衛生工学衛生管理者とは
衛生工学衛生管理者は、労働者の健康を守るための専門知識を持つ国家資格です。特に、有害な作業環境の改善に特化した、衛生管理者の中でも最も高度な資格と位置づけられています。
衛生工学衛生管理者は、労働安全衛生法に基づいて定められた資格の一つで、以下の特徴があります。
- 資格の種類: 国家資格(衛生管理者免許の一つ)
- 専門性: 労働衛生の中でも、主に衛生工学的な技術(換気、局所排気装置、作業環境測定など)を用いて、有害なガス、蒸気、粉じんなどが発生する作業環境の改善・管理を行う専門家です。
- 業務範囲: 第1種衛生管理者と同様に、すべての業種で衛生管理者となることができます。建設業、製造業、鉱業などの有害業務を伴う事業場でも対応可能です。
企業の選任義務
以下の両方の条件に該当する事業場では、選任すべき衛生管理者のうち1人を、衛生工学衛生管理者免許を受けた者から選任することが義務付けられています。
条件 | 内容 |
労働者数 | 常時500人を超える労働者を使用していること。 |
有害業務 | 一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させていること。 |
【一定の有害な業務の例】
- 鉛、水銀、クロムなどの有害物の粉じん、蒸気、ガスなどを発散する場所での業務
- 多量の高熱物体を取り扱う業務や著しく暑熱な場所での業務
- 土石、獣毛などのじんあい(ちり・ほこり)を著しく飛散する場所での業務
- ラジウム放射線、エックス線などの有害放射線にさらされる業務
- 異常気圧下における業務
主な仕事内容
衛生工学衛生管理者の仕事は、一般的な衛生管理者の業務(労働者の健康管理)に加えて、特に「衛生工学」の専門知識を活かした作業環境の管理・改善が中心となります。
業務の分野 | 具体的な内容 |
作業環境の管理 | 有害物質の測定結果の評価、局所排気装置や換気装置などの衛生保護装置の点検・整備、施設の衛生上の改善指導。 |
労働者の健康管理 | 健康診断の実施とその結果に基づく措置(意見聴取、作業転換など)、長時間労働者への面接指導の調整。 |
職場巡視 | 週1回以上、作業場を巡視し、設備、作業方法、衛生状態に有害のおそれがないかを点検し、改善が必要な場合は直ちに措置を講じること。 |
労働衛生教育 | 労働者への衛生教育の企画・実施。 |
記録の整備 | 衛生に関する記録の整備。 |
この資格を持つことで、有害な作業環境が伴う大規模な工場や事業場において、作業環境を科学的・工学的に安全で快適な状態に保つための中心的な役割を担うことになります。