Last Updated on 2025年6月22日 by 勝
子の看護等休暇とは
小学校3年生修了までの子を養育する労働者は、男女を問わず、申し出ることにより、病気やけがをした子の看護のために、あるいは予防接種や健康診断を受けさせるための休暇を取得することができます。
子の看護等休暇に関するQ&A
Q1: 子の看護等休暇とはどのような制度ですか?
子の看護等休暇は、「小学校3年生修了まで」の子をを養育する労働者が、以下の理由で取得できる休暇です。
• 負傷したり疾病にかかった子の世話。
• 疾病の予防のための予防接種や健康診断を受けさせる際の世話。
• 感染症に伴う学級閉鎖、入園式、入学式、卒園式への参加など、厚生労働省令で定める事由に伴う子の世話や教育・保育に関する行事への参加。
令和7年4月1日施行の改正育児・介護休業法により、子の看護休暇の取得事由に「感染症に伴う学級閉鎖等」と「入園(入学)式、卒園式」が追加されました。この改正で看護以外に対象が拡大されたことに伴い、子の看護休暇は、子の看護「等」休暇に名称が変更になりました。
なお、授業参観や運動会への参加は、法的には子の看護休暇の取得事由として認められていませんが、事業主が独自の判断で認めることは差し支えありません。
事業主は、業務の繁忙等を理由に、子の看護等休暇の申出を拒むことはできません。
この制度は業種や会社の規模に関係なく、すべての企業が実施しなければなりません。
Q2: 取得できる日数と、取得単位について教えてください。
日数
1年度につき、子が1人の場合は5労働日、子が2人以上の場合は10労働日を限度として取得できます。
取得単位
1日単位または時間単位で取得が可能です。
時間は1時間の整数倍です。労働者が希望する時間でとることができます。
法令で認められる時間単位取得は、始業の時刻から連続し、又は終業の時刻まで連続するものなので、いわゆる「中抜け(勤務時間の途中に抜けて、終業時刻までにまた勤務に戻ってくること)」は想定されていません。しかし、厚生労働省は、法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇取得を認めるように配慮するよう求めています。
フレックスタイム制と子の看護等休暇は別の制度で、その趣旨が異なるので、たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で取得できるようにしなければなりません。
時間単位での取得が困難な業務
労使協定を締結することにより、業務の性質や実施体制に照らして時間単位での取得が困難と認められる業務(例:国際路線等に就航する航空機の客室乗務員、長時間の移動を要する遠隔地での業務、流れ作業方式や交替制勤務による業務など)に従事する労働者は、時間単位での取得対象から除外することができます。ただし、この場合でも、1日単位での取得は拒否できません。
労働者の子の症状や勤務状況が様々であることに対応するため、始業・終業時刻に連続しない時間単位での休暇取得や、半日単位での休暇取得を認めるなど、制度の弾力的な利用を可能にすることが望ましいとされています。
Q3: 子の看護休暇の取得対象とならない労働者はいますか?
労使協定を締結することにより、以下の労働者は子の看護休暇の対象から除外することが可能です。
• 週の所定労働日数が2日以下の労働者
• 上記Q2で述べた、業務の性質または業務の実施体制に照らして、時間単位で子の看護休暇を取得することが困難と認められる業務に従事する労働者(時間単位取得のみ除外)
管理監督者には「労働時間」「休憩」「休日」に限って労働基準法の規定が適用されませんが、子の看護休暇については管理監督者であっても他の従業員と同様に取得することができます。
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Q4: 労働者からの申出方法にはどのようなものがありますか?
子の看護休暇の申出は、書面によることが原則です。
事業主が適当と認める場合には、労働者の希望により、FAX、電子メール(webメール)、SNS(LINE、Facebook等)、またはイントラネットを経由した専用のブラウザによる申出も可能です。
ただし、FAX以外の方法では、労働者および事業主が送信した情報を出力して書面を作成できるものに限られます。
法令では申出方法を書面等に限定していないため、事業主が特段の定めをしない場合は口頭でも可能です。事業主が申出方法を指定する場合は、あらかじめその方法を明らかにし、労働者に過重な負担を求めないよう配慮する必要があります。指定された方法によらない申出があった場合でも、必要な内容が伝わる限り、措置を実施する必要があります。
当日、電話などで申し出た場合は、出勤後に速やかに書面を提出することが望ましいです。
Q5: 労働者は申出時にどのような情報を提供する必要がありますか?また、証明書類の提出は求められますか?
申出時には、申出の年月日、労働者の氏名、子の氏名・生年月日・続柄、子の看護を必要とする理由などの事項を申し出ることが必要です。
事業主は、申出に係る子の妊娠、出生、養子縁組の事実、または申出書記載の事実を証明できる書類の提出を求めることができます。
ただし、これらの証明書類の提出を子の看護休暇の制度利用の条件とすることはできません。労働者に過重な負担を求めないよう、事後の提出を可能とするなどの配慮が必要です。
Q6: 子の看護休暇に関する事業主の主な義務は何ですか?
子の看護休暇制度をあらかじめ導入し、規則を定める必要があります。制度の内容を周知する必要があります。
雇用環境の整備
労働者が子の看護休暇を円滑に取得できるようにするため、以下のいずれかの措置を講じなければなりません。
◦労働者に対する育児休業に係る研修の実施.
◦育児休業に関する相談体制の整備.
◦労働者の育児休業取得に関する事例の収集と提供.
◦労働者への育児休業に関する制度および取得促進方針の周知.
不利益取扱いの禁止
労働者が子の看護休暇の申出・取得をしたこと、または利用の意向を示したことを理由として、解雇、雇止め、減給、降格、不利益な配置変更、就業環境を害するなどの不利益な取扱いをすることは禁止されています。
ハラスメントの防止
職場における子の看護休暇の利用に関する言動に起因するハラスメントを防止するための雇用管理上の措置を講じる義務があります。
Q7: 子の看護休暇に関するハラスメントや不利益取扱いには、具体的にどのような行為が該当しますか?
不利益取扱い
子の看護休暇の申出や取得を理由とした、解雇、雇止め(契約更新をしないこと)、あらかじめ明示された契約更新回数の上限引き下げ、退職や非正規雇用への契約変更の強要、自宅待機命令、労働者が希望する期間を超えた一方的な所定外労働制限・時間外労働制限・深夜業制限・短時間勤務制度の適用、降格、減給、賞与の不利益な算定、昇進・昇格の人事考課での不利益評価、不利益な配置転換、就業環境を害する行為(業務に従事させない、雑務専任など)が禁止されています。
ただし、休業期間中に労務を提供しなかったことに対する賃金不払いや、勤務日数に応じた賞与・退職金の算定は、不利益な取扱いには該当しません。
ハラスメント
上司や同僚が、労働者の子の看護休暇の利用申出や利用を阻害する言動(例:「迷惑だ。自分なら取得しない。だからあなたもそうすべき。」といった発言)や、制度利用に伴う嫌がらせを行うことが該当します。客観的に見て業務上の必要性に基づく言動はハラスメントには該当しません。
育児休業等の取得率向上のために積極的に取得を勧めること自体は問題ありませんが、人格を否定するような言動を伴って強制する行為はパワーハラスメントに該当する可能性があります。
就業規則記載例
子の看護休暇について、就業規則または育児介護休業規程についての定めは次のようになります。
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