Last Updated on 2025年7月16日 by 勝
従業員のスキルアップとキャリア形成を支援する制度として、「教育訓練給付金」があります。従業員の学びを後押しし、ひいては企業の成長に繋げる上で重要な制度です。
本記事では、「教育訓練給付金」について、人事担当者の皆様が知っておくべき事項を、その仕組みと事業主側の留意点に焦点を当てて解説します。
教育訓練給付金とは?
教育訓練給付金は、労働者の主体的なスキルアップを支援する目的で、厚生労働大臣が指定した教育訓練を受講・修了した方に対し、その費用の一部が支給される雇用保険の制度です。約17,000講座が対象となっており、オンラインや夜間・土日に受講できる講座も多く、従業員は働きながらスキルアップを目指すことが可能です。
給付金は、訓練のレベルに応じて以下の3種類に分かれ、それぞれ給付率が異なります。
1. 専門実践教育訓練
中長期的なキャリア形成を支援する教育訓練が対象です。業務独占資格(例:介護福祉士、看護師、社会福祉士など)やデジタル関係の講座(例:第四次産業革命スキル習得講座、ITSSレベル3以上の情報通信技術関係資格)、大学院・大学・専門学校の課程などが含まれます。
• 給付率: 受講費用の最大80%が支給されます(年間上限64万円)。
◦ 通常支給: 受講費用等の50%(年間上限40万円)が訓練受講中6か月ごとに支給されます。
◦ 追加支給: 訓練修了後1年以内に目標資格を取得し、雇用保険の被保険者として就職した場合、または就職している場合は、給付率が70%(年間上限56万円)に引き上げられ、既支給分との差額が支給されます。
◦ 2024年10月以降の拡充: 2024年10月1日以降に講座を受講開始し、上記の要件を満たした上で訓練修了後の賃金が受講開始前と比較して5%以上上昇した場合、給付率が80%(年間上限64万円)に再計算され、差額が支給されます。
• 事前の手続き: 受講開始前に訓練対応キャリアコンサルタントによる「訓練前キャリアコンサルティング」を受け、「ジョブ・カード」を作成することが必要です。その後、ジョブ・カードと受給資格確認票をハローワークに提出し、受給資格確認手続きを行います。
2. 特定一般教育訓練
速やかな再就職や早期のキャリア形成に資する教育訓練が対象です。介護支援専門員実務研修、大型自動車免許、ITSSレベル2の情報通信技術関係資格などが例として挙げられます。
• 給付率: 受講費用の最大50%が支給されます(上限25万円)。
◦ 2024年9月までに受講を開始した場合は、受講費用の40%(上限20万円)が支給されます。
3. 一般教育訓練
その他の雇用の安定・就職促進に資する教育訓練が対象です。税理士、社会保険労務士、Webクリエイター、TOEIC、簿記検定、宅地建物取引士などの資格取得を目指す講座が含まれます。
• 給付率: 受講費用の20%が支給されます(上限10万円)。ただし、20%に相当する額が4千円を超えない場合は支給されません。
従業員の受給要件
教育訓練給付金を受けるには、従業員が以下の雇用保険の加入期間などの要件を満たす必要があります。パート・アルバイトや派遣労働者の方も対象です。
• 在職中の場合: 受講開始日に雇用保険の被保険者であること。
• 離職中の場合: 受講開始日に被保険者でない場合でも、被保険者資格喪失日(離職日の翌日)から受講開始日までが1年以内であること。
◦ 妊娠、出産、育児、疾病、負傷などの理由で受講開始できない期間が30日以上ある場合は、ハローワークへの申出により最長20年まで適用対象期間を延長できます。
• 雇用保険の加入期間(支給要件期間):
◦ 初めて受給する場合: 雇用保険の加入期間が1年以上あること。
▪ 専門実践教育訓練を受講する場合は2年以上。
◦ 過去に受給したことがある場合: 前回の受講開始日以降、雇用保険の加入期間が3年以上あり、かつ前回の支給日から今回の受講開始日まで3年以上経過していること。
人事担当者の主な役割と留意事項
教育訓練給付金は、原則として従業員本人がハローワークに申請を行う制度です。しかし、従業員が制度を利用する際には、事業主の皆様の協力と対応が不可欠です。
1. 従業員への情報提供と相談支援
従業員から教育訓練給付金に関する相談があった場合、制度の概要や対象講座の検索方法(教育訓練給付制度検索システム)などを案内し、ハローワークへの問い合わせを促すことができます。
2. 申請時の書類協力
従業員が教育訓練給付金を申請する際、事業主は「雇用保険被保険者教育訓練給付金開始時賃金月額証明書(様式第10号の2の2)」などの必要書類を、事業所の所在地を管轄するハローワークに提出する必要があります。
この書類は、対象労働者の休暇開始後、当該休暇開始日の翌日から起算して10日以内に提出します。 ハローワークから交付される「賃金月額証明票」や「教育訓練給付金支給申請書」などは、速やかに該当する労働者へ交付してください。
3. 不正防止のための注意事項
• 解雇等を予定している労働者への適用不可: 解雇等を予定している労働者に対して教育訓練給付金の支給対象となる訓練を受講させることは認められていません。虚偽の届出を行った場合、罰則の対象となることがあります。
• 給付金の適正な申請: 偽りその他不正の行為によって教育訓練給付金を受けたり、受けようとした場合は、給付金を受けることができなくなり、不正に受給した金額の返還に加えて返還額の2倍の金額の納付を命じられ、詐欺罪として刑罰に処せられることがあります。
申請手続き等
上記は概略です。制度はよく変更されるので「ハローワークインターネットサービス」内の「教育給付金」で最新の情報を取得してください。また不明の点があればハローワークへのご相談をお勧めします。
指定講座は講座検索システムで検索できます。
まとめ
教育訓練給付金は、従業員の自律的なキャリア形成を支援し、個々のスキル向上を促すことで、結果的に企業の競争力向上と従業員満足度向上にも貢献する制度です。人事担当者の皆様は、この制度を正しく理解し、従業員が円滑に活用できるよう、必要なサポートを提供することが求められます。