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育児介護

介護休暇制度のあらまし

Last Updated on 2025年6月22日 by

介護休暇に関する人事担当向けQ&Aを以下に作成しました。

介護休暇に関するQ&A

Q1: 介護休暇とはどのような制度ですか?

介護休暇は、要介護状態にある家族の介護や、それに付随する世話を行うために取得できる休暇制度です。具体的には、家族の通院の付き添いや、介護サービスを受けるために必要な手続きの代行などの世話も含まれます。

介護休業とは別に取得できます。

Q2: 介護休暇は年間何日まで取得できますか?

要介護状態にある家族が1人の場合、1年度につき5労働日まで取得可能です。対象となる家族が2人以上いる場合は、1年度につき10労働日まで取得できます。

Q3: 介護休暇は1日単位でしか取得できませんか?

いいえ、介護休暇は1日単位だけでなく、時間単位(1日の所定労働時間の一部を連続して)で取得することも可能です。

いわゆる「中抜け(勤務時間の途中に抜けて、終業時刻までにまた勤務に戻ってくること)」は想定されていません。しかし、厚生労働省は、法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇取得を認めるように配慮するよう求めています。

時間単位で取得する場合は、始業時刻から連続するか、終業時刻まで連続するものでなければなりません。時間は1時間の整数倍です。

時間単位で取得する際の1日あたりの時間数は、1日の所定労働時間数(日によって異なる場合は年間の平均所定労働時間数)を基準とし、1時間未満の端数があれば1時間に切り上げます。

ただし、労使協定により、業務の性質や実施体制に照らして時間単位での介護休暇取得が困難と認められる業務(例:国際路線に就航する航空機の客室乗務員、長時間の移動を伴う遠隔地での業務、流れ作業方式や交代制勤務による業務など)に従事する労働者は、時間単位の取得対象から除外できる場合があります。

このような場合でも、1日単位での取得は拒否できません。また、時間単位の取得ができない労働者に対しても、半日単位での休暇取得を認めるなど、制度の弾力的な利用を考慮することが望ましいとされています。

Q4: 介護休暇を取得できる「家族」の範囲はどこまでですか?

家族の範囲

育児・介護休業法における対象家族は、育児休業と介護休業でそれぞれ定義が異なります。

介護休暇の対象となる家族は、労働者の配偶者(事実婚を含む)、父母(養父母を含む)、子(養子を含む法律上の親子関係に限られます)、配偶者の父母、さらに、祖父母、兄弟姉妹、孫も対象となります。

かつては、祖父母、兄弟姉妹、孫については「同居かつ扶養していること」が要件でしたが、平成29年(2017年)1月1日からこの要件は廃止され、同居・扶養の有無にかかわらず対象となりました。

会社が上記以外の親族(例:叔父、叔母、曽祖父母など)を対象とすることを認め、就業規則などに定めている場合は、その方も社内制度上の対象とすることができます。

要介護状態

「要介護状態」とは、負傷、疾病、または身体上もしくは精神上の障害により、厚生労働省令で定める2週間以上の期間にわたり、常時介護が必要な状態を指します。

Q5: 介護休暇の申請はどのように行えばよいですか?

介護休暇の申請は、以下の事項を事業主に伝える必要があります。

•申請年月日
•申請する労働者の氏名
•申請に係る対象家族の氏名と労働者との続柄
•対象家族が要介護状態である事実
•介護休暇を取得する年月日(時間単位で取得する場合は、開始および終了の年月日時)

申請方法は、書面によることが基本ですが、事業主が適切と認める場合は、労働者の希望によりFAXや電子メール(イントラネット、Webメール、SNSなどを含む)でも可能です。ただし、電子メール等の場合は、労働者と事業主が送信情報を出力して書面を作成できることが条件です。

Q6: 介護休暇を申請する際に、証明書類の提出は必要ですか?

事業主は、申請に係る対象家族が要介護状態にあることなどを証明する書類(例:介護保険の要介護認定結果通知書、医師の診断書、障害支援区分認定通知書など)の提出を求めることができます。

しかし、その提出を制度利用の条件とすることはできません。労働者に過重な負担を求めないよう、証明書類は事後提出も可能とすることが望ましいとされています。

Q7: 事業主は介護休暇の申請を拒否できますか?

原則として、事業主は労働者からの介護休暇の申請を拒否することはできません。

ただし、週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定を締結することで介護休暇の対象から除外することが可能です。

管理監督者には「労働時間」「休憩」「休日」に限って労働基準法の規定が適用されませんが、介護休暇はこれに該当しないので管理監督者であっても他の従業員と同様に取得することができます。

Q8: 介護休暇の取得を理由に、労働者に不利益な扱いをすることは許されますか?

いいえ、労働者が介護休暇の申請や取得を行ったこと、または介護休業等に関する相談を行ったこと、あるいはその相談への対応に協力して事実を述べたことを理由として、解雇その他の不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

不利益な取り扱いには、解雇、有期雇用契約の更新拒否(雇止め)、契約更新回数の上限引き下げ、退職や非正規雇用への転換の強要、自宅待機命令、労働者が希望する期間を超えた所定外・時間外・深夜労働の強制、減給や賞与等における不利益な算定(労務提供がなかった期間を超える取り扱い)、昇進・昇格における不利益な評価(休業期間を超える選考対象期間の設定など)、不利益な配置転換(賃金、労働条件、通勤事情などを総合的に考慮)、業務に従事させない、専ら雑務に従事させるなど就業環境を害する行為が含まれます。

Q9: 介護休暇が円滑に取得されるための「雇用環境の整備」とは、具体的に何をすればよいですか?

事業主は、介護休業や介護休暇が円滑に取得できるよう、雇用環境の整備に努める義務があります。これには以下の措置が含まれます。

•介護両立支援制度等に関する研修の実施。
•介護両立支援制度等に関する相談体制の整備(相談窓口の設置)。
•自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得事例の収集・提供。
•自社の労働者への介護休業・介護両立支援制度等の取得促進に関する方針の周知。

これらの措置は、現在介護に直面している社員がいなくても、また、将来そのような社員を採用する予定がなくても、全ての事業主が実施する必要があります。これは、介護の対象家族の範囲が広いため、幅広い年齢層の労働者が介護の必要性に直面する可能性があるためです。

研修は年度当初にまとめて実施したり、動画によるオンライン研修とすることも可能ですが、事業主の責任において労働者が研修を受講していることを担保する必要があります。単に資料や動画を掲載・配布するだけでは「研修を実施した」ことにはなりません。

フレックスタイムとの関係

厚生労働省のQ&Aによれば、フレックスタイム制と子の看護休暇・介護休暇は別の制度で、その趣旨が異なるので、たとえフレックスタイム制度のような柔軟な労働時間制度が適用される労働者であっても、申出があった場合には、時間単位で看護・介護休暇を取得できるようにしなければならない。としています。

育児介護休業等規程記載例

介護休暇について、就業規則または育児介護休業等規程への記載例は次のとおりです。

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