Last Updated on 2022年6月6日 by 勝
有期事業とは
製造業やサービス業などの一般の事業では、事務所や店舗、工場などの事業所ごとに労災保険に加入します。これに対して、建設業では、一つ一つの現場が労災保険加入の単位になります。
建設業は、元請、下請、孫請のいろいろな事業者が参加し、一体となって工事を進めているので、その実態に合わた加入形態になっているのです。
また、工事は、目的となる建造物が完成すれば終了し、工事を進めてきた元請、下請の関係も解消されます。したがって、労災保険には、工事が開始日から終了日までの期間限定で入ります。このように「期間が有る事業」なので「有期事業」と呼びます。
建設業では、それぞれの事業者が別々に労災保険に入るのではなく、現場全体をまとめて元請業者が労災保険に加入します。
元請業者が、工事を1件始めるたびに労災保険加入の手続きを取って保険料を納め、終わったら終了の手続きを取って保険料を清算するのです。
有期事業を一括する
これまでの説明が有期事業が労災保険に入る場合の原則です。
しかし、小規模な工事は膨大な件数があり、その全てに対して原則的な方法で労災申請するのであれば、事務負担も膨大になります。
そこで、一定以下の規模の工事については、1年分の有期事業を一括して労災保険の手続きができる「一括有期事業」制度が作られました。
有期事業の一括の要件
「一括有期事業」に該当するかどうかは、
1.事業主が同一人であること。
2.それぞれの事業が建設の事業または立木の伐採の事業であること。
3.事業の期間が予定されている事業であること。
4.事業規模の要件
があります。
建設の事業
建設の事業の規模の要件は、労働保険料の概算保険料を試算してみた場合、その額が160万円未満であって、かつ、請負金額(税抜き)が1億8,000万円未満(平成27年3月31日以前に開始された事業について消費税額を含む請負金額が1憶9,000万円未満)となっています。
立木の伐採の事業
立木の伐採の事業の要件は、労働保険料の概算保険料を試算してみた場合、その額が160万円未満であって、かつ、立木の伐採の事業においては、素材の見込生産量が1,000立方メートル未満であることとなっています。
途中で拡大した場合
はじめこの規模に該当していたものが、その後、保険料額、請負金額、素材の見込生産量が一括の基準以上に増加しても、あらためてその事業の分を一括から除外する必要はありません。
5.それぞれの事業が他のいずれかの事業と相前後して行われること。
6.以前は、管轄する都道府県労働局の管轄区域、またはそれと隣接する都道府県労働局の管轄区域内で行われる事業という地域要件がありましたが。地域条件は廃止されたため、遠隔地で行われるものも含めて一括されます。
一括有期事業開始届の廃止
一括有期事業を行う事業主は、それぞれの事業を開始したとき、翌月10日までに一括有期事業開始届を所轄の労働基準監督署長に提出する必要がありました。しかし、平成31年4月1日以降に開始する一括有期事業については、この一括有期事業開始届が廃止されるため、提出する必要がなくなりました。
一括有期事業開始届が不要になっただけで労働保険料の申告納付は当然必要です。また、要件を超える大きな工事をおこなうような場合は、今までどおり工事ごとに労災保険の加入の手続きをおこなう必要があります。