次の規程文案は、従来からの休職規程に項目を追加する例です。あくまでも一例なので、会社のお考えで適宜修正してお使いください。

休職規程(例)

(休職事由)第○条 会社は、従業員が次の各号のいずれかに該当する場合には、一定期間を定めて休職を命ずることがある。

  1. 心身の故障により業務に耐えられないと認められるとき
  2. 業務上必要とする資格・免許を喪失し、または停止され、業務に従事することができないとき
  3. その他、会社が特に休職を必要と認めたとき

(休職期間)第○条 休職期間は次のとおりとする。

  1. 前条第1号に該当する場合 最長○か月
  2. 前条第2号に該当する場合 免許・資格の停止期間または喪失から最長○か月
  3. 前条第3号に該当する場合 会社が定める期間

(休職期間中の処遇)第○条 休職期間中は、賃金を支給しない。休職期間中に支給日がある賞与も支給しない。社会保険料等の本人負担分は本人が負担しなければならない。

2 前条第2号の休職期間中は、副業に従事することを妨げない。


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