カテゴリー: 賃金

  • 退職金に対する税金

    退職金にかかる所得税

    退職金は、税務上は退職所得といいます。退職所得とは、退職に起因して勤務先から支給される退職金や一時恩給などの所得をいいます。また、社会保険制度などにより退職に基因して支給される一時金、適格退職年金契約に基づいて受ける退職一時金なども退職所得とみなされます。

    退職所得は、原則として他の所得と分離して所得税額を計算します。退職金には退職所得控除があり、さらに2分の1適用があるので、他の所得に比べ税負担が軽くすみます。

    退職金等の支払の際に「退職所得の受給に関する申告書」を提出(通常は会社が提出を求めます)している人については、退職金等の支払者が所得税額を計算し、その退職手当等の支払の際、退職所得の金額に応じた所得税等の額が源泉徴収されるため、原則として確定申告は必要ありません。

    退職所得の受給に関する申告書を提出しなった場合は、退職金等の支払金額に対して所得税額及び復興特別所得税額が源泉徴収されますが、本人が確定申告すれば戻ります。

    計算方法

    退職所得の金額は、次のように計算します。

    (収入金額 − 退職所得控除額) × 2分の1 = 退職所得の金額

    退職金が退職所得控除額より少なければ所得税はゼロです。控除額を上回った場合も、2分の1を掛けてから税率をかけます。

    役員等勤続年数が5年以下である人が支払を受ける退職金のうち、その役員等勤続年数に対応する退職金として支払を受けるものについては、平成25年分以後は上記計算式の2分の1計算の適用はありません。

    所得税額は退職所得控除後の金額に応じて、国税庁ホームページに掲載されている所得税の税額表に記載された所得税率を掛けて求めます。

    退職所得控除額

    勤続年数に応じて、以下により計算した額を退職所得控除として退職金から控除することができます。

    勤続年数の数え方は1年未満の端数を切り上げ、1年として計算します。

    勤続年数が20年以下の場合
    40万円×勤続年数(80万円に満たないときは80万円)

    勤続年数が20年を超える場合
    800万円+70万円×(勤続年数-20年)

    退職金の支払いを受ける人が、在職中に障害者に該当することになって退職した場合は、控除額に勤続年数に関係なく100万円が加算されます。

    計算例
    例えば、40年勤続の人の場合は、800万+70万×(40−20)=2,200万となるので、退職金が2,200万円を超える場合に所得税が課税されることになります。

    退職金にかかる住民税

    退職金には、住民税もかかります。

    通常の住民税は前年の所得に対して課税されますが、退職所得にかかる住民税は、他の所得と区別して、退職した年の1月1日に住んでいた住所地の区市町村で課税されます。前年課税ではなく、現年分離課税といいます。

    住民税額は、所得税と同じ計算方法で計算した「課税退職所得金額」に一律10%を掛けて計算します。

    納付すべき住民税額を計算し、支払いの際に特別徴収して、翌月の10日までに区市町村に納入することになっています。

    復興特別税が上乗せされる

    東日本大震災からの復興施策に必要な財源を確保するために、復興特別税が、本来の税とは別に課せられることになりました。

    所得税は2013年1月1日からの25年間、税額に2.1%を上乗せ。
    住民税は2014年6月からの10年間、年1,000円上乗せする予定です。

    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識退職金について>このページ

  • 中小企業は退職金制度をどうすればよいか

    退職金とは

    退職金とは退職する従業員に支給される金銭です。一時金で支給されるのが一般的ですが、年金方式による支給もあります。

    法律で退職金を払わなければならないと決められているわけではありません。仮に退職金制度がなくても法的な問題はありません。

    ただし、就業規則等で退職金を支払う制度を定めている場合は、その退職金は労働基準法11条に定める賃金として扱われるので、制度で定めた支給額は必ず支払わなければなりません。

    また、就業規則に退職金についての定めがなくても、退職時に手当等を支払うことが慣例的に行われている場合は、労使慣行が成立していることになるので、支払義務があります。就業規則に書いていないからといって勝手にやめることはできません。

    退職金の支給理由

    法律で義務付けられていませんが、多くの会社では退職金を支給しています。

    横並び意識

    すでに多くの会社に退職金制度があることが、新たに創業される会社も退職金制度を作る動機になっています。福利厚生の一つとされているので、退職金制度が無い会社は待遇面で見劣りするという考え方です。

    生活保障の意味合い

    多くの従業員は定年退職をするときにはすでに老後にさしかかる年齢になっています。終身雇用という言葉があるように、同じ会社に長い間勤務してきた従業員に、定年後の生活を支える一時金を支給するのが会社の責務だという考え方です。

    功労金という考え方

    これまでの勤務における会社に対する貢献は、これまでに受け取った賃金の総額を上回っていると考えて、賃金で報いきれなかった分を退職時に支給するという考え方です。

    賃金の後払い

    若いうちは低めに設定された賃金で働き、退職のときに低かった分を清算するという考え方です。

    退職抑制のねらい

    長く勤務するほど退職金が増えるので、従業員に早期の退職を思いとどまらせ、長く勤務してもらえるという考え方です。特に、自己都合退職と定年退職で支給額に差をつけたり、勤続年数が一定年数を超えるまでは退職金額を低く抑えたりする金額設計はこの考え方に基づいています。

    退職金制度のいろいろ

    社内積立方式

    多くの会社が採用している退職金制度は、基本給連動で退職金を計算し、その原資を預金などで積み立てておく方式です。

    基本給連動とは、一般的には、退職時の基本給に勤続年数に応じた支給率を乗じた額を基準にして算出する方式です。

    そして、この場合は、支払にあてる原資を銀行預金などで積み立てておかなければなりません。

    原資は、今の時点で全従業員が退職したとして、全従業員に退職金規程通りの退職金を支払える額を準備するのが基本です。そうでないと、事業不振、天変地異で事業を閉鎖することになったときに支払い義務を果たせないからです。

    大きな負担ですが、賃金ですから会社の義務です。ただし、現実には積立不足の会社が多いようです。

    外部制度方式

    退職金制度を自社で運営するのは大変なので、中小企業は外部制度を利用しているところが多いようです。

    中小企業退職金共済制度

    中小企業退職金共済制度は、事業主が独立行政法人勤労者退職金共済機構が運用する制度に加入し、拠出した掛金月額と掛金納付月数に応じて政令で定める額を退職金として支給します。

    特定退職金共済

    商工会議所がアクサ生命と提携している特定退職金共済です。各地の商工会議所のホームページに掲載されています。

    企業型確定拠出年金

    国が定めた確定拠出年金法による年金制度で、会社が毎月掛金を拠出し、従業員が年金資産を運用します。会社は従業員に対して毎月の掛金額を約束しますが最終的な受給額は約束しません。定年退職を迎える60歳以降に、積み立ててきた年金資産を退職一時金、もしくは年金の形式で受け取り、受取額は運用成果によって変わります。

    確定給付企業年金

    確定給付企業年金法による年金制度で、規約型と基金型の2種類があります。規約型の設立には300人以上の加入者が必要で、信託銀行や保険会社などに掛金を拠出し、年金資産を管理・運用し、年金を給付します。基金型に人数要件はなく、企業年金基金が年金資産を管理運用します。退職時の一時金としては受け取れず、年金給付になります。

    規程を整備する

    退職金を支給する会社は、その制度の内容を就業規則に定めなければなりません。

    就業規則規程例:退職金の支給|就業規則

    就業規則規程例:退職金の支払い|就業規則

    就業規則規程例:退職金の額|就業規則

    就業規則には「退職金については退職金規程による」などと簡潔に記載して、別途、退職金規程を定めるのが一般的です。制度の組み立てによってどのように規定するかが異なります。いくつかの例を示しました。

    規程例:積立方式による退職金規程の例

    規程例:中退共制度を利用した場合の退職金規程の例

    退職金の事務手続き

    通常の給料と同様に、「通貨払い」が原則です。給与を口座振込している会社では、口座への振り込みで支払うことができます。また、退職金に限り、郵便為替も認められています。

    通常の給料と同様に、「直接払い」が原則です。特に、死亡退職のときは、就業規則等で定めた支払先に払わなければなりません。正当な受取人以外の人に支払ってしまうと、あとで問題になります。

    通常の給料と同様に、「全額払い」が原則です。貸付金の差し引きなどを安易に行ってはいけません。

    支払い日は就業規則の定めによります。法律上、通常の給与は、7日以内に払うことになっています。退職金の場合は、7日以内ということではなく就業規則に定めた日が期日になります。

    退職金には所得税と住民税が課税されます。退職金を払う前に、従業員に「退職所得の受給に関する申告(退職所得申告)」の用紙を渡し、提出を受けなければなりません。退職金に対する所得税は一般の賃金等に対する所得税よりも優遇されています。また、退職金から社会保険料を控除する必要がありません。

    関連記事:退職金に対する税金

    通常の給与の時効は3年ですが、退職金の時効は5年です。行方不明になり支払先が分からない従業員の退職金は5年間預っておかなければなりません。

    あらたに制度を設ける際の留意点

    新たに退職金制度を設けなくても、給与水準や賞与を手厚くすることで、福利厚生面で見劣りしなければ、他がやっているからといって焦って退職金制度を導入する必要はありませんが、業界で退職金制度が当たり前になっている場合や従業員から強い希望がある場合は検討の必要があると思われます。

    新たに退職金制度を設ける場合はその資金について充分に検討しなければなりません。

    また、制度設計が重要です。目標とする退職金水準にはどのくらいの資金が必要なのか、勤続年数による支給額の推移はどうか、などなど、納得性の高い制度づくりは簡単ではありません。参考書を数冊買ってきて分かるような簡単なものでもありません。商工会議所や行政の相談機関を活用するなどして時間をかけても十分理解した上でスタートすることが必要です。

    特に資金の検討は重要です。新規に設立した企業であれば、従業員の勤続年数はすべてゼロからスタートするので初期資金の問題は生じませんが、すでに一定の企業活動をしてきた企業が退職金制度をつくる場合には従業員の勤続年数があることを考慮しなけれなりません。

    例えば、10年の社歴がある会社で当初から勤務している従業員が制度設立の翌年退職したときは、1年勤続ではなく11年勤続として退職金を支給するのが一般的だからです。資金の準備が必要です。また、社外の退職金制度に加入した場合には、積立していない期間をカバーする割増積立が必要になります。基本的には、すべての従業員が一斉に退職した場合でも間違いなく支給できる資金準備が必要だとされています。

    退職金制度は一度導入すると長く運営しなければなりません。変更や廃止は簡単ではありません。制度の内容をよく理解したうえで、自社に合った退職金制度を導入することが大切です。助成金目当てに安易に導入して後悔することもあります。十分に検討してから行動に移りましょう。

    これからの退職金制度

    退職金制度は、いったん入社した従業員は定年まで継続して勤務することを前提としています。また、長く勤務するほど価値があるという考え方に基づいています。

    近年は、経済が右肩上がりに成長する時代ではありません。また、昔は存在しなかった職種や勤務形態が現れ、転職に抵抗がなくなり勤続年数も短くなる傾向があります。入社から定年まで同じ会社で勤め上げるサラリーマンはむしろ少数派であろうと思われるほど大きく変化している時代です。その変化のなかで退職金制度も変化していかなければならないはずです。

    なお、退職金は賃金の一つですから現在の制度をやめたり額を減額するのは簡単ではありません。

    関連記事:就業規則改定による不利益変更

    しかし、長期勤務を前提としない従業員や、途中入社で残りを全部勤務したとしても多くの退職金を望めない従業員は、従来の退職金制度には魅力を感じません。

    また、経営環境の変化などで支払資金が不足している会社は、経営安定の観点からも早期の見直しが必要です。

    自社の従業員構成や従業員の本音、会社の都合などを考慮して、そのままで行けるのならば問題ありませんが、ひずみを感じるようでしたら、どのような退職金制度がふさわしいか議論を始める必要があるでしょう。

    懲戒処分と退職金

    懲戒解雇の従業員に、特に金銭的に会社に損害を与えて退職する従業員に規定通りに退職金を支払うのは納得できないという声を聞くことがあります。

    退職金の不支給または減額を実施するには、まず、就業規則に退職金を不支給または減額することがある旨の規定が必要です。

    さらに、合理的で社会的にも相当な理由が必要です。合理的で社会的にも相当な理由があるかどうかは、必要性と労働者の被る不利益の双方を勘案して判断されます。判例では、「労働者の勤続の功を抹消してしまうほどの重大な不信行為があることが必要」だとしています。

    要するに、相当に高いハードルです。また、外部に委託している場合、さらに減額や不支給が難しくなることがあります。また、外部委託の場合は、減額や不支給が決まっても、その金額が会社に入るのではなく、退職原資として引き続いて積み立てられることになります。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識>このページ

  • 賃金台帳の記載事項と管理上の注意点

    賃金台帳とは

    賃金台帳は、労働基準法により、事業場に備え付けることが義務づけられている書類です。

    その記載事項については、労働基準法に具体的に規定されています。

    労働基準法 第108条
    使用者は、各事業場ごとに「賃金台帳」を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。

    記入しなければならない事項

    「その他厚生労働省令=労働基準法施行規則のことです=で定める事項」とは、次の事項です。

    □ 氏名
    □ 性別
    □ 賃金計算期間
    □ 労働日数
    □ 労働時間数
    □ 時間外勤務・休日勤務・深夜勤務の時間
    □ 基本給・手当その他賃金の種類ごとにその金額
    □ 賃金の一部を控除した場合にはその額

    以上の内容が網羅されていればどのような書式でもかまいません。

    一般的には給与計算ソフトから出力される賃金台帳を保管します。

    ただし、1項目でも入力もれがあると適正な賃金台帳にならないので注意が必要です。

    労働日数や労働時間数が漏れていることが多いのでチェックしましょう。

    作成対象者

    賃金台帳は、労働者ごとに作成することになっています。

    賃金台帳は、正社員、契約社員、パート、アルバイト、などの雇用形態に関わらず、全従業員分を作成しなければなりません。

    日雇労働者については、労働者名簿の作成は不要ですが、賃金台帳の作成は必要です。

    管理監督者については、時間管理の対象外なのでで、時間外労働や休日労働の時間数は、深夜労働の時間数を除いて記載不要です。しかし、労働基準法に定めがある管理監督者と会社が任命する管理職は同じではありません。管理監督者の範囲について労働基準監督官から指摘されることが多いので注意が必要です。

    関連記事:管理監督者とは

    役員は労働者ではないので、賃金台帳の作成は不要です。ただし、取締役部長などの使用人兼務役員については、従業員部分の賃金について作成が必要です。

    作成と保管

    賃金台帳は、各事業場で作成することになっています。

    賃金台帳は、各事業場で保管する必要があります。労働基準監督署の調査があったときに、本社に置いてあります、は通用しません。作成を本社でするのは構いませんが、各事業場に配布して保管させましょう。

    なお、必ずしも紙で保管する必要はなく、データによる保管も認められていますが、求められたときには、すぐに表示、印刷できることが条件となっています。

    賃金台帳には5年間(当分の間3年)の保存義務がありますが、その起算日は「最後の記入をした日」となっています。通常は最後の記入は退職のときですから、退職から起算します。


    関連記事:給与計算のやり方

    会社事務入門法定帳簿作成の注意点>このページ

  • 給与支払報告書

    給与支払報告書とは

    給与支払報告書は、給与所得者にとっては市県民税の申告に代わるものです。この報告書により住民税の課税額が決まります。

    提出先は給与の支払を受けた人が1月1日に住民登録している市区町村です。給与の支払者は1月31日までに提出しなければいけません。

    作成対象者

    前年中に給与等の支払いを受けたすべての受給者(事業専従者、臨時社員、パート、アルバイト等も含む)について作成します。中途退職者についても作成します。

    用紙

    用紙は市区町村または税務署にあります。2年目からは送付されてきます。給与ソフトで作成する場合は市区町村が定めた義務者指定番号を入力する必要があります。

    年収500万以上の人や役員については、税務署に支払調書と共に提出する必要があるので、4枚複写の用紙を用いて作成します。それ以外の人については3枚複写の用紙で作成します。

    上の2枚の給与支払報告書を市町村に、残りの1枚が源泉徴収票となり受給者に交付します。

    事業所の控えはないので、コピーしておいた方がよいでしょう。

    記入方法

    具体的な書き方については、税務署から送付される年末調整関係の資料の中に、「給与支払報告書の書き方」等の参考資料が入っています。また、市区町村から送られてくる場合もあります。

    給与所得者異動届出書

    給与所得者に、退職、転勤、休職、死亡等による異動があった場合に、異動があった月の翌月の10日までに給与所得者異動届出書を市区町村に提出します。


    会社事務入門給与計算のやり方>このページ

  • 永年勤続表彰などの記念品は一定の要件を満たせば非課税です

    会社が従業員に創業記念品や永年勤続表彰記念品を支給する場合、次の条件をすべて満たせば給与として課税されません(国税庁タックスアンサーNo.2591)。

    創業記念などの記念品

    • 社会通念上、記念品としてふさわしいものであること
    • 記念品の処分見込価額が1万円以下であること
    • おおむね5年以上の間隔で支給するものであること

    上記のいずれかを満たさない場合は、支給した記念品の通常の販売価額が給与として課税されます。

    永年勤続記念品・旅行等の招待費用

    • 勤続年数や地位などに照らして、社会通念上相当と認められる金額であること
    • 勤続年数がおおむね10年以上である者を対象とすること
    • 同一人を2回以上表彰する場合は、おおむね5年以上の間隔を空けること

    要件を満たさない場合は、支給した記念品の通常の販売価額や、旅行・劇場等への招待費用が給与として課税されます。

    現金で支給する場合

    記念品や旅行等の招待に代えて現金を支給する場合、その全額が給与として課税されます。

    補足
    創業記念品の1万円上限は、税務上の取扱いとして定められていますが、実務上は厳しめの基準と感じられる場合があります。旅行や劇場招待は現状ではあまり行われず、税務上は賞与と同様の扱いになることが多いです。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識現物給与について>このページ

  • 社員研修の費用負担と課税関係

    会社が従業員の研修費用を負担する場合、その研修が業務遂行上直接必要であれば給与として課税されません。逆に、業務との関連性が薄いと判断されると、給与課税の対象となります。

    外部研修への参加費用

    従業員の職務に直接必要な技術や知識を習得するための社外研修であり、費用が適正な額であれば、非課税として扱えます。

    実際に研修が行われていれば問題になることは少ないですが、実態が不明確な場合は課税の可能性があります。

    証拠として残すべき資料:研修案内状、当日配布資料、参加者の報告書などを保管し、税務調査時に提示できるようにしておきましょう。

    2. 自己啓発研修の参加費用

    自己啓発型の研修でも、以下の条件をすべて満たせば非課税となります。

    1. 研修が業務遂行上必要、または職務の遂行と密接に関連していること
    2. 受講および費用負担において、従業員間に差を設けていないこと
    3. 費用が当該研修の受講に要する適正な金額であること

    自己啓発研修は「密接に関連」で判断されるため、外部研修よりも認められる範囲が広めですが、②③の条件を満たすことが重要です。

    3. 宿泊を伴う研修

    費用の中に「直接必要な部分」と「直接必要でない部分」が混在する場合、必要でない部分は給与課税されます。

    • 必要な部分の例:講義、実習、業務関連の討議
    • 必要でない部分の例:夜の懇親会(軽食程度は宿泊費の一部として可)、翌日のゴルフ、観光名所見学

    必要・不要の区分が難しい場合は、時間比率で按分する方法もあります。

    名目が研修でも経費処理が認められない例

    1. 主に観光目的の同業者団体旅行
    2. 旅行業者主催の観光旅行
    3. 観光渡航許可を得て行う海外研修旅行

    4. 奨学金・資格取得費用

    会社が従業員に奨学金を支給したり、学費を負担して通学させる場合、原則は給与課税されます。
    ただし、次のすべてを満たせば非課税となります。

    1. 習得する知識・技術が会社の業務遂行上必要であること
    2. その知識・技術が職務に直接必要であること
    3. 費用が適正であること

    資格取得費用も同様で、業務に直接必要な資格であれば非課税、そうでない資格(たとえ会社に間接的メリットがあっても)は課税対象です。


    会社事務入門賃金・給与・報酬の基礎知識現物給与について>このページ