Last Updated on 2023年2月26日 by 勝
固定残業手当とは
毎月決まった金額を見込みの残業手当として、実際の残業の有無にかかわらず支給する制度のことです。
固定残業手当は、定額残業手当、固定残業代、定額残業代ともいいます。
運営上の注意点
固定残業代制度は、労働時間管理をして不足分を残業手当として別途支払う運用をすれば適法だと言われています。
労働時間管理をする
固定残業代制度の有無に関わらず、始業時間や終業時間の把握等の時間管理はきちんと行う必要があります。
固定残業手当制度の場合でも、時間外労働時間を把握しないと労働基準法違反になります。
時間超過分に残業代を支給する
把握した実際の労働時間に基づいて、通常の手法で、残業代を計算しなければなりません。
その結果、残業が想定より多かったときは不足分を支払う必要があります。
不足分はその月毎に支給しなければなりません。月をまたがって調整することはできません。
残業が想定より少なかったときは多すぎた分の返戻を求めることはできません。
就業規則等に定める
固定残業代制度は、賃金の支払い方に関する定めなので、就業規則等への規定が必要です。
就業規則等では、定額残業代を支給する旨と、定額残業代の額を明確にしなければなりません。
また、支給する定額残業代が残業何時間分に相当するかを示さなければなりません。この時間数は通常賃金の額によって異なるので、個々の従業員に明示しなければなりません。
また、労働条件通知書等で、金額と時間を明確にする必要があります。例えば「月給30万円(45時間分の固定残業代5万円を含む)」と記載する必要があります。
なお、新規に実施する場合は就業規則の不利益変更の問題に注意しなければなりません。
従業員の同意なく固定残業代の原資として基本給の減額を実施した会社に対して、その基本給の減額が単なる賃金減額であるとして、減額した分の支払いを命じた裁判例があります。
関連記事:就業規則改定による不利益変更
固定残業手当の可否
固定残業手当の制度は、労働時間管理を省略できない点において給与計算上のメリットはありません。
残業代込みで支給額を提示することで、給料の高い会社に思わせる目的に使われることもありましたが、カラクリが知れ渡ってしまったので今となっては採用面での効果は望めません。
また、固定残業制度を利用して、いくら残業をしても追加分を支払わないのであれば、労働基準法違反を常態化するものですからなんの益もありません。
ということで、導入するメリットはあまりないと思われますが、上述の注意点を考慮すれば導入することができます。
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