雇用保険の給付

労働保険

受給手続き

雇用保険の被保険者(会社などで働いている人)は雇用保険制度から給付を受けることができます。

失業して給付を受けるときは、自分でハローワークに行って手続きをしなければなりません。離職者から質問があれば、会社の担当者はできるだけ親切に対応することが求められますが、雇用保険の取り扱いは複雑で、しかも変更されることがしばしばあります。親切心からであっても間違ったことを教えて、そのために離職者が不利益をこうむることになってしまえば大きな問題に発展することもあります。

特に、どうすれば得になるかなどの損得の説明は厳禁です。雇用保険の給付に関することはハローワークの窓口に相談するように指導するのが無難です。

基本手当等を受給するには雇用主が発行する離職票が必要です。会社として特に注意すべき点は、支給した賃金の額を間違えないこと、離職理由について事実を記載することの2つです。

在職中に受給する雇用継続給付等は、会社が代わって手続きすることが多いです。

給付の種類

雇用保険から受給できる給付は、大きく分けて以下の4つの種類があります。

  1. 求職者給付(失業した際に生活を保障し、求職活動を支援する)
  2. 就職促進給付(早期再就職を支援する)
  3. 教育訓練給付(スキルアップを支援する)
  4. 雇用継続給付(働き続けることを支援する)

求職者給付

基本手当

失業している期間に生活費の補填として支給される手当を基本手当といいます。よく失業手当と言いますが、本当は「雇用保険の失業給付の基本手当」です。昔は失業手当という手当があったのですが、名称が変更されました。でも、使っても問題ありません。通じれば良いのです。

基本手当は、雇用保険の被保険者が離職し、「働く意思と能力があるにもかかわらず職業に就けない失業の状態にある」場合に、再就職までの生活を経済的に保障し、求職活動を容易にすることを目的として支給される最も代表的な給付金です。

受給するためには、原則として離職日以前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上必要です(倒産・解雇などの場合は離職日以前1年間に6ヶ月以上)。受給資格を得た後、ハローワークで求職の申込みを行い、7日間の待期期間を経て、失業の認定(原則4週間に一度)を受けることで、所定給付日数を限度として支給されます。

基本手当日額は、離職前の賃金(賞与除く)を基に計算され、賃金日額のおよそ45%~80%(賃金が低いほど高い率)が支給されますが、年齢ごとに上限額が設定されています。所定給付日数は、離職理由、被保険者期間、離職時の年齢に応じて90日から360日の間で決められます。また、自己都合退職などの場合は、待期期間満了後に2ヶ月または3ヶ月の給付制限期間が設けられることがあります。

技能習得手当

失業者がハローワークの指示により公共職業訓練等を受講する場合に、基本手当が支給されるほか、訓練受講に要する費用として、「受講手当」、「通所手当」などが支給されます。

就職促進給付

早期再就職を促進するために支給される給付です。

  • 再就職手当: 基本手当の受給資格者が、所定給付日数を残して安定した職業に就いた場合に、就職祝い金として残りの日数に応じて支給されます。早期に再就職するほど支給率が高くなるため、求職活動へのモチベーション維持につながります。
  • 就業手当: 基本手当の受給資格者が、短期間のアルバイトやパートタイムなどの「就業」をした場合に支給されます。
  • 常用就職支度手当: 障害のある方など就職が困難な方が、ハローワークなどの紹介で安定した職業に就いた場合に支給され、再就職後の生活立ち上げを支援します。
  • このほか、遠方での求職活動や就職に伴う引越し費用を援助する広域求職活動費や移転費などがあります。

教育訓練給付

労働者や離職者が自発的に職業能力の開発・向上を図ることを支援する給付です。

  • 教育訓練給付金: 厚生労働大臣が指定する教育訓練(資格取得やスキルアップ講座など)を受講し修了した場合に、本人が支払った費用の一部が支給されます。訓練の種類によって「一般教育訓練給付金」「特定一般教育訓練給付金」「専門実践教育訓練給付金」があり、それぞれ支給要件や支給率が異なります。
  • 原則として、雇用保険の被保険者期間が一定期間以上(訓練の種類により1年または2年、専門実践は3年)ある方が対象です。給付を受けることで、転職・再就職活動での競争力強化やキャリアアップを後押しします。

雇用継続給付

労働者が雇用の継続を支援するために休業した場合や、60歳以降も働き続ける場合に支給される給付です。

  • 育児休業給付金: 1歳未満の子(特定の理由がある場合は最長2歳)を養育するために育児休業を取得し、賃金が支払われなくなった場合に支給されます。休業中の生活を保障し、仕事と育児の両立を支援します。
  • 介護休業給付金: 要介護状態の家族を介護するために介護休業を取得し、賃金が支払われなくなった場合に支給されます。仕事と介護の両立を支援します。
  • 高年齢雇用継続給付: 60歳以降も働き続ける方で、賃金が60歳到達時と比べて75%未満に低下した場合に、低下した賃金の一部を補填する形で支給されます。(基本手当を受給せずに継続雇用された方向けの高年齢雇用継続基本給付金などがあります。)

ここでは、育児休業給付金を雇用継続給付の項目に入れましたが、厳密には、法改正(2020年(令和2年))により、雇用保険法上の位置づけとして、育児休業給付は「雇用継続給付」から独立し、「育児休業等給付」として分類されるようになっています。しかし、制度の目的や実態としては、引き続き雇用の継続を支援する性質を持つ給付であることに変わりはありません。