Last Updated on 2025年9月2日 by 勝
会社が倒産した場合、従業員が取るべき対応は以下の通りです。
取引先への対応
会社が倒産すると、法的な手続きが開始されるため、従業員個人の判断で取引先に連絡を取ることは避けるべきです。会社の代表者や、選任された弁護士(破産管財人など)の指示に従いましょう。
会社の倒産によって被害を被った取引先から強く責められた場合、非常に辛い状況となりますが、冷静に対応することが重要です。
個人の責任と会社の責任を区別する
会社の倒産は、経営判断の結果であり、原則として従業員個人に責任が及ぶものではありません。取引先の被害感情は理解できますが、従業員が個人的に損害を賠償する義務はないことを認識しておきましょう。
破産管財人または弁護士に連絡を促す
倒産手続きが始まると、会社の財産は破産管財人(裁判所が選任する弁護士)が管理することになります。取引先からの問い合わせやクレームには、個人として対応するのではなく、「今後は破産管財人(または会社が依頼している弁護士)に連絡してください」と伝え、連絡先を教えるのが正しい対応です。
感情的にならず、誠実な姿勢を見せる
取引先は大きな損害を被っており、感情的になることがあります。そのような状況下で、従業員としてできるのは、誠実な態度で接し、会社の状況を説明することです。ただし、会社の資産状況や倒産に至る詳細な経緯など、自分が知り得ないことや、安易に答えるべきではないことについては、「破産管財人(または弁護士)から説明があるはずです」と伝え、具体的な言質を取られることを避けましょう。
破産管財人や会社の指示に従う
倒産手続き中の会社の情報管理は非常に重要です。会社の代表者や弁護士から、取引先への対応について指示がある場合はそれに従いましょう。無許可で会社の資産を持ち出すと法的な問題になります。
自身の安全を確保する
万が一、脅迫的な言動や危害を加えられる危険を感じた場合は、速やかにその場を離れ、警察に通報するなど、自身の安全を最優先に考えましょう。
倒産という事態は、取引先だけでなく従業員にとっても大きな被害をもたらします。しかし、会社の責任と個人の責任を明確に区別し、適切な手続きに則って対応することで、不必要なトラブルを避けることができます。
給与・退職金について
給与や退職金は、優先的に扱われますが、未払いになることがあります。
破産の場合は、裁判所が選任する破産管財人が、会社の財産を換価(現金化)して、法律で定められた順位に基づいて債権者へ配当します。未払い給与や退職金は、税金などと並んで優先順位が高く設定されていますが、会社の財産が少ない場合は全額が支払われないこともあります。
独立行政法人労働者健康福祉機構が賃金の一部を立て替えて支払ってくれる制度があります。これを「未払賃金立替払制度」といいます。労働基準監督署が窓口です。
社会保険について
会社が倒産し、厚生年金・健康保険の資格を失うことになりますので、ご自身で速やかに以下の手続きを行う必要があります。
倒産によって健康保険の資格を喪失するため、お住まいの市区町村役場で国民健康保険への加入手続きが必要です。
厚生年金の資格を喪失するため、国民年金への切り替え手続きが必要です。これも市区町村役場で行います。なお、失業中は国民年金保険料の免除や猶予を受けられる場合があります。
次の就職先が決まった場合次の就職先が厚生年金適用事業所であれば、その会社で再び厚生年金に加入することになります。
会社が倒産したときは、直近の厚生年金や健康保険料を会社が年金機構に納付していないこともありますが、給与明細などで天引きされていることが確認できる限り、未納期間も年金加入期間としてカウントされ、将来の年金受給額が減額されることはありません。ご自身の年金記録に不安がある場合は、念のため年金事務所に相談し、ご自身の「ねんきん定期便」などを確認してもらうことで確認できます。
再就職活動について
会社が倒産したことが判明したらすぐに再就職活動を始めることができます。倒産手続きにおいては、解雇通知がなされるのが一般的です。
雇用保険に加入していると失業手当(雇用保険の基本手当)を受給できます。倒産による離職は、会社都合退職になるので、自己都合退職よりも受給開始時期が早く、給付日数も長くなります。離職票や雇用保険被保険者証などの書類を持って、できるだけ早くハローワークで手続きを行いましょう。
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