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取締役と監査役

取締役の登記を忘れた場合

Last Updated on 2024年3月19日 by

取締役の任期

株主総会の取締役には任期があります。いつまでも続けることはできません。取締役を続けるのであれば任期が切れるときに再任の手続きをしなければなりません。

取締役の任期は、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までですが、定款又は株主総会の決議によって、その任期を短縮することもできます。

公開会社ではない株式会社の取締役の任期は、定款で定めることにより、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで伸長することもできます。

なお、公開会社とは、株式会社が発行する株式の全部又は一部について、株式の譲渡について株式会社の承認を要する旨の定款の定めがない株式会社をいいます。株式を市場に公開しているかどうかは関係ありません。

代表取締役の地位は取締役の地位に基づくものであるため、取締役の任期が満了した場合には、代表取締役の任期も満了して退任になります。

再任の手続き

再任するためには、株主総会を招集して選任の決議をして、株主総会議事録などを添付して登記の申請をしなければなりません。

株主総会の招集は、株主総会の日の2週間前までに、各株主に対して通知を発することによって行います。

2週間前という期間は公開会社を対象としたもので、非公開会社では、1週間前までに通知を発することで足ります。さらに、取締役会非設置会社においては、定款で1週間よりも短い期間とすることも可能です。

登記は法務局で手続きします。オンラインによる登記申請もできます。

株式会社は、役員の任期満了から2週間以内に、役員変更の登記をしなければなりません。登記を怠ったときは、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。

取締役の再任に関する株主総会決議が適切であっても登記を失念している場合もあります。同じ人が役員に再任された場合、役員の氏名は同じなので、役員変更の登記は必要ないと思い込んでいる人もいますが、このような場合(重任)も、役員変更の登記が必要です。

再任手続きを忘れた場合

取締役再任の手続きを忘れた場合、取締役が不在になっている状態なので、原則としては、会社の意思決定や業務執行ができないことになり、社内的対外的な混乱をまねくおそれがあります。

ただし、会社法(346条1項)では、任期満了等で退任した取締役は、後任の取締役が就任するまで、なお引き続き取締役の権利義務を有することとされています。この規定に基づいて、任期が切れているにもかかわらず後任取締役の選任手続きがされていないため、従来の取締役が取締役としての権利義務が続行している(しなければならない)状態であるときは、これを「権利義務取締役」といいます。取締役としての地位あるわけではないが、取締役としての権利と義務は有する、という存在です。

したがって、取締役不在中の法律行為がすべて無効になるというものではありませんが、登記を怠っているなどの法律違反の状態にあることは事実なので、早急に正常な状態に回復させなければなりません。

中小企業では、株主総会を開催しないまま運営しているケースも珍しくないため、登記をしていないことをあまり気にしない経営者もいます。しかし、法的に不正常な状態にしておくと思いがけない経営リスクに発展することがあります。弁護士や司法書士などの専門家に相談して、適切な手続きを確認しましょう。


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