カテゴリー: マニュアル

  • シンプルな評価制度でスタートするーその2:マニュアル編

    シンプルな評価制度でスタートするーその2:マニュアル編

    このマニュアルは、シンプルな評価制度でスタートするーその2の記事に対応しています。

    実施マニュアル(配布用)

    360度評価と絶対評価

    1. 制度の目的

    この評価制度は、個人の能力を多角的に捉え、公平な評価と成長を促すことを目的としています。

    • 公平な評価: 上司だけでなく、同僚や関係部署など、複数の視点から評価することで、特定の関係に偏らない公正な評価を実現します。
    • 気づきの促進: 周囲からのフィードバックを通じて、自分の強みや改善点に気づき、今後の成長に繋げます。
    • 役割と貢献の可視化: 会社が求める役割や成果を明確にし、皆さんの貢献を適切に評価します。

    2. 評価の仕組み

    この制度では、以下の2つの軸で評価を行います。

    • 行動評価(360度評価): 「周囲への貢献度」や「チームワーク」を評価します。
    • 能力・成果評価(絶対評価): 「個人の成果」や「期待される役割の達成度」を、あらかじめ定めた基準で評価します。

    3. 評価のサイクル

    評価は年2回実施します([例:上期:4月~9月、下期:10月~3月])。

    1. 評価者選定(期末): 評価者(上司、同僚、関係部署のメンバーなど)を選定します。
    2. 360度評価実施(期末): 評価者がWebツールや評価シートで、被評価者の行動について回答します。
    3. 上司による絶対評価(期末): 上司が個人の職務や役割に基づき、能力と成果を評価します。
    4. 自己評価・振り返り(期末): 評価シートの「自己評価」欄に、期間中の行動や成果について記入します。
    5. 上司面談・フィードバック(期末): 上司との個別面談で、評価結果について丁寧に話し合います。
    6. 処遇への反映: 上司による絶対評価に基づき、昇給・賞与を決定します。360度評価は、主にフィードバックのための参考資料として活用します。

    4. 評価面談の進め方

    360度評価の結果を共有する際は、特に丁寧な対応が求められます。

    • 評価の目的を再確認: 面談の冒頭で、「この評価は皆さんの成長を促すためのもの」であることを明確に伝えます。
    • 結果の共有: 評価シートの項目ごとに、周りからどのように見られているかを共有します。
    • 改善策の検討: 課題が見つかった場合は、具体的な改善策を一緒に考えます。
    • 感謝を伝える: 評価に協力してくれた同僚や関係部署への感謝の気持ちを伝えることを忘れないでください。

    作業マニュアル(人事課用)

    360度評価と絶対評価

    1. 準備段階(評価開始の1ヶ月前)

    • 評価期間とスケジュール設定: 評価期間(例:上期4月〜9月)と、360度評価の実施期間、絶対評価の期間、面談期間を決定します。
    • 評価シートの準備: 360度評価用と絶対評価用、それぞれのシートを準備します。360度評価は匿名での実施が望ましいので、システムやアンケートフォームを活用すると便利です。
    • 評価者リストの作成: 従業員一人ひとりに対し、誰が360度評価を行うか(例:上司、同僚2名、部下1名など)のリストを作成します。

    2. 評価期間(期末)

    360度評価の実施

    評価者リストに基づき、評価を依頼する従業員に評価シートまたはアンケートフォームのURLを送付します。

    評価の目的が「本人の成長を促すためのフィードバック」であることを明確に伝え、正直な回答を促します。

    絶対評価の実施

    上司に絶対評価シートを配布します。職位ごとの評価基準を記載したマニュアルも合わせて配布し、評価のばらつきを抑えます。

    上司に評価の提出期限を明確に伝えます。

    自己評価の実施

    全従業員に自己評価シートを配布し、期末の自己振り返りを促します。

    3. 回収と集計作業(評価期間終了後)

    360度評価の回収と集計

    • 回答を全て回収し、匿名性を保ったまま集計します。
    • 集計結果は、本人と上司のみが確認できるようにします。集計結果を個人が特定できる形で社内に公開することは厳禁です。

    絶対評価・自己評価の回収と集計

    • 上司による絶対評価シートと、従業員による自己評価シートを全て回収します。
    • 絶対評価の点数を集計用Excelシートに入力します。

    集計結果の報告

    • 絶対評価の集計結果を人事部門の責任者や経営陣に報告します。
    • 360度評価の結果は、給与決定には直接使用せず、あくまで「面談用」として扱います。

    給与・賞与への反映

    • 絶対評価の点数に基づいて、昇給額や賞与の支給率を決定し、給与計算部門に情報を提供します。

    4. 面談準備

    • 面談用資料の準備: 各従業員の360度評価の集計結果と絶対評価のシートを印刷し、上司に渡します。
    • 面談の実施: 上司が個別に面談を行い、評価結果とフィードバックを伝えます。

    会社事務入門評価制度のあらまし>このページ

  • シンプルな評価制度でスタートするーその1:マニュアル編

    シンプルな評価制度でスタートするーその1:マニュアル編

    このマニュアルは、シンプルな評価制度でスタートするーその1の記事に対応しています。

    実施マニュアル(配布用)

    目標管理制度(MBO)とコンピテンシー評価

    1. 制度の目的

    この評価制度は、皆さんの「成長」と会社の「発展」を繋げるためのものです。

    • 公正な評価と処遇への反映: 個々の頑張りと成果を公正に評価し、昇給や賞与に反映させます。
    • 個人の能力開発: 評価面談を通じて、皆さんが今後のキャリアプランやスキルアップの方向性を見つける手助けをします。
    • 組織目標の達成: 個人の目標を会社の目標と連動させることで、全社員が一丸となって目標達成を目指します。

    2. 評価の仕組み

    この制度では、以下の2つの軸で評価を行います。

    • 目標評価(MBO): 「何を成し遂げたか(成果)」を評価します。
    • コンピテンシー評価: 「どのように成し遂げたか(行動プロセス)」を評価します。

    3. 評価のサイクル

    評価は年2回実施します([例:上期:4月~9月、下期:10月~3月])。

    1. 目標設定(期初): 上司と話し合い、個人の具体的な目標(3~5個程度)を設定します。この際、SMARTの法則(具体的か、測定可能か、達成可能か、関連性があるか、期限が明確か)を意識してください。
    2. 中間レビュー(期中): 上司との面談で、目標の進捗を確認します。必要に応じて目標を調整します。
    3. 自己評価・振り返り(期末): 評価シートの「自己評価」欄に、目標の達成度や期間中の行動について記入します。
    4. 上司評価・面談(期末): 上司が評価を行い、皆さんと個別面談を実施します。評価の理由や今後の期待について丁寧に話し合います。
    5. 処遇への反映: 決定した評価結果に基づき、昇給・賞与を決定します。

    4. 評価面談の進め方

    評価面談は、皆さんの成長を促すための重要な機会です。

    • 良かった点を伝える: 上司は、皆さんの貢献や努力を具体的に称賛します。
    • 改善点を話し合う: 今後の成長に必要な改善点を、具体的な行動例を挙げて伝えます。
    • 今後の目標を立てる: 面談を通じて、次期の目標やキャリアプランについて一緒に考えます。

    作業マニュアル(人事課用)

    目標管理制度(MBO)とコンピテンシー評価

    1. 準備段階(評価開始の1ヶ月前)

    • 評価期間とスケジュール設定: 評価期間(例:上期4月〜9月)と、今後のスケジュール(目標設定期間、中間レビュー期間、評価面談期間など)を決定します。
    • 評価シートの準備: 従業員数分の評価シートを印刷するか、デジタルデータで準備します。全従業員の氏名、部署、上司名を事前に記入しておくと配布がスムーズです。
    • 評価者向け研修の準備: 上司(評価者)向けに、評価制度の目的、評価基準、面談の進め方などを説明する研修資料を作成します。必要に応じて日程を調整し、会議室を予約しておきます。

    2. 目標設定・自己評価期間(期初および期末)

    • 評価シートの配布: 従業員全員に評価シートを配布します。メールや社内イントラネットで配布する場合は、期日を明確に記載します。
    • 記入方法の説明: 配布と同時に、記入方法や提出期限について説明します。問い合わせ窓口(担当者)も伝えておきましょう。
    • 未提出者の確認と催促: 提出期限が過ぎた後、未提出者をリストアップし、個別に提出を促します。

    3. 上司評価・面談期間

    • 評価シートの回収と上司への配布: 従業員から回収した評価シートを、それぞれの直属の上司に配布します。
    • 評価者向けマニュアルの配布: 上司に評価シートを配布する際、評価者向けマニュアルや研修資料を再度配布し、評価の統一を図ります。
    • 面談状況の確認: 各部署の評価面談の進捗状況を、必要に応じて上司に確認します。

    4. 回収と集計作業(評価面談終了後)

    • 最終評価シートの回収: 上司と従業員の署名が完了した最終的な評価シートを全て回収します。
    • 評価結果の集計: 評価シートの点数を、事前に作成した集計用Excelシートやシステムに入力します。
      • 総合評価ランクの決定: 目標評価とコンピテンシー評価の合計点から、S、A、B、Cなどの総合評価ランクを決定します。
    • 集計結果の報告: 集計した結果を人事部門の責任者や経営陣に報告します。この際、評価分布(Sランクが何人、Aランクが何人など)も合わせて報告します。
    • 給与・賞与への反映: 報告された評価結果に基づき、昇給額や賞与の支給率を決定し、給与計算部門に情報を提供します。

    会社事務入門評価制度のあらまし>このページ

  • 法人カード利用管理マニュアル(サンプル)

    このマニュアルは、従業員全員が法人カードを正しく、安全に利用するための基本原則と具体的なルールを定めたものです。各企業の実情に合わせて適宜ご利用ください。

    株式会社◯◯法人カード利用管理マニュアル

    1. はじめに

    当社は、小口現金の廃止に伴い、少額の経費支払いには「法人カード」を使用します。このマニュアルは、法人カードの正しい利用方法を定め、従業員一人ひとりが責任を持ってカードを利用・管理することを目的としています。本マニュアルを遵守し、業務の効率化と透明性の向上にご協力をお願いします。不正利用に対しては就業規則に則り厳正に対処いたします。

    2. カードの利用範囲と原則

    利用範囲

    法人カードは、以下の経費支払いにのみ利用可能です。

    1.交通費(電車、バス、タクシーなど)

    2.事務用品、消耗品の購入費

    3.書籍代

    4.会議費、接待交際費(上長の承認が必要)

    5.その他、事前に上長の承認を得た経費

    利用できない経費

    以下の目的でのカード利用は一切禁止します。

    1.個人の買い物や私的な費用

    2.経費として認められていない物品の購入

    3.現金化を目的とした利用

    4.備品の購入など、高額な支払い

    利用の原則

    「私的利用は一切しない」ことを厳守してください。

    カードは貸与された本人のみが利用し、他人への貸与は厳禁です。

    領収書は必ず受け取り、紛失しないよう管理してください。

    3. カードの利用方法と手続き

    3-1. カード利用時の手続き

    支払い: 経費の支払い時、必ず法人カードを利用してください。

    領収書の受領: 領収書は必ずもらい、内容(日付、金額、品目など)が正しいか確認してください。

    経費精算システムへの入力: 経費精算システムに領収書の画像をアップロードし、利用明細を入力してください。

    入力項目: 利用日、金額、利用目的、勘定科目、利用先など

    入力期限: 利用日から原則○営業日以内に完了させてください。

    3-2. 利用限度額について

    カードには部署や役職ごとに利用限度額が設定されています。

    限度額を超える支払いが予定される場合は、事前に上長を通して申し出てください。

    4. カードの管理と不正利用防止のための注意喚起

    カードの保管

    カードは個人で厳重に管理し、常に安全な場所に保管してください。

    パスワード(暗証番号)は他人に教えず、メモなどに残さないでください。

    不正利用防止

    不審なメールや電話でカード情報の入力を求められても、絶対に応じないでください。

    カードを紛失・盗難した場合は、直ちに以下の2点を行ってください。

    カード会社の紛失・盗難デスクに連絡し、利用を停止する。

    社内の経理担当者および上長に速やかに報告する。

    経理部門からのチェック

    経理部門は、カード会社から送付される利用明細と、経費精算システムに入力された内容を毎月照合します。

    もし利用目的が不明な支出や、私的利用が疑われる支出が発見された場合は、厳正に対処します。

    5. Q&A

    Q. 法人カードが使えない店ではどうすればいいですか?

    A. 個人のクレジットカードや現金で立て替えてください。後日、通常の経費精算手続きに従って精算します。

    Q. 領収書をなくしてしまいました。どうすればいいですか?

    A. カードの利用明細と、経費精算システムへの入力内容を照合して確認します。しかし、原則として領収書は必須です。紛失しないよう厳重に管理してください。


    関連記事:ミスなく正確に!小口現金管理の基本と管理方法

    会社事務入門マニュアルのサンプル>このページ

  • マニュアル作成の目的と作り方

    マニュアルとは

    マニュアルとは、業務に関するノウハウやルール、業務全体の進行方向をまとめたドキュメントのことです。マニュアルがあれば、初心者やベテランの区別なく誰が作業を担当しても一定の品質の業務を行うことができます。

    マニュアルと類似した用語に、手順書や取扱説明書があります。手順書は特定の作業の作業手順や注意事項を記載したもので、マニュアルの一部を構成します。取扱説明書は機械やソフトウェアなどの操作や点検等に使用するドキュメントです。

    マニュアルについて、このページの下の方でもう少し詳しく解説しています。

    マニュアルはなぜ必要か

    仕事のやり方は先輩に教えてもらうと思います。一度聞いただけでは覚えられないので、メモを書いたり、メモを整理したノートを作っていると思います。それが個人個人のマニュアルです。

    これだと、仕事のノウハウはその人しか知らないものになってしまいます。統一されたマニュアルがあれば、その人が休んでも周りの人が代行できるし、ノウハウがオープンになるので関係者がベースになるマニュアルを元に協議することで不合理なやり方は合理的なやり方に置き換えていくことができると思います。

    このように個人個人のマニュアルを元に会社として統一したマニュアルがあればよいのですが、いざ作るとなると大変です。けっこう膨大なものになるので、片手間では充分なものが作れません。

    このページでは、マニュアル作成についていろいろな角度から解説します。

    マニュアルの効果

    業務効率化

    マニュアルがあれば各業務に要する時間を短縮できます。

    例えば、ある仕事はどのような手順で行うのか、注意しなければならない点、わからないことはどこに書いてあるか誰に聞けば良いのかなどがすぐにわかります。

    マニュアルを使えば、初心者でもベテランの仕事をこなすことができます。つまり、誰がやってもミスが少ないレベルに部署の力を高めることができます。

    属人化の回避

    マニュアルがあると転属や退職で引き継ぎが必要になったときに効率的に引き継ぎ作業をすることができます。特定の人しかわからない業務をなくすることで不正防止効果も期待できます。

    個人のノウハウを全体の共有にすることで部署全体の力を高めることができます。もちろん、特定の業務ごとに経験値が高く専門的知識が豊富な担当者は必要ですが、だからといって他の人が何も知らないというのは問題があります。

    個人的な都合、病気や事故などで突然休むこともあります。そうしたときに、マニュアルがあると、他の部署の者でも臨時に代行することが可能になります。

    マニュアルの種類

    マニュアルにはさまざまな種類があります。一般的な会社で必要なのは、業務マニュアルなどです。

    マニュアル作成の注意点

    分かりやすい文章で書く

    なるべく専門用語を避けて簡潔で平易な言葉で書くようにします。抽象的な表現を避けて可能な限り具体的に書きます。

    図や表などを使う

    視覚的に分かりやすい図や表を効果的に用いるようにします。イラストや写真や動画も取り入れるようにしましょう。

    マニュアル作成後の注意点

    マニュアルはすぐに古くなってしまいます。マニュアルを最新の状態に保つために、業務内容等に変更があったら、速やかに該当部分を手直ししなければなりません。

    マニュアルのサンプル

    サンプルをいくつか用意しています。次のページをご覧ください。

    マニュアルのサンプル


    会社事務入門マニュアルのサンプル>このページ

  • カスタマーハラスメント対応マニュアル(サンプル)

    このマニュアルサンプルは、TOKYOはたらくネットに掲載された「カスタマー・ハラスメント防止のための各団体共通マニュアル」の「事業者マニュアルのひな形」を元に筆者の経験を加味して作成したものです。従業員数が数百名程度の中小企業を念頭に作成しました。

    カスハラ対応マニュアル

    1.本マニュアルの目的

    株式会社◯◯は従業員の健康と安全を守るため、カスタマーハラスメント(カスハラ)事案発生時の対応手順と、従業員が安心して業務に取り組める環境を整備するための指針としてこのマニュアルを制定します。

    また、前提として、顧客等から寄せられるクレームの全てがカスタマーハラスメントではないことをご理解ください。商品・サービスの不具合等を起因とした顧客等からの商品交換や代替サービスの提供等の要求自体は、社会通念上妥当であり、真摯に受け止めることを原則とします。傾聴し、時には寄り添いながら顧客等の主張を正確に聞き取ってください。感情的にならず常に冷静な言動と判断を心がけてくださるようお願いします。

    2.定義

    (1)カスハラの定義

    カスタマーハラスメントとは、顧客からの言動のうち、社会通念上相当な範囲を超えるもので、従業員の就業環境を害するものを指します。具体的には(2)に示した行為が含まれます。ただし、これらはあくまで例示でありこれらに限られるものではありません。

    (2)カスハラの例

    ①暴力・暴言(殴る、蹴る、大声を出す、脅迫的な言動、侮辱的な言動、威嚇、脅迫など)

    ②精神的攻撃(人格否定の発言、差別的な発言、長時間の拘束、執拗な連絡、SNS等での誹謗中傷、個人的な要求、土下座の強要など)

    ③不当な要求(正当な理由のない金銭やサービスの要求、企業秘密の開示要求、反社会的勢力との関係を匂わせる言動など)

    ④ハラスメント(性的な冗談、不快な視線、身体への不必要な接触、性的な要求などのセクシャルハラスメント、その他のハラスメント)

    3.クレームへの初期対応

    (1)要求内容を特定する

    要求内容を明確に特定し、特定した要求内容を踏まえ、対応の可否を検討してください。顧客等の氏名や連絡先等を教えていただき、クレームの原因と要求内容を正確に把握するために復唱して確認してください。

    クレームの原因と要求内容は、When(いつ)/Where(どこで)/Who(誰が)/What(何を)/Why(なぜ)/How(どのように)の5W1Hにより正確な事実関係を把握してください。

    (2)事実を確認をする

    回答する前に顧客の申し立て内容が事実かどうか調査する必要があります。事実を確認しないまま、顧客等の要求内容を認める発言はしてはいけません。

    事実関係の確認前の段階では限定的な謝罪(例:お客様に嫌なお気持ちを与えてしまい誠に申し訳ございません。)にとどめてください。

    充分な調査が必要だと判断した事案については、必要な調査等を行った上で回答する旨を顧客等に伝えてください。その場合、できるだけ具体的な日数を(例:〇日間、〇週間程度)を伝えるようにしてください。

    (3)複数人で対応する

    単独で対応しないで複数人で対応してください。

    突発的だったなどやむを得ない事情で単独で対応したときは、できるだけ速やかに応援を求めて複数体制にしてください。

    顧客等が複数の場合は同数以上の複数人で対応してください。多数で押しかけた場合は必要最小限の人数(対応する従業員数以下)にしてくださるように求めてください。

    電話でのクレーム対応の場合は、初期対応した従業員が引き続き対応するのが原則ですが、手に余ると感じたときは1人で抱え込まず速やかに上司に対応を要請してください。

    いずれの場合においても、対応に不安を感じたときはためらわずに上司、同僚、他部門に応援を要請してください。

    (4)対応場所を選ぶ

    原則として事務所や店舗のオープンスペースで対応してください。会議室や応接室等で対応するのは例外です。

    会議室等で対応する必要があると認めた場合は次の点に留意してください。

    ①密室状態にしてはいけません。ドアを開けて室内の状況を周囲が確認できるようにしてください。

    ②すぐに退室できるように従業員は出入口側に着席してください。

    ③退去しない場合に不退去とみなすため、管理権の範囲内の場所で対応してください。店舗の外の路上等では対応しないでください。

    ④クレーム対応のために顧客等を訪問することは可能な限り避けてください。やむを得ず訪問しなければならない場合は、対応力のある者を複数の者を人選して慎重に行動してください。弁護士等の第三者の動向を求めたい場合は申し出てください。

    (5)時間制限をつける

    長時間に渡ったときは、「恐れ入りますが、次の予定がございますので、〇時までにお話を伺えますでしょうか(次回は明日にしてもよろしいでしょうか)」などと時間制限を設けてください。

    (6)記録を作成し関係者で情報を共有する

    ①顧客等への対応内容を可能な限り詳細に記録して、速やかに関係者で情報共有してください。

    記録は事実に即して記載してください。例えば、顧客等が同じ話を何度も繰り返す場合、何度も繰り返しているからといって省略しないでください。時系列での記録で適切な対応をしていることを示す必要があります。発言の内容を別な言葉に置き換えないでください。できるだけ発言の言葉をそのまま記載し、聞き取り不能の個所は聞き取り不能と記載し、声の大きさ、腕の動きなどの状況も記載してください。

    ②事実関係を正確に記録するために会社の電話はすべて録音を原則とします。携帯電話等もすぐに録音をスタートできるように操作方法を確認しておいてください。必要と認める場所には防犯カメラを設置してください。その他に、録音できる装置を用意してください。

    録音する場合、事前承諾を得ることが望ましいので、顧客との対応がクレームであることが判明した時点で「正確にご要望を把握してサービスを向上させるために会社の方針で録音しておくことになっております。ご了承いただけますか。」と発言して録音をスタートさせてください。なお、同意を得ない録音でも直ちに違法ではないとされているので、2(2)のカスハラの定義で示したような反応があったときは了承を得られなくても「録音させていただきます」と発言して了承を得られなくても録音を開始してください。

    ④インターネットで寄せられたクレームの場合、メール等を電磁的に記録するとともに印刷して保管してください。SNSの投稿やメッセージはすぐに削除される可能性があるため、スクリーンショット等を活用し保存してください。

    4.カスハラ認定後の対応

    (1)従業員のケアとサポート

    ①精神的なダメージを受けた従業員に対し、産業医や外部のカウンセリング機関と連携し、心のケアを提供します。

    ②担当した従業員から希望があれば休業や一時的な配置転換を検討します。本人が希望しない場合でも、上司の判断により休養を命じまたは担当を交代させることがあります。

    (2)要求に対する拒否または提案

    相手の要求が不当であると判断した場合は、対応できないことを明確に伝えることになります。一部受け入れる余地があると判断した場合は、関係部署の上長との協議を経て当社のルールに基づいた代替案や解決策を提示してください。

    不当な要求に対しては、毅然とした態度で明確に拒否してください。その場の流れで対応しないで、気後れするような場合は速やかに上長にとりついでください。

    拒否してもなお暴言や不当な要求が続く場合は、「申し訳ございませんが、そのようにお話しされると対応いたしかねます」などと明確に伝え、一旦対応を打ち切ってください。

    (3)出入禁止の通告

    カスハラ行為が繰り返される場合や、悪質性が高いと判断される場合は、出入禁止を命じることを検討し、上長らの協議のうえ「この度は大変不本意ですが、今後の入店をお断りさせていただきます。」などと口頭で通知してください。書面による通知をもとめられた場合は所定の様式により作成して交付してください。

    (4)警察への通報・弁護士との連携

    直接的な暴力、器物損壊、脅迫などの犯罪行為に該当する行為があったときは迷わず警察に通報してください。

    暴力等が衝動的一時的なもので相手がその場で謝罪したとしても、その場で警察に通報してください。会社の体面を考えてためらってはいけません。

    被害を受けたときは軽症でも労災保険で医師の診断を受けて診断書を入手してください。器物については写真を撮り現物を保管してください。

    また、会社は適切なタイミングで弁護士事務所と打ち合わせを開始し法的措置の可能性を検討しますが、現場において法的な助言が必要な場合は遠慮なく申し出てください。

    5.マニュアルの周知と研修

    このマニュアルは、社内ポータルサイトに掲載するとともに全従業員に配布することにより周知します。

    このマニュアルは事案が発生した毎に評価・見直を行って必要に応じて改定し直ちに周知します。

    カスハラ事例や対応策について全従業員を対象に定期的な研修を実施して、対応能力の向上を図ります。

    6.担当部署

    本マニュアルに記載した事項についての担当部署は本社総務部とします。責任者は総務部長とし、総務部長は顧客対応担当課長を指名します。

    すべての従業員がカスハラに関して相談ができる「顧客対応相談室」を本社総務部内に設置します。顧客対応相談室への連絡方法等については社内ポータルサイトにて明示します。

    附則

    このマニュアルは令和◯年◯月◯日より施行します。


    関連記事:マニュアルのサンプル

    会社事務入門ハラスメント対策の留意点カスハラ対策の義務化について>このページ

  • 小口現金マニュアルのサンプル

    小口現金マニュアル

    第1条
    本マニュアルは、経理規程第◯条の規定に基づいて当社における小口現金の取扱いを正確かつ円滑に行うために必要な事項を定めたものである。

    第2条
    小口現金とは、経理部長が業務上必要と認める少額経費の支払のために小口現金担当者に前渡しする現金をいう。

    第3条
    経理部長は小口現金担当者を指名する。経理課長は小口現金担当者の事務を監督する。

    第4条
    小口現金の限度額は経理部長が決定する。

    第5条
    小口現金は前条の限度額を超えて保管してはならない。やむを得ない事情により限度額を超過する必要があるときは、経理部長の事前承認が必要である。

    第6条
    小口現金は慎重に取り扱うとともに安全な方法により保管しなければならない。

    第7条
    小口現金による支払を行うときは、相手方が発行する領収証書を受領しなければならない。やむを得ない事情により正規の領収証書を受領できないときは、受領者が発行する受領書によることができるが、事後速やかに正規の領収証書と交換しなければならない。

    2 小口現金により「仮払金」の出納を行う場合は、別に定める仮払申請の手続を経なければならない。

    第8条
    小口現金担当者は、小口現金の受払を発生の都度所定の「小口現金出納帳」に記帳し、支払に関する証憑を適切に保管し、毎日一定の時間に小口現金の現在高と帳簿残高との照合しなければならない。

    2 小口現金担当者は、毎日一定の時間に小口現金出納帳と支払に関する証憑のコピーを経理課長に提出しなければならない。

    3 小口現金の現在高と帳簿残高が一致しないときは直ちに経理課長に連絡してその指示のもとに原因の究明をしなければならない。

    第9条
    小口現金担当者は、必要に応じて小口現金補充を経理課長に申請し、小口現金の補充を行うものとする。


    関連記事:ミスなく正確に!小口現金管理の基本と管理方法

    会社事務入門マニュアルのサンプル>このページ