カテゴリー: 社員研修

  • 社員研修には社内講師を養成しよう

    社内研修の講師育成は、企業の持続的な成長と人材育成において非常に重要です。人事課に所属する専任講師を育てる場合と、各部門から出てもらう兼務講師を育てる場合では、アプローチや育成のポイントが異なります。それぞれについて詳しく解説します。

    社内研修講師の育成の基本

    まず、共通して講師に求められる能力と、育成の基本的な考え方について述べます。

    講師に求められる能力

    専門知識・スキル:担当する研修テーマに関する深い知識と実践的なスキル。

    伝える力(コミュニケーション能力):

    論理的思考力:情報を体系立てて整理し、わかりやすく説明する能力。

    表現力:声のトーン、表情、ジェスチャーなどを効果的に使い、受講者を引き込む能力。

    質問力・傾聴力:受講者の疑問を引き出し、理解度を確認し、適切にフィードバックする能力。

    場をコントロールする力(ファシリテーション能力):

    受講者の参加を促し、議論を活性化させる能力。

    時間管理、トラブル対応など、スムーズな研修運営を行う能力。

    受講者へのエンゲージメント力:

    受講者の興味を引きつけ、学習意欲を高める能力。

    受講者の成長を支援する熱意と姿勢。

    育成の基本的な考え方

    体系的な育成プログラム:OJT(On-the-Job Training)だけでなく、Off-JT(Off-the-Job Training)も組み合わせた体系的なプログラムが必要です。

    段階的アプローチ:最初から完璧を求めず、小さな成功体験を積み重ねながら徐々にステップアップさせていきます。

    フィードバックと実践の繰り返し:研修実施後の丁寧なフィードバックと、それを踏まえた実践の機会を確保することが不可欠です。

    専任講師を養成する場合

    人事課の講師は、企業全体の人材育成戦略に基づいた研修の企画・実施を担う、いわば「プロの講師」としての役割が期待されます。育成のポイントは次のとおりです。

    講師としての基礎力向上(インプット)

    ロジカルシンキング、プレゼンテーションスキル:自身の思考を整理し、的確に伝えるための基礎スキル研修。

    ファシリテーションスキル:グループワークや議論を効果的に導くためのスキル研修。

    教材作成スキル:魅力的なスライドや演習問題を作成するためのスキル研修(デザイン、構成、コピーライティングなど)。

    インストラクショナルデザイン:学習効果を最大化するための研修設計の考え方(目標設定、コンテンツ構成、評価方法など)。

    成人への教育に関する心理学:成人の学習特性を理解し、飽きさせずに学びを深めるための知識。

    外部研修への参加:講師育成を専門とする外部機関の研修に積極的に参加させ、最新の知見や多様な手法を学ぶ機会を提供します。

    実践と経験の積み重ね(アウトプット)

    OJT(共同登壇):まずは経験豊富な講師のアシスタントとして参加し、運営の流れや講師の振る舞いを間近で学びます。その後、一部のセッションを担当させ、徐々に担当範囲を広げていきます。

    模擬研修(ドライラン):本番前に、人事課内や少数の関係者を相手に研修を実践し、フィードバックを得ます。

    本番登壇とフィードバック:実際に研修に登壇させ、終了後には受講者アンケートや上長・育成担当者からの具体的なフィードバックを丁寧に行います。特に「良かった点」と「改善点(具体的な行動レベルで)」を明確に伝えます。

    研修動画の活用:自身の研修風景を動画で撮影し、客観的に自己分析する機会を提供します。

    専門分野の深化

    人事課講師は、会社の理念、人事制度、コンプライアンス、新入社員研修など、企業全体のベースとなる研修を担当することが多いため、これらの分野に関する専門知識を深く掘り下げることが必要です。

    法改正や最新動向に関する学習機会も必要です。

    マインドセットの醸成

    「人材育成を通じて会社の成長に貢献する」という強い使命感と情熱を持たせることが重要です。

    常に学び続ける姿勢、受講者の成長を喜ぶ気持ちを育みます。

    兼務講師を養成する場合

    社内の各部門から兼務の形でカリキュラムの一部を担当してもらう講師に、講師としての力をつけさせる場合について解説します。

    各部門の兼務講師は、自身の業務知識や経験を活かし、より実践的で専門性の高い内容を伝える役割が期待されます。彼らは「普段の業務遂行者+講師」であるため、育成アプローチはより効率的かつ実務に即したものにする必要があります。育成のポイントは次のとおりです。

    講師としての最低限の基礎スキル習得

    ショートプレゼンテーション研修:短時間で効果的に情報を伝えるための基礎スキルに特化します。具体的な構成(結論から話す、具体例、要点まとめなど)を教えます。

    質疑応答対応:受講者からの質問に的確に答えるための準備と心構え、知らない場合の対処法などを指導します。

    スライド作成の基本:情報を詰め込みすぎず、視覚的に分かりやすいスライド作成のポイントを伝えます。

    時間管理の重要性:持ち時間を厳守し、効率的に研修を進めるための意識付けと具体的なコツを伝えます。

    業務知識と講師スキルの橋渡し

    自身の業務経験を「研修コンテンツ」として再構築するサポート:

    講師候補者に「この知識を誰に、何を、どう伝えたいか」を明確にするワークショップで学習してもらいます。

    自身の成功事例や失敗談を、受講者が「自分ごと」として捉えられるように話す工夫を指導します。

    専門用語を避け、平易な言葉で説明する練習してもらいます。

    実務的なノウハウ共有会:経験豊富な兼務講師から、自身の登壇経験や工夫点を共有してもらう場を設けます。

    実践機会と具体的なフィードバック

    「お試し」登壇の機会:まずは短い時間(15分~30分程度)で、特定のテーマについて登壇する機会を設けます。

    ロールプレイング:実際に研修を想定したロールプレイングを行い、講師役、受講者役に分かれて実践練習をします。

    個別フィードバック:人事課の育成担当者が、個別に研修の様子を観察し、具体的な改善点を丁寧にフィードバックします。改善点だけでなく、良かった点も具体的に伝えることでモチベーションを維持します。

    受講者アンケートの活用:受講者からの具体的なコメントや評価を講師本人にフィードバックし、次回の改善に繋げます。

    OJT(共同登壇):最初はアシスタントや一部のパートを担当させ、徐々に慣れさせます。

    動機付けと負荷管理

    講師としての役割の重要性を伝える: 自身の知識や経験が、後進の育成や組織力向上に貢献することを強調し、やりがいを持たせます。

    業務とのバランスを考慮: 兼務であるため、本業に支障が出ないよう、講師としての準備時間や登壇頻度を無理のない範囲で調整します。

    適切な評価: 講師としての貢献を人事評価に反映させるなど、モチベーションを高める仕組みも検討します。

    まとめ

    人事課に所属する専門講師は、より高度な教育スキル(インストラクショナルデザイン、ファシリテーション、心理学など)を習得し、研修全体の設計・実施を担うプロフェッショナルとしての育成を目指します。

    各部門の兼務講師は、自身の専門知識を「分かりやすく伝える」ことに特化させ、効率的かつ実践的なスキルアップを支援します。個別のフィードバックと実践の機会を重視し、本業とのバランスを考慮することが重要です。

    どちらの場合も、講師自身の「教えたい」「貢献したい」という意欲を引き出し、継続的にサポートしていく体制が成功の鍵となります。


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  • 社員研修をやったら必ず研修効果を測定しよう

    社員研修は効果を出さなければならない

    社員研修を実施すると、「金と時間をかけてもたいした効果はない、研修は無駄遣いだ」と言う人が必ずといっていいほどでてくるものです。

    それに対し研修を主催している側は「教育はそもそも速効性のものではない、時間をかけて効いてくる」などと反発したりします。

    会社の金を使いさらに人材を拘束して、効果があるんだかないんだかわからないままで、あいまいにしておくのは、実は大変な問題です。

    社員研修は長期的な効果だけでなく、短期的な効果もねらわなければなりません。したがって、研修効果について検討し、その結果どうしても効果が見いだせないのであれば、一旦は中止して時間をかけて見直しをするというのも一つの選択肢です。

    研修の効果測定は受講者アンケートが基本

    研修効果の測定は、受講者へのアンケートや感想文、受講者を送りだした職場の上司のコメント、講師のコメントなどを収集し分析することで行います。

    こうした作業は、研修を実施した都度、必ず行うようにするべきです。

    受講者アンケートの例

    アンケート

    受講日:  年  月  日

    よりよい研修を実施していくために、アンケートにご協力をお願いします。 今回、受講された研修について意見や感想をお聞かせください。該当する数字に〇をつけてください。理由等の記載欄はできるだけご記入ください。

    あなたの属性をご記入ください
    年齢(10代20代 ・30代40代・50代以上)

    今回の研修全般について

    (1)今回の研修は全体としてどうでしたか?
    ① 大変有意義だった ② 有意義だった ③ まあまあだった ④ もの足りない ⑤ 非常に不満足

    理由をご記入ください。

    (2)研修内容は今後の仕事に活かせると感じましたか
    ① 大いに活かせると感じた ② いくらか活かせると感じた ③ ほとんど活かせないと思う

    各研修科目別にお聞きします。

    研修科目(       )について

    大変よい5 やや良い4 普通3 よくない2 全くよくない1

    (1)講義は今後に役立つ内容でしたか 5 4 3 2 1

    (2)講師の説明は分かりやすかったですか 5 4 3 2 1

    (3)講義資料は適切でしたか 5 4 3 2 1

    (4)この科目の時間数は適切でしたか 5 4 3 2 1

    以下は、今回の研修に限らず社員研修全般についてのアンケートです。

    (1)必要とする研修が実施されていると感じますか 5 4 3 2 1

    (2)研修の時期は適切だと思いますか 5 4 3 2 1

    (3)今後、受けてみたい研修があればご記入ください

    ご協力ありがとうございました。


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  • 社員研修の社内ニーズを把握する

    経営者と参加者それぞれのニーズ

    まず研修の主催者である経営者のニーズを把握する必要があります。担当者の思い込みではいけません。

    社長や幹部に直接取材して、社員に対しどのような知識や技術や態度を求めているかを具体的に把握する必要があります。

    次に研修参加者のニーズですが、一般的には社員にとって研修というものは億劫なものです。まして自分にまったく関係のない事柄や、すでに承知している内容の研修では、反感が生まれることすらあります。

    参加者に喜ばれるとまではいかなくても、少なくとも納得してもらえる研修にしなければなりません。

    そのためには、どんなテーマだったら勉強したいと思っているか、誰の話だったら聞いてみたいと思っているか、どのような形式で実施すればよいか、などのニーズを把握する必要があります。

    ニーズ調査は、参加者へのアンケートとは別に、適宜サンプリングをして、面談方式で実施しましょう。

    アンケートのサンプル(課長研修)

    課長クラスを対象とした社員の現状スキルと課題を洗い出すためのアンケート案です。貴社の状況に合わせて適宜修正してご活用ください。

    社内研修ニーズ調査アンケート

    このアンケートは、当社の社員研修方針および年間計画策定にあたり、課長である皆様の現状スキルと、今後の研修で強化すべき課題を把握することを目的としています。ご多忙のところ恐縮ですが、ご協力をお願いいたします。

    ご回答いただいた内容は、個人の評価に影響することはなく、今後の研修計画の検討のみに利用させていただきます。

    回答期限: 2025年〇月〇日(〇)

    1. 基本情報

    所属部署: [自由記述]

    役職: 課長

    課長としての経験年数: [選択式:1年未満 / 1年以上3年未満 / 3年以上5年未満 / 5年以上10年未満 / 10年以上]

    2. 現在の業務におけるスキル認識

    以下の項目について、ご自身の現在のスキルレベルを5段階で評価してください。

    評価基準:

    5: 非常に高い (他の模範となるレベルで、常に期待を上回る成果を出している)

    4: 高い (業務遂行に十分なレベルで、期待される成果を出している)

    3: 標準 (業務遂行に問題はないが、さらに向上できる点がある)

    2: やや低い (業務遂行に一部課題があり、改善が必要)

    1: 低い (業務遂行に大きな課題があり、早急な改善が必要)

    スキル項目54321
    A. マネジメントスキル
    1. 目標設定・進捗管理能力
    2. 部下育成・指導能力(コーチング、フィードバック含む)
    3. チームビルディング・モチベーション管理能力
    4. 業務の優先順位付け・効率化能力
    5. リスクマネジメント・危機管理能力
    B. リーダーシップスキル
    6. ビジョン・目標を明確に示し、部下を牽引する力
    7. 変化に対応し、新たな取り組みを推進する力
    8. 多様な意見をまとめ、意思決定する力
    9. 部下や他部署との信頼関係構築力
    C. コミュニケーションスキル
    10. 円滑な対人コミュニケーション能力(傾聴、質問、説明)
    11. プレゼンテーション・交渉能力
    12. 部下や他部署との報連相の質
    D. 問題解決・思考スキル
    13. 論理的思考力、課題発見・分析能力
    14. 問題解決のための企画・立案能力
    15. クリティカルシンキング(批判的思考力)
    E. 専門スキル・知識
    16. ご自身の専門分野における知識・スキル
    17. IT・デジタルツール活用能力(DX推進含む)
    18. コンプライアンス・情報セキュリティに関する知識

    3. 今後の研修で強化したいスキル・知識

    今後の研修で特に強化したい、または習得したいスキルや知識があれば、上記項目以外でも自由にご記入ください。(複数回答可)

    [自由記述]

    [自由記述]

    [自由記述]

    4. 業務上の課題と研修への期待

    現在、課長として業務を遂行する上で、最も課題だと感じていることは何ですか?具体的にご記入ください。[自由記述]

    上記の課題を解決するために、どのような研修が有効だとお考えですか?具体的な内容や形式(例:集合研修、eラーニング、外部セミナー、OJTなど)があればご記入ください。[自由記述]

    その他、社員研修全体に対するご意見やご要望があればご記入ください。[自由記述]

    ご協力ありがとうございました。

    ニーズをふまえた研修計画

    出された意見を整理して、研修計画作りの要点(5WIHによる要点)にあてはめて、ニーズを反映したものになっているか点検しましょう。

    WHEN (いつ) 実施日の検討 – 仕事の閑忙を考慮
    WHBRE (どこで) 会場の検討 – 研修に集中できるように
    WHO (だれが) 講師の検討 – 内部か外部か
    WHAT  (なにを) テーマの検討 – 何を学んでもらうか
    WHY  (なぜ) 研修ニーズの検討 – 会社の目的に沿うか
    HOW (どのようにして〉 教育方法の検討 – 退屈しない配慮

    ニーズを聞いて聞きっぱなしであればそのうち意見がでてこなくなります。各層のニーズはどのようなものであったか、その結果をどのように反映させたかを整理して、協力してくれた方々にフィードバックしましょう。


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  • 自社の社員研修の体系を作る

    教育の目標を決める

    社員教育が大切だとよく言われますが、教育などに手間やお金をかけなくても、スムーズに会社が動いているのであれば、無理に社員教育のことを考えることはありません。本業をどうするかに意識を集中すればよいのです。

    社員研修を実施しなければならないと考えたことは、会社にいろいろと問題が発生していることの現れだと思われます。

    したがって、社員研修が必要だと考えたときは、講師を会社に呼ぼう、外部の研修に派遣しようと動く前に、一呼吸置いて、会社の問題点を整理してみることから始めなければなりません。

    そして抽出された問題点を前に、ひとつひとつについて原因は何かということを考え、思い当たった問題点を書きだすのです。

    このような作業をしてみると、今抱えている問題点の中には社員研修を実施する以前の問題が多いことに気付くと思います。

    例えば、遅刻が多い職場であることが問題だとします。このようなことは、外から講師を呼んで話してもらってなんとかなる問題ではありません。遅刻をする従業員と管理職が対話を通して指導することが必要です。

    また、来客に対して挨拶もしない社員がいるとします。この改善も社員研修に期待しがちですが、実は、上司が注意することでほとんどが改善します。

    多くのケースでは、挨拶しない従業員よりも、むしろ、指導しない上司のほうに問題があります。

    今起きている問題を検討してみると、中小企業の場合は往々にして現場よりも幹部層にその原因があることが多いものです。

    「よそがやっているから」とか「もうそろそろ自分の会社も社員研修をやるような規模ではないか」という気持ちでやってもあまり効果は期待できません。

    つまり、「会社が良くなるために当社の従業員にはこうなってもらいたい」というはっきりした到達目標を持つ必要があるのです。

    教育計画の立案

    こうして作成した社員研修の到達目標は、そのまま、わが社の社員教育方針になります。

    次に、その到達目標を、どの層に対して、いつまでに達成したいかを考えます。これが教育計画です。

    教育体系を作成する

    教育方針が決まり、教育計画を策定し、最初の研修を計画した時点で、それらの内容を教育体系として整理をしましょう。

    教育は、短期間で成果が上がるものではなく、継続して積み上げていく必要があります。したがって、会社の決意、やる気が社員に明確に伝わる必要があります。そのために、すこし手間がかかりますが、教育体系を作成し、それを社内に周知する必要があります。

    教育体系をつくることで、社員教育を効率よく実施することができるようになります。

    教育体系の内容

    教育体系の一例を示します。

    1 当社の経営理念

    2 当社の教育方針

    3 当社の研修の種類

    4 年間実施計画

    対 象
    研修名称
    時期
    実施形態
    講師
    経営者経営管理研修年1回外部派遣外部セミナー
    部長部長研修年1回6月集合研修外部講師招聘
    課長課長研修年1回7月集合研修外部講師招聘
    係長新任係長研修係長就任時外部派遣外部セミナー
    一般社員営業担当者研修年1回8月集合研修外部講師招聘
    新入社員新入社員研修入社時外部派遣商工会議所

    教育体系を作成したら、今年度のテーマの決定、日程の決定、講師の選定を進めます。


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