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周知について

Last Updated on 2024年11月4日 by

周知とは

労働基準法でいう「周知」とは、労働者に就業規則などの内容を知らせるともに、労働者がいつでも就業規則などの内容を確認できるような状態にすることを意味します。

これは、労働者が自分の働く条件を正しく理解し、労働基準法で定められた権利を行使するためには、法令や就業規則等の内容を知らなければならないという考えに基づいています。

労働基準法に基づく周知

労働基準法に周知に関する規定があります。

労働基準法第106条
使用者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、(中略)協定並びに(中略)決議を、常時各作業場の見やすい場所へ掲示し、又は備え付けること、書面を交付することその他の厚生労働省令で定める方法によつて、労働者に周知させなければならない。
2 使用者は、この法律及びこの法律に基いて発する命令のうち、寄宿舎に関する規定及び寄宿舎規則を、寄宿舎の見易い場所に掲示し、又は備え付ける等の方法によつて、寄宿舎に寄宿する労働者に周知させなければならない。

周知する事項は、「この法律及びこれに基づく命令の要旨、就業規則、(中略)協定並びに(中略)決議」となっています。就業規則だけではないことに留意してください。

労働基準法とこれに基づく命令の要旨

周知するのは就業規則だけだと考えている人もいます。もちろん就業規則の周知は大事ですが、法106条には最初に法律等の周知義務を掲げています。

法令は政府が周知するものだと思うかもしれませんが、労働基準法等については事業者にも周知義務が課せられているのです。

ここでいう、労働基準法に基づいて発する命令とは、労働基準法施行規則、年少者労働基準規則、女性労働基準規則、事業附属寄宿舎規定、建設業附属寄宿舎規定等のことです。これらの法令の要旨を周知させる必要があります。

労働安全衛生法にも、労働基準法と同様に、法律及びこれに基づく命令の要旨を周知させる義務を定めています。

要旨というのは、理解しやすいように重要な部分を抜き書きして整理したもののことですが、会社の担当者が自ら要旨を作成するのはあまり効率的とはいえません。市販されている労働基準法の解説書を購入して備え置くか、労働局のホームページ等に掲載されている「労働基準法のあらまし」等のパンフををダウンロードしてパソコン等で閲覧できるようにしておくとよいでしょう。

就業規則の周知

就業規則は労働基準監督署に提出しておしまいではありません。

提出した就業規則を従業員に周知するという大事な手続きがあります。就業規則を届出したとしても周知していなければ効力が発生しないとされています。

なお、労働基準法等の法令は要旨を周知すれば足りますが、就業規則、次に説明する労使協定並びに労使委員会の決議は全文を周知しなければなりません。

労使協定と労使委員会決議の周知

協定並びに決議とは、労使協定と労使委員会の決議のことです。労働基準法に規定があるすべての労使協定は就業規則と同様に周知が必要です。就業規則は周知しているが36協定の周知をしていないということがないように注意しましょう。

関連記事:労使協定とはなにか

また、企画業務裁量労働制に係る労使委員会の決議などにも周知義務があります。

労働基準法以外の周知義務

育児介護休業法21条による周知

妊娠・出産の申し出をした労働者に対し、育児休業・出生時育児休業に関する制度などについて、個別に周知・意向確認をしなければなりません。

関連記事:妊娠出産等の申出に対して制度周知や意向確認をするときの注意点

育児介護休業法21条の2による周知

21条で定めるもののほかに、あらかじめ育児休業及び介護休業中の待遇や、休業後の労働条件などを周知しなければなりません。

関連記事:育児休業等に関する定めを周知しなければならない

最低賃金法による周知

最低賃金の適用を受ける労働者の範囲、最低賃金額、参入しない賃金及び効力発生日を常時作業場の見えやすい場所に掲示するなどの方法により周知する必要があります。最低賃金額は毎年変わるので情報が古くならないように注意しなければなりません。

労働安全衛生法による周知

労働安全衛生法第101条に労働基準法と同様の周知義務が定められています。

第101条 事業者は、この法律及びこれに基づく命令の要旨を常時各作業場の見やすい場所に掲示し、 又は備え付けることその他の厚生労働省令で定める方法により、労働者に周知させなければならない。

労働安全衛生規則による周知

負傷者の手当に必要な救急用具及び材料を備え、場所及び使用方法を周知させなければなりません。

寄宿労働者に対する周知

寄宿労働者に対しては、労働基準法及び労働基準法に基づく命令のうち寄宿舎に関する規定、寄宿舎規則を周知しなければなりません。

周知の方法

次のいずれかの方法によって周知します。

1.職場の分かりやすく取り出しやすいところに労働基準法等の入門書(または労働関係法令集)、就業規則(全文及び関連規程、協定等を含む)のファイルを備え付けておく
2.法令の要旨、就業規則等(全文及び関連規程、協定等を含む)のコピーを従業員に配布する
3.以上の内容を、いつでも使えるパソコンで、いつでも読めるようにしておく

一度説明したというようなことでは全く不十分です。労働者がいつでも自由に見れることが基本です。どこにあるかを知っている人が少ない状態にしておいたり、部長の席のそばのように気軽に入れない場所への備え付けでは周知をしたことになりません。

周知しているつもりでも、労働者が「そんなものは知らない見たこともない」と言えば困ったことになります。なので、一番確かなのは説明をしたうえでの書面交付です。なお、せっかく書面交付するのであれば受領書の保存を忘れないようにしましょう。

その他の注意点

外国籍の労働者がいる場合には、原則として母国語あるいは英語等の理解できる言語で周知する必要があります。

法改正や就業規則の改定はひんぱんにあると思います。法改正等があったとき、就業規則や協定等が改定されたときには、改めて周知しましょう。また、注意を払っていても周知漏れがあるかもしれません。時期を決めて定期的に点検しましょう。


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