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  • 監査役というのは具体的に言えばどのような仕事をする人ですか?

    監査役の具体的な仕事内容をご説明します。

    監査役の業務

    監査役の監査業務は、主に業務監査会計監査の2つに大別されます。

    業務監査

    業務監査とは、会社の取締役の職務執行が法令や定款に違反していないか、また、不当な点がないかを監査することです。

    具体的な作業は以下の通りです。

    取締役会の出席: 監査役は、原則として取締役会に出席し、取締役の職務執行状況を監視します。会議での質問や発言、議事録の確認も重要な業務です。

    事業報告書の確認: 事業年度ごとに作成される事業報告書の内容が、会社の経営状況を正確に示しているかを確認します。

    業務執行状況の調査: 必要に応じて、会社の業務や財産状況について調査を行います。特定の部門や取引について、報告を求めたり、実地で調査したりすることもできます。

    会計監査

    会計監査とは、会社の計算書類(貸借対照表、損益計算書など)が、会社の財産状況や損益状況を適正に表示しているかを監査することです。

    具体的な作業は以下の通りです。

    計算書類の確認: 会社の決算時に作成される計算書類の内容を詳しく確認します。計上されている資産や負債が適正か、収益や費用が正しく計上されているかなどをチェックします。

    会計帳簿の閲覧: 計算書類の基礎となる会計帳簿(総勘定元帳、仕訳帳など)を閲覧し、不正な取引や不当な会計処理がないかを確認します。

    監査報告書の作成: 監査の結果をまとめ、監査報告書を作成します。この報告書には、計算書類が適正であるかどうかの意見を記載します。

    小規模な株式会社では、会計監査は公認会計士や監査法人ではなく、監査役が単独で行うことが一般的です。これらの監査を通じて、会社の健全な経営と法令遵守を確保することが、監査役の重要な役割です。

    監査役の調査権について

    監査役は取締役の許可なく、会社の業務や財産状況について調査することができます。非常に大きな権限です。

    会社法では、監査役の職務を効果的に遂行するため、以下の権限を定めています。

    事業報告請求権:いつでも、取締役や使用人に対して事業に関する報告を求めることができます。

    業務・財産状況調査権:会社の業務や財産状況について、いつでも調査することができます。

    これらの権限に基づいて、監査役は不正がないかを確認するために、具体的には、取締役の許可を必要とせずに、担当者に質問したり、現金の実査(実際に数えること)、通帳の確認倉庫の在庫確認などを実施できます。

    定款による監査範囲の限定

    ただし、小規模な非公開会社(株式の譲渡制限がある会社)では、定款によって監査役の監査の範囲を会計に関するものに限定している場合があります。この場合、業務監査に関する権限が限定されるため、業務執行の適法性に関する広範な調査はできなくなります。

    監査役の重要性

    中小企業のなかには、監査役の役割が形骸化して、充分な監査を行わずに用意された監査報告書に捺印することになっていることがあります。それは会社法が求める監査役の職務を十分に果たしているとは言えず、通常とは言えません。

    監査役の役割は、取締役の職務執行が法令や定款に違反していないかを監視し、会社の健全な経営を確保することです。これには、以下の点が求められます。

    継続的な監視: 監査役は、年に一度だけではなく、会社の経営状況を継続的に監視する義務があります。取締役会の出席や、必要に応じた業務調査がその典型です。

    独立した判断: 監査報告書への押印は、自らの判断と責任で行うべきものです。経理部長の説明を鵜呑みにするのではなく、自ら会計帳簿や関連資料を調査し、内容が適正であることを確認した上で意見を表明する必要があります。

    善管注意義務: 監査役は、善良な管理者としての注意義務をもって職務を遂行しなければなりません。形式的な監査にとどまり、もし会社に不正があった場合、その責任を問われる可能性があります。

    監査役の職務は、会社の規模や状況によって異なりますが、最低限、取締役会への出席や計算書類の慎重な確認は欠かせません。

    具体的な監査役面談のやり方

    監査役として特定の部門を訪問し、責任者と面談する際の話し方について説明します。

    高飛車でも遠慮がちでもない、信頼関係を築きながら情報を引き出すための話し方として、以下の3つのポイントを意識すると良いでしょう。

    1. 目的の明確化: なぜ面談に来たのかを最初に伝えます。
    2. 協力の姿勢: 相手の協力が不可欠であることを示します。
    3. 具体的な質問: 漠然とした質問ではなく、具体的な業務内容に踏み込んで質問します。

    これらのポイントを踏まえたシナリオを、会話形式で示します。

    シナリオ例:新規事業開発部門の訪問

    登場人物

    監査役: あなた

    責任者: 新規事業開発部門の部長

    監査役: 部長、お忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。監査役の〇〇です。今日は、こちらの部門で進めている新しい事業について、いくつかお話を伺いたく、参りました。

    責任者: こちらこそ、どうぞよろしくお願いいたします。

    監査役: ありがとうございます。今回、この事業に特に興味を持ったのは、先日、社長が取締役会でこの事業は今後の重点事業だとお話されたからです。そのお話を聞きながら、この事業は当社の将来の成長戦略において、非常に重要な位置づけにあると感じてもう少し詳しくお聞きしたいと思ったからです。

    責任者: なるほど。

    監査役: そこで、いくつか具体的な質問をさせていただけますでしょうか。

    責任者: はい、承知いたしました。

    監査役: まず、この新しい事業の具体的な構想をあらためてご説明をお願いします。

    責任者: (説明)

    監査役: ありがとうございます。次に、この事業で特に懸念されているリスクについてお教えいただけますか?例えば、競合他社との関係、特許問題など、どのようなリスクを想定し、どのように対策を講じているか、差し支えのない範囲でお聞かせください。

    責任者: (説明)

    監査役: 大変分かりやすくご説明いただき、ありがとうございました。今日お伺いした内容は、監査役としての私の職務遂行に非常に役立ちます。また、何か不明な点が出てきた際には、改めてご相談させていただくかもしれません。今後とも、どうぞよろしくお願いいたします。

    シナリオのポイント

    このシナリオでは、冒頭で監査の目的を明確に伝え、相手の業務への敬意と関心を示しています。また、質問は「何をしているか」ではなく、「どのようにしているか」に焦点を当てることで、プロセスの適正性に踏み込んでいる点が重要です。

    監査は、不正を見つけるための「尋問」ではなく、会社の健全性を高めるための「対話」であるという姿勢で臨むと、よりスムーズな情報収集と建設的な関係構築につながります。

    具体的な経理面談のやり方

    経理部門を訪問し、経理の責任者と面談しながら、銀行の通帳と会社の帳簿を突き合わせる際の一例を紹介します。

    この場面でも、「具体的な監査役面談のやり方」で示した3つのポイントを意識してください。それらのポイントを踏まえたシナリオを、会話形式で示します。

    シナリオ例:経理部長との通帳・帳簿突合作業

    登場人物

    監査役: あなた

    経理部長: 経理部門の責任者

    監査役: 部長、お忙しいところ申し訳ありません。監査役の〇〇です。今日は、経理部門で保管されている銀行通帳と会計帳簿を突き合わせる作業にご協力いただきたく、参りました。

    経理部長: はい、承知いたしました。よろしくお願いします。

    監査役: ありがとうございます。この作業は、会社の財産が正しく管理されているか、また、帳簿の記録が正確であることを確認するための、監査業務の重要な一部です。ご協力ください。

    経理部長: なるほど。

    監査役: 具体的には、今期末の主要な銀行口座の通帳を拝見し、経理システム上の預金勘定の帳簿と一つずつ照合していきたいと思います。期中なのでズレがあると思いますが、そのズレの内容についてもその都度、ご説明をお願いできますでしょうか。

    経理部長: もちろん、お任せください。どの口座から始めましょうか?

    監査役: では、まずはメインバンクである〇〇銀行の通帳からお願いします。

    (通帳と帳簿を突き合わせる作業開始)

    監査役: これは、◯◯円の違いがありますね。この内容を教えていただけますか。

    経理部長: (説明)

    監査役: ありがとうございます。よくわかりました。(通帳の記帳内容を指しながら)部長、こちらの日付の「振込入金」ですが、この取引の元になった請求書を確認させていただけますか?

    経理部長: はい、少々お待ちください。(書類を探して提示)こちらがその請求書です。

    監査役: 承知いたしました。ありがとうございます。これで確認を終わります。

    監査役: 本日は長時間にわたり、ご協力いただき本当にありがとうございました。部長のおかげで、スムーズに作業を進めることができ、会社の預金管理が適正に行われていることを確認できました。これからも、どうぞよろしくお願いいたします。

    シナリオのポイント

    このシナリオでは、作業の目的と手順を最初に明確に伝えることで、相手に安心感を与え、協力を引き出しています。また、質問は「なぜこの取引が行われたのか」というように、背景や根拠を尋ねる形式にすることで、帳簿の内容が正しいかを確認しています。

    監査役の作業は、不正を見つけることだけでなく、会社の財務管理体制が適正に機能していることを確認するという側面も持っています。経理部門の専門性を尊重しつつ、具体的な事実に基づいた確認作業を進めることが重要です。


    会社事務入門株式会社の仕組みと運営のポイント監査役と監査役会>このページ

  • 新オフィスのレイアウトはどのようにしてプランをまとめればよいでしょうか?

    オフィスのレイアウトは、単に机や椅子を配置するだけでなく、社員の働きやすさ、コミュニケーション、生産性、そして企業の文化を形成する重要な要素です。計画的に進めることで、移転を成功させることができます。

    レイアウト検討の手順

    ステップ1: 移転の目的とコンセプトを明確にする

    まず、なぜオフィスを移転するのか、新しいオフィスで何を達成したいのかを明確にすることから始めます。

    目的: 生産性向上、社員間のコミュニケーション促進、企業のブランディング強化、新しい働き方の導入(例:フリーアドレス、ABW)、コスト削減など。

    コンセプト: 「クリエイティブな空間」「落ち着いて集中できる環境」「オープンで交流が活発な雰囲気」など、目指すオフィスのイメージを言語化します。

    ステップ2: 現状の課題とニーズを把握する

    現在のオフィスで社員が感じている課題や、新しいオフィスに期待することをヒアリングします。

    アンケートやヒアリング

    「現在のレイアウトで困っていることは何か?」

    「集中して作業できるスペースが欲しいか?」

    「気軽に相談できる場が欲しいか?」

    「どのような設備や備品があったら便利か?」

    「部署ごとの連携をどう改善したいか?」

    データ分析

    部署ごとの人員構成、使用している機器、保管している書類量などを把握します。

    1人あたりの面積や、会議室の利用頻度などを分析することで、必要なスペースの規模を正確に把握できます。

    ステップ3: ゾーニングとスペースプランニング

    オフィスの全体像を設計し、各エリアの配置を決めていきます。

    ゾーニング

    集中スペース(個人作業用)

    コミュニケーションスペース(会議室、休憩スペース)

    リラックススペース(休憩室、カフェエリア)

    機能スペース(受付、倉庫、サーバー室、複合機スペース)

    これらのエリアを、全体の動線や音の配慮(集中スペースの近くに騒がしいコミュニケーションスペースを配置しないなど)を考慮して配置します。

    スペースプランニング

    各エリアにどのくらいの面積を割り当てるか、具体的な寸法を決定します。

    例えば、「会議室は人数別に大小2つ必要」「休憩スペースには何人分の椅子を置くか」などを具体的に検討します。

    消防法や建築基準法など、法的な要件も満たしているか確認します。

    ステップ4: 家具・什器の選定と配置

    具体的な家具や什器を選定し、配置図を作成します。

    レイアウト図の作成

    CADソフトや専門のツール、もしくは手書きでも良いので、寸法を正確に反映したレイアウト図を作成します。

    どのデスクをどこに置くか、コンセントやLANポートはどこに配置するか、を具体的に書き込みます。

    家具の選定

    予算、コンセプト、機能性(収納力、 ergonomic designなど)を考慮して、デスク、椅子、棚、パーティションなどを選びます。

    移転を機に、機能性の高い新しい家具を導入するのも良いでしょう。

    専門家の力を借りるべきか?

    結論から言うと、専門家の力を借りることを強くお勧めします。

    レイアウト検討は、自社だけで行うには非常に労力がかかり、専門知識も必要です。特に、社員の満足度を高め、生産性向上に繋がるレイアウトを創り出すには、プロの知見が不可欠です。

    法的な規制や建築の専門知識も持っているため、思わぬトラブルを防げます。

    まずはいくつかの専門家から相見積もりを取り、自社の目的や予算に合ったパートナーを見つけることから始めるのが良いでしょう。

    特に以下のような場合は、専門家のサポートが不可欠です。

    オフィス移転が初めてでノウハウがない場合

    専門家は、オフィスレイアウトに関する豊富な知識と経験を持っています。

    社員数が多く、大規模なレイアウト変更が必要な場合

    複雑な動線や多様なニーズを整理し、最適なプランを立てるにはプロの視点が必要です。

    デザイン性やブランドイメージを重視する場合

    オフィスのコンセプトを具現化し、社員のモチベーションを高める魅力的な空間を創り出すには、デザインのプロの力が必要です。

    業務を止めずにスムーズな移転をしたい場合

    専門家は、移転プロジェクトのマネジメントにも長けているため、スケジュール調整や業者間の連携を円滑に進めてくれます。

    専門家の種類

    オフィスデザイン会社:

    レイアウト設計から内装工事、家具選定まで、オフィス移転全体をトータルでサポートしてくれます。企業のブランディングや働き方のコンセプトを反映した、オリジナリティあふれる空間を提案してくれます。

    内装工事業者

    構造的な工事(壁の設置、電気配線など)を中心に請け負います。デザイン会社と連携して、内装工事を担当することが多いです。

    引越し業者

    家具や什器の配置作業まで含めて依頼できる業者があります。


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  • オフィス移転作業を従業員に手伝わせるときの注意点

    オフィス移転作業を従業員に手伝わせるのは、慎重にしなければなりません。以下に、法的リスクと現実的な対応策を解説します。

    明確に指示を出すこと

    指示の出し方

    従業員に移転作業を手伝ってもらう場合、業務命令として明確に指示を出す必要があります。また、休日や所定労働時間外に行う場合は、労働基準法に基づき、時間外労働・休日労働に関する協定(36協定)が締結されていることが前提となります。36協定がない場合は、これらの労働を命じることはできません。

    割増賃金の支払い

    移転作業が所定労働時間を超える場合は、時間外労働として割増賃金の支払い義務が発生します。同様に、法定休日に作業を行う場合は休日労働として割増賃金が必要です。

    時間外労働等の支払いに代えて、「お礼」などの一定の金銭を支払うこともありますが、「お礼」だけで済ませず、きちんと割増賃金等の賃金を支払うことが前提になります。しかも、この場合の「お礼」は労働の対価として賃金と見なされ、給与加算しなけれならない可能性が高いです。

    怪我や事故の会社責任と労災保険

    オフィス移転作業は、通常の事務作業に比べ、重量物の運搬や不慣れな作業が多いため、怪我や事故のリスクが高まります。

    会社の責任

    会社が業務命令として移転作業を指示した場合、従業員の怪我や事故は会社の責任となります。安全配慮義務に基づき、会社は以下の対策を講じる必要があります。

    重い荷物を持つ際は複数人で運ぶ、台車を利用するなど、安全な作業方法を指示する

    作業環境を整備し、転倒防止などのリスク対策を行う

    安全講習を行う、作業に適した服装や靴の着用を推奨するなど、安全教育を徹底する

    体調不良の従業員には無理をさせない。

    労災保険の適用

    会社の業務命令で移転作業中に怪我や事故が発生した場合、それは業務災害と認められ、労災保険が適用されます。これにより、治療費や休業補償などが支給されます。しかし、会社の安全配慮義務違反が認められると、労災保険とは別に、会社が損害賠償を求められる可能性もあります。

    ボランティア的な手伝いをする社員の扱い

    問題点

    出社指示がないのに、「ボランティアとして手伝いたい」と申し出る社員がいたとしても、会社としては無償のボランティアとして扱うべきではありません。これは労働と見なされるため、労働基準法上、労働時間として扱われることになります

    本人が「自主的」と言っていても、会社の依頼が背景にある、あるいは会社の業務に資する内容であるなら、実質的には「労働」とみなされる可能性が高いです。

    黙認しただけでも「指揮命令下にある」と判断されるリスクがあります。

    会社の業務に携わっている以上、事実上会社の指揮命令下にあると見なされ、後から賃金や割増賃金の支払いを求められる可能性があります。作業中の怪我も労災の適用対象となります。

    対応策

    手伝いを希望する従業員には、希望を聞いて、受け入れるのであれば、事前に業務命令として扱い、労働時間や賃金支払いについて明確に説明する必要があります。

    人手が足りているのであれば、余分な人員を受け入れるべきではありません。不慣れな人が増えると事故や怪我の危険が高まるだけです。

    基本スタンスとしては、業者を中心にして、社員の手伝いは立会程度に留めるのが無難です。よって、手伝い希望があったとしても、予定にない従業員に対しては「出社しないよう」事前に明確に伝えておくべきです。

    社内への案内文例

    オフィス移転当日(○月○日)の対応について

    当日は、引越業者による作業が中心となります。業務上の対応として、事前に会社から指名された従業員のみが作業に立ち会います。
    その他の従業員の皆様には出社いただく必要はありません。安全上・法的観点からも、ご好意によるお手伝いはご遠慮くださいますよう、お願いいたします。
    新オフィスでの勤務開始は○月○日(月)からとなります。何卒よろしくお願いいたします。

    その他考慮すべきこと

    作業管理の徹底

    移転作業に従事した従業員の作業内容、労働時間を正確に記録し、適切な賃金計算を行うとともに、無理無駄な作業をしていないかコントロールすることが不可欠です。万が一のトラブルに備え、誰が、いつ、どのような作業を行ったかを記録に残しておきましょう。

    備品等の破損

    移転作業中に会社の備品や機材を破損させてしまった場合、従業員に弁償を求めることは原則としてできません。これは、会社の業務遂行中に発生した損害であり、会社が負うべき責任と見なされるためです。

    移転作業の専門業者への依頼

    これらの労務管理や安全管理のリスクを回避するため、オフィス移転は専門の業者に依頼するのが最も安全かつ確実な方法です。従業員に手伝いを依頼する場合でも、専門業者と連携し、重い荷物、精密機器などの運搬などは業者に任せるなどの対策を講じるべきです。


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  • オフィス移転ではITインフラの移転が重要なポイント

    オフィス移転に伴うITインフラ(パソコン、Wi-Fi設備、ネットワークなど)の移転は、業務に直結するため非常に重要なポイントです。スムーズな移転とすぐに正常稼働させるための注意点と効率の良いやり方を以下にまとめました。

    移転前の入念な準備と計画

    ITインフラの移転は、移転日のかなり前から計画的に進める必要があります。

    現状の把握と課題の洗い出し

    現在のネットワーク構成図(物理配線、論理構成)を把握していますか?

    使用している機器(PC、サーバー、ルーター、ハブ、Wi-Fiアクセスポイント、複合機、電話など)のリストアップと型番、設定情報を確認していますか?

    各システムの稼働状況や依存関係、バックアップ状況を確認していますか?

    現在のオフィスで「Wi-Fiが遅い」「一部のフロアで電波が弱い」などの課題はありませんか?移転を機に改善できないか検討しましょう。

    新オフィスのITインフラ要件定義

    移転先のオフィスの広さ、レイアウト、電源容量、OAフロアの有無、天井の高さなどを確認し、必要な機器の台数や設置場所を検討します。

    将来的な社員数の増加や、新しい働き方(フリーアドレス、Web会議の増加など)に対応できるよう、余裕を持った設計をしましょう。

    特にWi-Fiは、壁の材質や柱の位置、電波干渉源(電子レンジなど)を考慮し、十分なアクセスポイント数と適切な配置を検討します。

    スケジュール策定

    インターネット回線の開通工事は時間がかかる場合があります。移転が決まったらすぐにプロバイダや回線事業者に連絡し、工事日を確定しましょう。

    ネットワーク工事、PC設定、サーバー移設、Wi-Fi設置など、各工程の期間を見積もり、余裕を持ったスケジュールを組みます。

    業務停止期間を最小限にするために、休日や夜間での作業を検討しましょう。

    予算の確保

    機器購入費用、工事費用、業者への依頼費用など、ITインフラにかかる費用を正確に見積もり、予算を確保します。

    想定外の出費に備え、予備費も設けておくと安心です。

    担当者の選定と業者との連携

    社内でITインフラ移転の責任者を明確にし、各業者との窓口を一本化します。

    IT関連の専門業者(ネットワーク工事、サーバー移設、PC設定など)を選定し、早めに打ち合わせを開始します。相見積もりを取り、実績やサポート体制を確認しましょう。

    引越し業者にも、PCやサーバーなどの精密機器の運搬に関する専門知識と実績があるか確認しましょう。

    移転作業中の注意点

    データのバックアップ

    PC、サーバー、NASなど、全ての重要なデータは必ず複数箇所にバックアップを取っておきましょう。物理的な移送中に破損するリスクはゼロではありません。クラウドストレージの利用も検討しましょう。

    機器の梱包とリスト化

    PCやモニターは丁寧に梱包し、どのPCが誰のものか、どの場所に設置するかなどを明確に分かるようにラベリングしておきましょう。

    サーバーやネットワーク機器は、電源ケーブルやLANケーブルの接続箇所を写真に撮っておくと、移転先での再接続がスムーズになります。

    配線の整理と明記

    移転前のオフィスで配線が複雑な場合は、移転を機に整理しましょう。

    移転先での配線時には、どこに何のケーブルを接続するか、明確に分かるようにラベリングしながら作業を進めると、トラブル発生時の特定が容易になります。LANケーブルと電気配線は電磁波干渉を避けるため、離して設置することが推奨されます。

    セキュリティ対策

    移転中はセキュリティリスクが高まります。不要なデータは削除し、PCやサーバーにロックをかけるなど、情報漏洩対策を徹底しましょう。

    新しいWi-Fiの設定は、強固なパスワードを設定し、ゲスト用ネットワークと社内ネットワークを分けるなどのセキュリティ対策を施しましょう。

    移転後の最終確認とトラブル対応

    稼働テスト

    移転後、すぐに全ての機器とネットワークが正常に動作するか、社員が業務を開始できるかを確認します。

    インターネット接続、社内ネットワーク、プリンター、共有ファイルへのアクセス、各種システムの起動などを社員に協力してもらい、確認しましょう。

    Wi-Fiは実際に使用する場所で電波強度を測定し、死角がないか確認します。

    トラブルシューティング

    万が一、不具合やトラブルが発生した場合は、すぐに原因を特定し、業者と連携して対応します。

    あらかじめ、トラブル時の連絡先や対応フローを決めておくと安心です。

    情報共有と社員への周知

    新しいWi-FiのSSIDやパスワード、プリンターの設定方法など、社員が業務を開始するために必要な情報を事前に周知しましょう。

    IT関連の問い合わせ窓口を明確にし、移転直後は手厚いサポート体制を整えましょう。

    ITインフラ移転の効率化

    ITインフラ専門業者への一括依頼

    ネットワーク工事、サーバー移設、PC設置・設定など、ITインフラに関する全てを専門業者に一括で依頼することで、スケジュール調整や業者間の連携がスムーズになります。

    社内のIT担当者の負担を軽減し、専門知識と経験に基づいた効率的な移転が期待できます。

    クラウドサービスの活用

    サーバーを物理的に移設するのではなく、クラウドサービス(AWS, Azure, Google Cloudなど)へ移行することを検討しましょう。物理的な移設作業が不要になり、運用負荷も軽減されます。

    ファイルサーバーをクラウドストレージ(OneDrive, Google Drive, Dropboxなど)に移行することで、どこからでもアクセス可能になり、データ管理も効率化されます。

    機器の買い替え・刷新

    移転を機に、老朽化したPCやネットワーク機器を最新のものに買い替えることで、パフォーマンス向上やトラブルリスクの軽減に繋がります。特にWi-Fi機器は最新規格(Wi-Fi 6など)に対応したものを導入すると、より快適な通信環境が実現できます。


    オフィス移転は、単なる場所の移動だけでなく、ITインフラの最適化や業務プロセスの見直しを行う絶好の機会です。これらのポイントを踏まえ、計画的かつ効率的に進めることで、円滑な業務再開を目指しましょう。

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  • オフィス移転記念の社内イベントはどうするか?

    オフィス移転の際に記念品を配ったり、簡単なパーティーを行うことは、多くの企業で見られる慣習です。ただし、それが従業員にとって「嬉しいもの」「負担にならないもの」であることが重要です。以下に、実務的な観点からのアドバイスをまとめます。

    記念品を配布する

    オフィス移転は会社の節目のひとつです。記念品を渡すことで「気持ちの共有」や「感謝の表明」になります。

    記念品の例

    ロゴ入り文具(ペン、ノート) 実用的でコストも安価。記念性もある

    エコバッグ・マグカップ 男女問わず使えて無難。好みに左右されにくい

    お菓子の詰め合わせ 配りやすく、気を使わせない

    地元名産品(新オフィス所在地の特産) 「地域とのつながり」を印象づけられる

    新オフィスで簡単なパーティーを行う

    多くの企業で、移転後に社員だけで軽い懇親会を行っています。

    開催のポイントは「気楽さ」と「自由参加」です。

    「業務時間内「自由参加」「短時間」を基本に、社員の負担にならないように配慮しましょう。

    社内パーティーの例

    強制参加の宴会形式は時代に合わず、かえってマイナス印象になる可能性があります。

    社内で、お昼休み前1時間を目安に行いましょう。お昼休み時間になった時点で散開という流れです。なお、予定時間内であっても乾杯後は退席事由にしましょう。

    軽食・飲み物を用意しますが準備の手間をかけないようにケータリングを利用します。勤務時間中なのでアルコールは無しです。
    会社からの挨拶は一言「ありがとう、乾杯!」程度が良いでしょう。


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  • 会社の本店住所を変更する場合は「本店移転登記」が必要です

    会社の本店移転登記の流れと、電子申請についてご説明します。

    会社の本店移転登記の流れ

    会社の本店移転登記は、主に以下の流れで進めます。

    なお、「住所変更登記」という言葉も耳にするかもしれませんが、これは一般的に、不動産を所有している個人の住所が変わった際に行う手続きなどを指します。会社の本店の移転は「本店移転登記」です。

    株主総会・取締役会の決議

    会社の定款に記載されている本店所在地が変更になる場合、株主総会の特別決議が必要です。

    特別決議とは、議決権を行使できる株主の過半数が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成で行う決議です。

    本店所在地は、定款の絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)となっていますが、ほとんど場合、定款に最小行政区画である市区町村まで記載されています。したがって、例えば、定款に「本店を東京都中央区に置く」と書いてある場合、同じ東京都中央区内に本店を移転するのであれば、定款を変更する必要はないので株主総会を開く必要はありません。

    定款の範囲内で、同じ市区町村内で移転する場合は、取締役会設置会社であれば、取締役会での決議で足りる場合もあります。取締役会を設置していない場合は取締役の過半数の一致を証明する書面を提出します。

    会社の住所変更に関する決議日(株主総会または取締役会)は、新しい住所に移転する前に行います。

    これは、変更の意思決定が先になされるべきだからです。株主総会や取締役会で決議された内容に基づいて、その後の手続きが進められます。

    決議議事録を作成し保存します。これは登記の添付書類になります。

    登記申請書の作成

    法務局のウェブサイトから登記申請書のひな形をダウンロードするか、法務局の窓口で入手します。

    会社の商号、本店所在地、役員の情報などを正確に記載します。

    収入印紙を貼付します(登録免許税)。

    添付書類の準備

    変更の内容に応じて、必要な添付書類を準備します。

    主な添付書類:

    株主総会議事録または取締役会議事録

    株主リスト(株主総会で決議した場合)

    委任状(司法書士などに代理で申請を依頼する場合)

    法務局への申請

    会社の所在地を管轄する法務局に、登記申請書と添付書類を提出します。

    登記申請は、移転日から2週間以内に行う必要があります。

    窓口での申請、郵送による申請、そして電子申請が可能です。

    登記完了

    法務局での審査が完了すると、登記が完了し、登記事項証明書に新しい住所が反映されます。

    申請から完了までには、数日から1週間程度かかります。

    法務局への手続きは電子申請でも出来ますか?

    はい、法務局への手続きは電子申請でも可能です

    電子申請は、法務局が提供する「登記・供託オンライン申請システム」を利用して行います。

    申請には、電子証明書(電子署名)が必要になります。

    電子申請は難しいですか?

    結論から言うと、初めての方には少し難しく感じるかもしれません。

    その理由は、主に以下の点にあります。

    専用のソフトウェアが必要: 申請には、法務省が提供する専用のソフトウェアをインストールする必要があります。

    電子証明書の取得と設定: 電子証明書を取得し、パソコンに設定する作業が必要です。

    操作が複雑: 申請システムの操作が直感的ではなく、マニュアルを読みながら進める必要があります。

    専門用語が多い: 登記に関する専門用語が多く、慣れていないと戸惑うことがあります。

    これらのハードルがあるため、多くの中小企業では、司法書士に依頼して手続きを代行してもらうケースが多いです。

    もし、ご自身で電子申請を行う場合は、法務局のウェブサイトで公開されているマニュアルをよく読み、不明な点があれば法務局に問い合わせることをお勧めします。

    また、商業登記電子証明書を利用する際は、発行元である法務局のウェブサイトで、取得方法や利用方法を確認してください。


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