Last Updated on 2024年11月10日 by 勝
受給者について
雇用保険の保険料を払ってきた人は、失業したときに雇用保険から失業給付をもらえます。
失業している期間に生活費の補填として支給される手当を基本手当といいます。よく失業手当と言いますが、本当は「雇用保険の失業給付の基本手当」です。昔は失業手当という手当があったのですが、名称が変更されました。でも、使っても問題ありません。通じれば良いのです。
雇用保険の被保険者(会社などで働いている人)は雇用保険制度から給付を受けることができます。
給付の種類
給付には、基本手当、就職促進給付、教育訓練給付、雇用継続給付があります。
基本手当、就職促進給付は失業したときに給付されます。
教育訓練給付、雇用継続給付は、失業しないように支援する給付です。
基本手当
基本手当は、雇用保険の被保険者の方が、定年、倒産、自主的な離職により失業したときに、失業中の生活を支援するために支給される給付金です。
基本手当の額は、在職中の賃金によって決まります。
基本手当を受給できる日数は、離職の日における年齢、雇用保険の被保険者であった期間及び離職の理由などによって決定します。
給付日数は、90日~360日の間で決められます。
特に倒産・解雇等により失業した時は、一般の離職者に比べ手厚い給付日数となります。
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基本手当の給付制限など
さて、その基本手当ですが、失業した日から支給されるものではありません。
まず、ハローワークで求職の申込みをしてから、7日間は支給の対象外です。これを待期期間といいます。
なぜ、待期期間があるのかというと、ハローワークが本当に失業しているのかを確認するための期間だと言われています。であれば、確認がとれたら失業の初日にさかのぼって支給してもよさそうなものですが、そうはなりません。この最初の7日間は無支給です。
待期期間は失業給付を受ける人すべてに適用されます。
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待期期間が終わってから、退職理由によって取り扱いが分かれます。
自己都合退職か会社都合退職かの違いです。
会社都合退職の場合は、待期期間が終われば支給が始まります。
自己都合退職の場合は、さらに2か月待たなければなりません。これを「給付制限」といいます。
会社都合退職というのは、倒産とか、工場閉鎖とか、退職勧奨や希望退職に応じた場合の退職です。
自己都合退職というのは、まさに自分の都合で退職した場合です。
悪いことをして解雇された場合は、会社の都合のように思うかもしれませんが、雇用保険では自己都合退職と同じ扱いになります。
なお、自己都合退職と言っても、やむを得ない理由による退職は、会社都合退職と同じ扱いを受けます。いろいろありますが「特定受給資格者」や「特定理由離職者」で検索すればおおよそのことがわかると思います。
自己都合退職に対して行われる給付制限は、令和2年10月1日に、3か月から2か月に短縮されました。
ただし、5年間の間に3回以上自己都合退職した場合は3か月になります。また、重責解雇(雇用保険法上の概念で、労働者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇されたこと)の場合も3か月です。
筆者自身、何度も転職経験があるのですが、全部自己都合退職でした。3か月は本当に長いです。あまり長いのでいずれも基本手当を受給する前に仕事が決まってしまいました。なので、基本手当は受給できませんでしたが、その代わり、再就職手当をもらいました。この度、給付制限が2か月に短縮されたのは良いことだと思いますが、それでも長いです。ずっとずっと前は1か月だったそうなので、いずれそこまで戻ればよいですね。
2024年5月10日に改正雇用保険法が可決・成立したことにより、2025年(令和7年)4月1日から、自己都合により退職した者が一定の教育訓練を受けた場合「給付制限」が解除され、すぐに基本手当を受給できるようになります。また、同時に、職業訓練を受けない自己都合離職者の給付制限が、通達改正により原則2か月から1か月に短縮されます。(5年間で3回以上自己都合離職をしている場合は従来通り3か月の給付制限期間があります。)
就職促進給付
失業等給付の就職促進給付のうち「就業促進手当」として、「就職手当」、「就業促進定着手当」、「就業手当」などがありがあります。
再就職手当
再就職手当は、基本手当の受給資格がある方が安定した職業に就いた場合に基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上あり、一定の要件に該当する場合に支給されます。
就職促進定着手当
就業促進定着手当は、再就職手当の支給を受けた人が、引き続きその再就職先に6か月以上雇用され、かつ再就職先で6か月の間に支払われた賃金の1日分の額が雇用保険の給付を受ける離職前の賃金の1日分の額(賃金日額)に比べて低下している場合、一定の要件に該当する場合に支給されます。
就業手当
就業手当は、基本手当の受給資格がある方が再就職手当の支給対象とならない常用雇用等以外の形態で就業した場合に、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1以上かつ45日以上ある場合、一定の要件に該当する場合に支給されます。
就業手当は、令和7年3月31日をもって廃止されます。
常用就職支度手当
常用就職支度手当は、基本手当の支給残日数が所定給付日数の3分の1未満である方で、高年齢受給資格者、特例受給資格者又は日雇受給資格者のうち、障害のある方など就職が困難な方が安定した職業に就いた場合、一定の要件に該当する場合に支給されます。
教育訓練給付
教育訓練受講に支払った費用の一部を支給する給付です。
関連記事:雇用保険の教育訓練給付とはどういうものか
雇用継続給付
雇用継続給付は、失業しないように支援する給付です。高年齢雇用継続給付、介護休業給付があります。
育児休業給付
雇用保険の仕組みでは、育児休業給付は以前は雇用継続給付のなかに分類されていましたが、現在は失業等給付から分離されています。
これにより、雇用保険は、失業等給付と、育児休業給付と雇用保険二事業の3つとなっています。
受給手続き
失業して給付を受けるときは、自分でハローワークに行って手続きをしなければなりません。離職者から質問があれば、会社の担当者はできるだけ親切に対応することが求められますが、雇用保険の取り扱いは複雑で、しかも変更されることがしばしばあります。親切心からであっても間違ったことを教えて、そのために離職者が不利益をこうむることになってしまえば大きな問題に発展することもあります。特に、どうすれば得になるかなどの損得の説明は厳禁です。基本手当の受給に関することはハローワークの窓口に相談するように指導するのが無難です。
基本手当等を受給するには雇用主が発行する離職票が必要です。会社として特に注意すべき点は、支給した賃金の額を間違えないこと、離職理由について事実を記載することの2つです。
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在職中に受給する雇用継続給付等は、会社が代わって手続きすることが多いです。
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