Last Updated on 2025年8月7日 by 勝
「e-文書法」と「電子帳簿保存法」は、どちらも書類の電子化に関わる法律ですが、その適用範囲や目的が異なります。会社の実務に深く関わる両者の違いと、押さえておくべきポイントを解説します。
e-文書法とは?
e-文書法は、正式名称を「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」といい、法律で紙での保存が義務付けられている書類全般を、電子データとして保存することを容認する法律です。
- 対象: 約250の法律で定められた多岐にわたる文書。国税関係の書類だけでなく、会社法の計算書類や議事録、薬事法の書類など、幅広い分野の文書が対象となります。
- 目的: ペーパーレス化による業務効率化、コスト削減、そして国民の利便性向上を目指しています。
- 実務上のポイント:
- e-文書法は、あくまで「電子化を認める」法律であり、具体的な電子化の要件は、それぞれの法律を管轄する省庁が定める省令によります。
- 会社法上の計算書類や議事録なども、この法律に基づいて電子保存が認められています。
電子帳簿保存法とは?
電子帳簿保存法は、国税関係の帳簿や書類(仕訳帳、総勘定元帳、請求書、領収書など)を電子データで保存する際のルールを定めた法律です。
- 対象: 国税関係帳簿書類に限定されます。e-文書法の一部を構成する法律と言えます。
- 目的: 国税関係書類の電子保存を促進し、税務手続きの円滑化や企業の経理業務の効率化を図ります。
- 実務上のポイント:
- 電子帳簿保存法は、主に以下の3つの区分で構成されています。
- 電子帳簿等保存: 会計ソフトなどで最初から電子的に作成した帳簿や書類を、そのまま電子データで保存する方法。
- スキャナ保存: 紙で受け取った書類をスキャナやスマートフォンで読み取り、画像データとして保存する方法。
- 電子取引: 電子メールやクラウドサービスなどを通じてやりとりした取引情報(PDFの請求書など)を、そのまま電子データで保存する方法。
- 特に重要なのは「電子取引」の保存義務化です。 2024年1月1日以降、電子取引によって受領・交付したデータは、原則として電子データのまま保存することが義務付けられました。
- この義務化は、法人・個人事業主を問わず、すべての事業者が対象となります。
- 電子帳簿保存法は、主に以下の3つの区分で構成されています。
会社の実務で押さえるべきポイント
- 対象範囲の違いを理解する:
- e-文書法は、会社法上の議事録や事業報告書など、国税関係書類以外の文書の電子化を考える際の基盤となる法律です。
- 電子帳簿保存法は、日々の経理業務で発生する帳簿、請求書、領収書などの国税関係書類の電子化に直結する法律です。特に、電子取引のデータ保存義務化は、すべての企業にとって必須の対応です。
- 電子帳簿保存法の3つの区分に沿って対応する:
- 自社でどのような書類を、どの方法で電子化するかを明確にする必要があります。
- 電子取引のデータ保存は、真実性(データの改ざん防止)と可視性(必要な時にすぐに検索・表示できる)の要件を満たす必要があります。これらの要件を満たすためには、タイムスタンプを付与する、訂正・削除の履歴が残るシステムを利用する、事務処理規程を定めるなどの方法があります。
- スキャナ保存を行う場合は、解像度やタイムスタンプの付与など、さらに細かい要件があります。
- 法改正への継続的な対応:
- 電子帳簿保存法は頻繁に改正が行われています。以前は必要だった税務署への事前承認が不要になるなど、要件が緩和される一方、義務化される項目も増えています。
- 常に最新の情報を確認し、自社の業務フローを定期的に見直すことが重要です。
まとめると、e-文書法は「電子化の全体的な許可」を与える法律であり、その中の特定の分野である「国税関係帳簿書類の電子化」について、より具体的なルールを定めているのが電子帳簿保存法です。
会社の経理担当者としては、特に電子帳簿保存法の内容を深く理解し、電子取引の保存義務化に確実に対応することが、法令遵守と業務効率化の両立に不可欠となります。
国税庁ホームページの関連ページ 電子帳簿保存法関係