政府の統計資料は、公的な施策だけでなく、民間企業の経営戦略や人事戦略においても、客観的なデータとして大いに役立ちます。給与や賞与の世間相場を知るための統計資料には、賃金構造基本統計調査、毎月勤労統計調査、民間給与実態統計調査があります。
賃金構造基本統計調査(厚労省)
これは、賃金水準の構造(構造的な相場)を知る上で最も詳細かつ権威のある統計です。
| 項目 | 特徴・得られる情報 |
| 調査主体 | 厚生労働省 |
| 頻度 | 毎年実施 |
| 対象 | 規模10人以上の事業所 |
| 相場把握の強み | 年齢、性別、学歴、勤続年数、そして職種別の月額賃金を詳細に把握できます。 |
| 賞与 | 年間の特別給与額(賞与など)も調査に含まれます。 |
| 活用場面 | 採用時の初任給設定、人事制度の見直し、世代別・職種別の賃金テーブル作成の際の客観的な根拠として利用されます。 |
- データ例: 「35歳、大卒、営業職、勤続10年の平均月額賃金」といった、より具体的な条件での相場を知ることができます。
毎月勤労統計調査(厚労省)
毎月勤労統計調査(略称:「毎勤(まいきん)」)は、賃金、労働時間、雇用の毎月の変動を明らかにすることを目的として、厚生労働省が実施している、日本の基幹統計調査の一つです。
この調査は、全国的および都道府県別の労働情勢を把握するための最も重要な統計調査の一つであり、大正時代から続く長い歴史を持っています。
毎月勤労統計調査は、主に以下の調査が行われています。
- 全国調査・地方調査
- 目的: 常用労働者を5人以上雇用する事業所における、雇用、給与(賃金)、労働時間について、全国的および都道府県別の変動を毎月明らかにします。
- 対象: 常用労働者5人以上の事業所の一部を無作為に抽出して毎月調査します。
- 特別調査
- 目的: 上記の調査の対象とならない、常用労働者を1人から4人雇用する小規模な事業所の賃金、労働時間、雇用等の実情を明らかにし、全国調査・地方調査を補完することを目的としています。
- 頻度: 年に1回実施されます(通常は7月31日現在)。
調査結果は、産業別・事業所規模別に集計され、公表されています。
民間給与実態統計調査(国税庁)
こちらは、年間の総支給額という観点で世間相場を把握するのに役立つ統計です。
| 項目 | 特徴・得られる情報 |
| 調査主体 | 国税庁 |
| 頻度 | 毎年実施 |
| 対象 | 1年を通じて勤務した給与所得者(納税者) |
| 相場把握の強み | 給与総額(年収)、給料・手当、賞与を合算した年間の平均値を、年齢階層別、勤続年数別、産業別に把握できます。 |
| 活用場面 | 年間収入の観点から自社の水準を評価する際や、ライフプランニングの参考情報として広く利用されます。 |
- データ例: 「日本の給与所得者全体の平均年収は〇〇万円」「最も平均年収が高い業種は〇〇業」といった情報はこの統計から得られます。
これらの統計資料は、いずれも厚生労働省や国税庁のウェブサイトで無料で公開されており、最新の調査結果を閲覧・ダウンロードできます。

