行政による個別労働紛争解決支援
個々の労働者と会社間でのトラブルは日常的に発生していると思われます。話し合いで解決に至ったり、当事者である労働者の離職で表面的な解決をみていると思われます。
紛争が一方の泣き寝入りに終わるのは社会正義上大きな問題があります。当事者間で解決しないときは裁判に持ち込むという方法がありますが、裁判は多額の費用と時間がかかることが多いので敬遠されがちです。
このため、安価で迅速な解決を支援するための行政等による解決支援制度があり、その中心になるのが都道府県労働局等が行うあっせんや調停の制度です。
各法律に基づくあっせんや調停の制度は、無料で利用でき、比較的早期に決着します。解決に苦慮しているのであれば労働者からだけでなく使用者の方から申し立てすることもできます。
個別労働関係紛争解決促進法に基づくあっせん
個々の労働者と事業主の間に紛争がおきたときは、個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律に基づく紛争解決制度を利用することができます。具体的には、総合労働相談コーナーにおける情報提供・相談、都道府県労働局長による助言・指導、紛争調整委員会によるあっせんなどが定められています。
男女雇用機会均等法に基づく調停
男女雇用機会均等法は、性別を理由とする差別の禁止、性別以外の事由を要件とする措置、婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等、妊娠中及び出産後の健康管理に関する措置、勤務時間の変更、勤務の軽減等必要な措置に関する紛争の扱いについて定めています。
育児介護休業法に基づく調停
育児介護休業法は、育児休業や介護休業、子の看護休暇、介護休暇、所定外労働の制限、時間外労働の制限等の育児介護に関する諸制度、妊娠又は出産等についての申出があった場合における措置、所定労働時間の短縮措置等、労働者の配置に関する配慮などに関する紛争の扱いについて定めています。
パートタイム・有期雇用労働法に基づく調停
パートタイム・有期雇用労働法は、労働条件に関する文書の交付等、不合理な待遇の禁止、通常の労働者と同視すべき短時間・有期雇用労働者に対する差別的取扱いの禁止、教育訓練、福利厚生施設、通常の労働者への転換、事業主が講ずる措置の内容等の説明についての紛争の扱いについて定めています。
労働施策総合推進法に基づく調停
労働施策総合推進法は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害される、いわゆるパワハラについてその防止や紛争の解決策を定めています。
障害者雇用促進法に基づく調停
障害者雇用促進法は、障害者に対する差別の禁止、雇用の分野における障害者と障害者でない者との均等な機会の確保等を図るための措置についての紛争の扱いについて定めています。
労働者派遣法に基づく調停
労働者派遣法は、不合理な待遇の禁止等、待遇に関する事項等の説明、適正な派遣就業の確保等についての紛争の扱いについて定めています。
地方自治法に基づく地方労働委員会によるあっせん
都道府県に設置されている労働委員会に個別労働紛争のあっせんを求めることができます。ただし、個別労働紛争に対応していない労働委員会もあります。
労働審判法に基づく労働審判
労働審判制度とは労働審判官(裁判官)と労働関係の専門家である労働審判員2名で組織された労働審判委員会が個別労働紛争を、原則3回以内の期日で審理する制度です。
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