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退職の事務

健康保険の任意継続被保険者

Last Updated on 2023年10月22日 by

任意継続被保険者とは

健康保険は、事業所単位の加入を原則としているため、退職したときは会社を通じて協会けんぽなどの保険者に健康保険証を返却しなければなりません。

ただし、一定の条件のもとに本人の希望により被保険者として継続することができ、この制度を利用して加入した被保険者を「任意継続被保険者」といいます。

任意継続被保険者になるためには、被保険者でなくなった日までに、継続して2か月以上の被保険者期間があることが必要です。

任意継続の保険料

保険料の算定

健康保険料は会社と本人が半分ずつ負担しています。任意継続の保険料は、退職後なので、在職中であれば会社が負担していた分も当人が負担しなければなりません。つまり、勤務していたときに引かれていた保険料の2倍になるので大きな負担になります。

この負担を軽減するために、保険料の負担には上限が設定されています。

つまり、任意継続の保険料は、被保険者の「資格喪失時の標準報酬月額」と「平均の標準報酬月額(その保険者の全被保険者の平均の標準報酬月額。以下同じ)」とを比較して、「低いほうの標準報酬月額」に基づいて決定されます。

「資格喪失時の標準報酬月額」のほうが高ければ、「平均の標準報酬月額」に基づいた保険料額になるのです。言い方を変えれば任意継続被保険者の保険料は、単純に2倍になるのではなく、平均よりも高い給料をもらっていた人には保険料の上限があるということになります。

なお、健康保険組合の場合は、「資格喪失時の標準報酬月額」が「平均の標準報酬月額」より高い場合であっても、「資格喪失時の標準報酬月額」に基づいて保険料額を決めることができるので、上限が設定されているとは限りません。

国民健康保険との比較

退職して無職になってもなんらかの健康保険に加入しなければなりません。無職あるいは自営業であれば、原則として市区町村が運営している国民健康保険に加入しなければなりませんが、任意継続の権利を持っている人は、国民健康保険の保険料と、任意継続被保険者の保険料を比較して、負担の安い方を選択することができます。

一般的には、前年の世帯収入が多いと、国民健康保険料が多額になるので、任意継続保険者制度の方が有利だといわれています。ただし、保険料は地域差もあります。どっちが得になるなどと断定的なことを言わずに、住所地の市町村役場の国民健康保険の窓口で相談することを勧めましょう。

なお、退職者の家族が健康保険の被保険者であるときは、その被扶養者になることができます。被扶養者が増えても健康保険料の負担額が上がることはありません。

手続き

加入手続き

健康保険任意継続の手続きは、退職後のことなので会社が代行する必要はありません。ただし、制度を知らない人がいるので、退職者に対して制度の概要を説明するようにしましょう。

任意継続を希望する場合は、「任意継続被保険者資格取得申請書」を20日以内に保険者(協会健保など)に提出しなければなりません。

20日を過ぎても天災地変などの理由であれば受理するようですが、原則として期日を過ぎれば受理されないので注意が必要です。

用紙は協会けんぽ等の保険者のホームページからダウンロードできます。提出は郵送で行います。

喪失手続き

任意継続被保険者として加入できる期間は、2年間です。期限が来ると手続きしなくても資格は喪失します。

2年になる前に辞めたくなったときは、かつては中途喪失の手続きが決まっていなかったために、保険料を払わなければ保険料期日の翌日から資格喪失するという自然消滅のようなやり方になっていました。現在は辞める手続きがあります。具体的には、辞めたい旨の申し出を行い、その申し出が受理された翌月から、任意継続を辞めることが可能になります。

用紙は取得時と同様に協会けんぽ等の保険者のホームページからダウンロードできます。提出は郵送で行います。


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