簿記2級の「株式会社会計」について、重要な論点ごとの仕訳例を示して解説します。
株式会社会計では、株式会社特有の資本の増減や利益の処分に関する処理を学習します。
株式の発行(増資)
会社が資金を調達するために新株を発行する際の仕訳です。払込金額が額面金額(会社法の規定で廃止されたが、簿記では慣習的に使用されることがある)を超過する場合、その超過額は資本準備金となります。
論点 | 取引内容 | 仕訳例(本店帳簿) |
株式発行(増資) | 額面総額¥10,000,000の新株を発行し、払込金¥12,000,000が当座預金口座に入金された。 | (借)当座預金 12,000,000 |
(貸)資本金 10,000,000 | ||
(貸)資本準備金 2,000,000 | ||
株式交付費 | 株式発行に伴い、諸費用¥500,000を現金で支払った。 | (借)株式交付費 500,000 |
(貸)現金 500,000 | ||
株式交付費は、増資後すぐに資本金と資本準備金の合計額から控除(減少)させます。 | (借)資本準備金 500,000 | |
(貸)株式交付費 500,000 |
剰余金の配当(利益処分)
株主に対して利益を配分する処理です。配当を行う際、会社法に基づき、配当額の1/10を利益準備金として積み立てる必要があります。
論点 | 取引内容 | 仕訳例(本店帳簿) |
配当の決定時 | 株主総会で現金配当¥1,500,000、利益準備金積立額¥150,000を決定した。(未処分利益(繰越利益剰余金)からの処分) | (借)繰越利益剰余金 1,650,000 |
(貸)未払配当金 1,500,000 | ||
(貸)利益準備金 150,000 | ||
配当の支払時 | 上記の未払配当金を当座預金から支払った。 | (借)未払配当金 1,500,000 |
(貸)当座預金 1,500,000 |
【ポイント】
- 利益準備金の積立は、配当額の1/10が原則です。
- 資本準備金と利益準備金の合計額が、資本金の1/4に達するまで積立が必要です。
剰余金の資本組み入れ(無償増資)
準備金や剰余金(利益剰余金やその他資本剰余金)を原資として資本金に組み入れる処理です。株主には無償で株式が交付されます(株式分割とは区別されます)。
論点 | 取引内容 | 仕訳例(本店帳簿) |
資本準備金を資本金に組み入れる | 資本準備金¥3,000,000を資本金に組み入れた。 | (借)資本準備金 3,000,000 |
(貸)資本金 3,000,000 | ||
利益剰余金(任意積立金)を資本金に組み入れる | 別途積立金¥500,000を資本金に組み入れた。 | (借)別途積立金 500,000 |
(貸)資本金 500,000 |
自己株式の取得と処分
会社が発行済みの自社の株式を取得し、保有するものを自己株式と呼びます。これは資産ではなく、純資産のマイナス項目として扱われます。
論点 | 取引内容 | 仕訳例(本店帳簿) |
自己株式の取得 | 自己株式100株を1株あたり¥1,000で取得し、代金¥100,000を現金で支払った。 | (借)自己株式 100,000 |
(貸)現金 100,000 | ||
自己株式の売却(処分) | 取得した自己株式を¥120,000で売却し、代金は当座預金に入金された。(取得原価との差額¥20,000が発生) | (借)当座預金 120,000 |
(貸)自己株式 100,000 | ||
(貸)自己株式処分差益 20,000 |
【ポイント】
- 自己株式の売却益(処分差益)は特別利益ではなく、資本剰余金(純資産の増加項目)として処理されます。
- もし売却損(処分差損)が出た場合は、自己株式処分差損(純資産の減少項目)として処理されます。
これらの仕訳の知識は、特に株主資本等変動計算書の作成問題で重要となります。