離職証明書と離職票

退職・解雇

離職証明書または離職票とは

従業員が退職したときは、会社は、退職した従業員についての「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を従業員の離職日の翌日から10日以内に、ハローワークに提出しなければなりません。

雇用保険被保険者離職証明書(以下「離職証明書」といいます)は、3枚複写になっており、下2枚が「雇用保険被保険者離職票―1と―2」(以下「離職票」といいます)になっています。

離職証明書は複写式の専用用紙で提出しなければなりません。この用紙は、ネットからダウンロードして入手することはできません。ハローワークに取りに行く必要があります。

業務ソフトからプリントする独自書式は、事前にハローワークで「印刷物による届出の承認申請」をして承認を得れば提出可能になります。電子申請による場合は、専用用紙も承認も必要ありません。

提出を受けたハローワークは、書類を点検し、離職票に検印を押して返却します。

ハローワークで受け取った離職票は、会社から元従業員に交付しなければなりません。離職票が発行された段階ではすでに退職しているので、一般的には郵送で交付します。

元従業員は受け取った離職票をハローワークに提出します。離職票の記載内容をもとに失業等給付の支給額等が決まります。

紙ベースから電子申請へ

電子申請義務化と紙ベースの専用用紙の扱い

電子申請が義務化された企業は、原則として紙ベースの専用用紙(様式)での提出ができなくなっています。

項目詳細
義務化の目的行政手続きのコスト削減と利便性向上を目的として、2020年4月から特定の法人を対象に開始されました。
提出方法義務化対象の企業は、「e-Gov」等の電子申請システムを利用して手続きを行う必要があります。
離職証明書雇用保険の「被保険者資格喪失届(離職票交付あり)」の手続きは、電子申請が義務化された手続きに含まれます。原則、紙での提出は認められません。
離職票の交付電子申請後、ハローワークから交付される離職票(離職票-1、離職票-2)はPDFなどの電子公文書として戻ってきます。事業主はこれを印刷し、離職者に交付します。

電子申請が義務化された企業も、電気通信回線の故障や災害など、やむを得ない理由により電子申請が困難と認められる場合は、例外的に紙での提出が認められることがあります。

電子申請義務化の対象企業

現在、電子申請が義務化されている「特定の法人」は、主に以下のいずれかに該当する大企業等です。

  • 資本金、出資金または拠出金の額が1億円を超える法人
  • 相互会社(保険業法に基づくもの)
  • 投資法人(投資信託及び投資法人に関する法律に基づくもの)
  • 特定目的会社(資産の流動化に関する法律に基づくもの)

中小企業への拡大の可能性

時期は不明ですが、いずれ中小企業に拡大される可能性は高いと見られています。

  • 政府の方針:政府全体で行政手続きのデジタル化・簡素化(行政手続コストの削減)を推進しており、電子申請の利用促進は主要な取り組みの一つです。
  • 現状:現時点では中小企業への義務化はされていませんが、多くの専門家は、将来的に義務化の対象が拡大していくと予測しています。
  • 推奨:義務化の対象外である中小企業でも、電子申請は手続きの効率化、人件費や郵送費のコスト削減につながるメリットがあるため、早めの導入が推奨されています。

電子申請での手続き

離職証明書の電子申請における賃金データの入力方法は、主に手入力とCSVファイルによる一括入力の2通りがあります。ファイル添付は、賃金台帳や出勤簿といった証明書類を添付する際に利用されます。

手入力

e-Govなどの電子申請システム上で、画面に表示される項目に直接賃金額や賃金支払基礎日数などを入力していく方法です。

  • メリット: 従業員が1名の場合や、専用の労務管理システムを導入していない場合に適しています。
  • デメリット: 複数名の申請では手間がかかり、入力ミスも起こりやすくなります。

CSVファイルによる一括入力

多くの労務管理・給与計算ソフトでは、離職証明書作成用のCSVデータを出力する機能が備わっています。

  • このCSVファイルをe-Govの電子申請システムに取り込むことで、賃金データや被保険者情報などを一括で自動入力できます。
  • メリット: 複数の従業員の離職手続きを一度に行うことができ、入力の手間が大幅に削減されます。
  • デメリット: 専用のソフトが必要であり、CSVファイルの形式が正しくないとエラーが発生する場合があります。

ファイル添付

賃金データそのものを提出するわけではありませんが、離職証明書の内容を証明するために賃金台帳や出勤簿のPDFファイルなどを添付することがあります。

  • ハローワークが内容を確認する必要があると判断した場合に、これらの書類の提出を求められることが一般的です。
  • 電子申請では、これらの添付書類も電子ファイルとしてアップロードします。

離職者はマイナポータルで離職票を受け取ることができる

2025年1月20日から、希望する離職者は、マイナポータルで離職票を受け取ることができるようになりました。

以下の条件を満たす必要があります。
①届け出たマイナンバーが被保険者番号と適切に紐付いていること
②離職者がマイナポータルと雇用保険WEBサービスの連携設定をしていること
③事業主が電子申請で雇用保険の離職手続きを行うこと

離職証明書記入の要点

賃金の支払い状況

離職証明書の左半分には、1年間の賃金の支払い状況を記載します。賞与や退職金はこの場合はは賃金には含まれません。

離職翌日の応当日
8月30日の退職など、離職日の翌日に応当する日が各月にない場合はその月の末日を記載します。

欠勤控除による賃金減額
欠勤による減額があった月については、賃金支払基礎日数を減らして記載することになり、備考欄に「〇日間欠勤」と記載します。

継続して30日以上賃金支払がなかった
疾病により継続して30日以上賃金の支払いがなかった場合は、備考欄に、賃金支払がなかった期間及びその日数、ならびに原因となった疾病名を記載します。

休業手当を支払った
休業手当が支払われた場合、該当する期間の行の備考欄に休業日数と休業手当の額を記載します。また、事業主が休業について雇用調整助成金の支給を受けている場合は、備考欄の余白部分に「雇調金」と記載し、助成金支給決定年月日を記載します。

賃金支払基礎日数

賃金支払基礎日数とは、基本給が支給された日数のことです。有給休暇も対象です。

賃金支払基礎日数は月給制か日給制かなど、給与形態によって変化します。

月給制(完全月給制)の場合

月額賃金が固定されているので暦の日数を書きます。たとえば4月なら30日、2月で閏年なら29日というふうに記入していきます。

日給月給制の場合

日給月給制の場合、離職票の賃金支払基礎日数の書き方は2通りになります。

欠勤を控除する部分は共通ですが、休日のような勤務が不要な日を基本給の指定対象とするかしないかで扱いがわかれます。

対象とする場合の欠勤控除の計算方法は「基本給÷所定労働日数×欠勤日数」で、対象としない場合は「基本給÷歴日数×欠勤日数」となります。

被保険者期間

失業等給付の支給を受けるためには、離職をした日以前の2年間に、「被保険者期間」が通算して12か月以上(特定受給資格者または特定理由離職者は、離職の日以前の1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上)あることが必要です。

この「被保険者期間」は、離職日から1か月ごとに区切っていた期間に、賃金支払の基礎となる日数が11日以上ある月を1か月と計算します。

賃金支払の基礎となった日数が11日に満たない月であっても賃金支払の基礎となった労働時間数が80時間以上あれば、その月は通算期間としてカウントされます。

出勤する日数は少なく1日の労働時間は長い人などが該当します。勤務時間までしっかり確認して離職証明書を作成していかなければなりません。

離職票へは、 基礎日数が10日以下の場合は「⑬備考」へ当該期間の労働時間数を記載します。

受給資格の有無は重要です。慎重にチェックしましょう。

離職の理由

離職証明書の右側の欄に、離職理由を記入する部分があります。離職理由が自己都合によるものなのか、倒産など会社の都合によるものかなどによって、基本手当の給付日数が変わります。事実を記入しましょう。

離職証明書に記載した離職理由について、事業主と離職者で主張が異なる場合は、ハローワークが事実関係を調査して、離職理由を判定します。

離職票の用途

離職票は、退職した従業員がハローワークで失業給付を受給する手続きをする際に必要です。

必要な被保険者期間を満たさず、失業等給付の受給対象とならない場合、退職後に間を空けずに次の就職する会社が決まっている場合などの理由で、従業員が離職票の交付を希望しない場合は、「雇用保険被保険者離職証明書」の作成は必要ありません。

ただし、離職者が59歳以上であれば本人が希望しなくても交付しなければなりません。