Last Updated on 2023年9月27日 by 勝
法律の定義
労働基準法
労働基準法は「労働者」を次のように定義しています。
労働基準法第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
「使用されていること」「賃金を支払われる」ことが労働者の要件です。
使用されるとは、労働者が使用者の指揮命令に服して労働することと解されています。
ただし、事業又は事務所に使用されて賃金を支払われていても、同居の親族のみを使用する事業と、家事使用人には労働基準法を適用されないと定めています。
賃金とは、名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が支払うすべてのものを言います(労働基準法第11条)。したがって、ボランティアなど無償で労働を提供する者は労働者に該当しません。
労働基準法第116条
② この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。
同居の親族と家事使用人については次のページで解説しています。
関連記事:同居の親族、家事使用人の扱い
労働安全衛生法
労働安全衛生法第2条
2 労働者 労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。
労働基準法を引用して規定しています。労働基準法と同様ということです。
労働契約法
労働契約法第二条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。
労働契約法の定義は、少し表現が違いますが、労働基準法と同じだとされています。
労働組合法
労働組合法第3条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。
労働組合法の定義は、労働基準法及び労働契約法上の労働者の範囲をやや広げた概念だとされています。
労働基準法上の労働者にはあたらないとされているプロ野球選手や家内労働者等も労働組合法では労働者にあたります。
また、「賃金を支払われる」という文言が無いので、退職した失業者であっても労働者に含まれます。
労働者かどうかの争い
労働者の定義にあてはまれば、使用者は、その労働者について使用者としての責任があります。
例えば、労働災害に際しては、使用者に補償義務があり、労災保険からの給付を受けることができます。これが、労働者ではなく単なる取引先だということであれば、労働基準法の補償義務はありません。
通常、会社等に雇用されて働いている従業員は、ほぼ労働者で間違いありませんが、労働者の定義にあてはまるかどうか微妙な者もいて、争いになることがあります。
「使用されていること」という条件に照らせば経営者は労働者ではありません。したがって、労災保険等の対象になりません。しかし、取締役と従業員を兼務している者もいます。
また、下請けや外注先の身分で会社等に出勤して働いている場合はその会社から直接賃金を支払われていないのですが、「使用されている」実態があるので微妙な存在になります。他にも、特殊な職種の者などで判断が難しい場合があります。
争いになった具体例をいくつか紹介します。
自己所有のトラックを、持ち込んで製品等の輸送に従事していた運転手が、災害を被ったことにつき労働者災害補償保険法上の労働者であるとして労災保険給付を請求した例
医師国家試験に合格し、大学附属病院において臨床研修を受けていた研修医が、最低賃金額と受給金額の差額及びこれに対する遅延損害金の支払いを求めた例
作業場を持たずに1人で工務店の大工仕事に従事していた大工が労災保険給付を請求した例
NHKの受信料集金等受託者がその委託契約を解除されたところ、委託契約は実質的に労働契約であると主張し、労働者たる地位の確認および賃金支払を求めた例
民間放送会社において、自由出演契約に基づく放送管弦楽団員が、労働組合法上の労働者に当たると主張した例
住宅設備機器の修理補修等を業とする会社と業務委託契約を締結してその修理補修等の業務に従事していた受託者が上記会社との関係において労働組合法上の労働者に当たる主張した例
判決の紹介は省略します。一概には言えませんが、契約書の記載事項などではなく、実態が問題になります。例えば、契約書に外注下請けと書いてあっても、実質的には雇用に等しいと主張されることがあり、それが認められる場合があるということです。
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