Last Updated on 2023年2月26日 by 勝
育児休業法の周知義務
育児介護休業法は、事業主が育児休業や介護休業などを労働者に周知する(努力)義務があると定めています。
第21条 事業主は、育児休業及び介護休業に関して、あらかじめ、次に掲げる事項を定めるとともに、これを労働者に周知させるための措置(労働者若しくはその配偶者が妊娠し、若しくは出産したこと又は労働者が対象家族を介護していることを知ったときに、当該労働者に対し知らせる措置を含む。)を講ずるよう努めなければならない。
一 労働者の育児休業及び介護休業中における待遇に関する事項
二 育児休業及び介護休業後における賃金、配置その他の労働条件に関する事項
三 前二号に掲げるもののほか、厚生労働省令で定める事項
ポイント1 個別に説明する
法律では「当該労働者に」となっています。ですから、一般的に知らせるのではなく、育児介護休業法の適用を受ける状態になった人、一人一人に個別に説明しなければなりません。
ポイント2 書面を交付する
「周知させる」となっています。法律には「書面で」という文言もあります。したがって周知の具体的なやり方は、説明用の文書を作成し、その文書を交付しつつ概略を説明し、質問を受けるという形がよいでしょう。いつでも対応できるように事前に説明文書を作っておきましょう。また会社としても説明した記録を残すために、同じ文書を作成して一通に「この説明書を受領しました。年月日。社員署名」を記載してもらって保管するとよいでしょう。
ポイント3 申し出が無くても
周知する時期は、「妊娠し、若しくは出産したこと又は労働者が対象家族を介護していることを知ったとき」も含まれます。労働者から申し出が無くても、何らかの方法(他の社員の会話など)で会社(上司等が)がそのようなことを知ったときは、知らぬふりをせずにこの周知をしなければならないということです。
ポイント4 周知する内容
周知する内容は「次に掲げる事項」として明確になっています。
① 休業中の待遇
② 休業後の賃金、配置その他の労働条件
③ その他厚生労働省令で定める事項
厚生労働省令で定める事項は次の通りです。
① 子の死亡や介護対象者の死亡などで休業を終了するときの職場復帰の時期
② 介護休業中の社会保険料の負担(育児休業中は社会保険料免除です)
次は周知につかう文書のサンプルです。
育児介護休業制度について
年 月 日
〇〇〇〇殿
説明者 総務部 〇〇
育児休業・介護休業の制度について説明します。
1.育児休業または介護休業中は現在の部署での在籍が継続します。ただし、休業中の連絡等は総務部が窓口になります。担当者は〇〇です。遠慮なくご連絡ください。
2.休業から復帰したときは、従来の等級並びに職位で現在の部署に復帰します。ただし、機構改革等により部署に変動があったとき、またはそれに準じるやむを得ない事情が発生したときは、従前と異なる部署に配属することになります。この件についてはあなたの希望を聞いて決定します。
3.休業中は給与は支給されません。雇用保険から支給される育児休業給付金または介護休業給付金の支給については総務部がお手伝いします。また、介護休業中については社会保険料が免除されないので、指定の請求書に基づいて指定の会社口座に毎月月末までに振り込んでください。
4.休業期間は賞与の対象期間になりません。給与は支給されませんが、休業期間中に昇級が実施されたときは、直前2年間の平均評語を用いて昇給を実施します。
5.やむを得ない事情で休業を中止するときは、会社の諸準備のため、原則として申出日より1週間後から出社していただきます。この件についてはあなたの希望を聞いて決定します。
6.育児休業または介護休業についての詳細は、今日お渡しする当社の「育児介護休業規程」に記載してあります。内容に分からないことがありましたら、遠慮なく総務部〇〇に質問してください。
7.以上で説明は終わりますが、何か不明のことがあれば遠慮なく質問してください。
この文書によって説明を受けました。
年 月 日 〇〇〇〇(署名)
令和4年4月1日施行
法改正により、妊娠・出産の申出をした労働者に対する個別の周知・意向確認の措置の義務付けされることになりました。(令和4年4月1日施行)
第21条 事業主は、労働者が当該事業主に対し、当該労働者又はその配偶者が妊娠し、又は出産したことその他これに準ずるものとして厚生労働省令で定める事実を申し出たときは、厚生労働省令で定めるところにより、当該労働者に対して、育児休業に関する制度その他の厚生労働省令で定める事項を知らせるとともに、育児休業申出に係る当該労働者の意向を確認するための面談その他の厚生労働省令で定める措置を講じなければならない。
2 事業主は、労働者が前項の規定による申出をしたことを理由として、当該労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
個別の周知方法は面談での制度説明、書面による制度の情報提供等の複数の選択肢からいずれかを選択して措置をすることになる予定です。
また、取得意向の確認については、育児休業の取得を控えさせるような形での周知及び意向確認を認めないことが指針において示される予定です。