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経理の事務

全部を修繕費として経費にできるわけではない、資本的支出についての解説

Last Updated on 2025年8月11日 by

修繕費と資本的支出は、会社が持っている建物や機械などの固定資産にかかった費用を、帳簿にどう記録するかという話です。この2つは似ていますが、税金や会社の利益計算に大きく影響するため、区別することがとても重要です。

修繕費とは?

修繕費は、固定資産を「現状維持」したり、「元の状態に戻す(原状回復)」ために使った費用です。イメージとしては、壊れたものを直したり、古くなったものを買い替えることで、買った時と同じように使えるようにする費用です。

たとえば、

  • 雨漏りする屋根を直すための修理費用
  • 車のタイヤがパンクしたので交換した費用 (同じ性能のタイヤの場合)
  • パソコンが壊れたので部品を交換して使えるようにした費用
  • 給排水設備の水漏れを修理する費用

などがあります。これらの費用は、原則として、支払った年に全額を費用(経費)として計上できます。

資本的支出とは?

一方、資本的支出は、固定資産の「価値を高める」または「使用できる期間を延ばす」ために使った費用です。単に元に戻すだけでなく、以前よりも便利になったり、長持ちするようになったりする場合がこれにあたります。

たとえば、

  • 建物の耐震補強工事を行った費用 (より頑丈になった)
  • 車のエンジンを高性能なものに交換した費用 (以前より性能が上がった)
  • エレベーターのないビルに新しくエレベーターを設置した費用 (ビルの機能が向上した)
  • 通常のガラス窓を、断熱効果の高い二重窓に取り替えた費用 (価値が向上した)

などがあります。資本的支出は、その年に全額を費用にすることはできません。固定資産の「取得価額に含めて資産として計上」し、その後、減価償却という方法で、何年かに分けて少しずつ費用として計上していきます。

修繕費と資本的支出のちがい:なぜ重要なのか?

この2つを区別することが重要なのは、税金の計算に大きく影響するからです。

  • 修繕費: 支払った年に全額経費になるので、その年の利益が減り、支払う税金が少なくなる効果があります(節税効果が高い)。
  • 資本的支出: 複数年にわたって少しずつ費用になるので、その年の税金への影響は小さいですが、将来にわたって費用を分散できます。

そのため、どちらに該当するかで、会社の税負担や財務状況の見た目が大きく変わる可能性があります。

判断に迷った時のヒント

修繕費と資本的支出の区別は、時に難しいことがあります。実務では、以下の点が判断基準になります。

  • 目的: 「現状回復」や「維持管理」が目的なら修繕費、「価値向上」や「耐用年数延長」が目的なら資本的支出。
  • 金額基準:
    • 20万円未満の支出:一般的に修繕費と認められることが多いです。
    • おおむね3年以内の周期で行われる修理・改良:これも修繕費と認められやすいです。
    • 60万円未満、または期末の資産価額の10%以下の支出:判断に迷う場合、修繕費として処理できる特例があります。
  • 例外規定: 例えば、災害で被災した固定資産の修理費用などで、修繕費か資本的支出か判断が難しい場合、特例で一定の割合を修繕費にできる規定もあります。

重要なのは、名目ではなく「実質的な内容」で判断することですが、正確な知識については、税理士や税務署に相談することをおすすめします。


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