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労働災害

労災保険の事業主証明はどう書けばよいか?

Last Updated on 2025年8月23日 by

事業主は災害の事実を証明する

労災保険の請求書には事業主が証明する欄があります。

これは、負傷・発症の日時、災害発生状況など「災害の事実」の証明するものです。ほとんどの災害では、事業主が災害の事実を確認しているはずなので、事業主は、労災保険請求書に押印しなければなりません。

事業主には、被災労働者や遺族がスムーズに給付手続きを行い給付を受けられるようにする義務があります。

しかし、従業員が言っていることが本当かどうかわからないとき、会社としてはどうすればいいでしょうか。

例えば、自分が腰を痛めたのは仕事が原因だと言って事業主証明を求めてきたとします。うなずける状況であればよいのですが、どうも疑わしいと感じることもあるかもしれません。

事例

労災の適用についての質問です。従業員が仕事中に腰を痛めたと言って病院に行き、労災給付を申請しました。現場から聞き取りしましたが、痛めた瞬間はだれも見ていないので、労働基準監督署に出す書類の事業主証明欄には、「本人はこう申し出ているが、事故を現認したものはいない」旨書きました。本人はだいぶ不満があるようで、「労災を認めないのか、監督書に訴える」と言っています。どうすればよいでしょうか。

解説

労災保険は「労働者の申請 → 事業主経由で監督署へ提出」という流れになりますが、事業主が労災認定の可否を判断するものではありません。

証明欄には「会社として把握している事実」を正直に書けば足ります。今回のように「本人の申出はこうであるが、目撃者はいない」のが事実であれば、書き方は適切です。

最終的に労災かどうかは、労働基準監督署が調査して判断します。監督署は、本人や同僚への聞き取り、病院の診断書などを総合して判断するので、会社が結論を出す必要はありません。

従業員に対しては、「会社は否定しているわけではない」「労災に該当するかどうかは監督署が調査して決める」「会社は事実関係を正直に記載して提出している」ということを丁寧に説明すればよいでしょう。労働基準監督署に訴えるという部分は聞き流してよいでしょう。

あいまいなまま証明するリスク

誰も見ていない、会社として確認できない事項まで、あったように書いてしまうと、後日損害賠償を求められたとき、会社自身が労災の手続書類の中で「腰痛は会社の作業が原因で発生しました」と証明していることになるので、反論して争うことが難しくなります。

労災の申請がとおれば会社が訴えられることはないだろうと、安易に考えるのも間違いです。労災の受給と従業員からの会社に対する損害賠償請求は全くの別問題です。

虚偽を記載しない

会社が事実を確認できないケースを説明しましたが、事業主の側で労働者に同情して、できるだけ労災認定をとってやろうという気持ちになることがあります。しかし、従業員のためであっても事実を曲げてはいけません。虚偽の記載は法違反です。

さらに、休業補償を多めにとってやろうと、実際の休み以上の日数を記載したものを証明した場合は詐欺の共犯となります。同じく、絶対にやってはいけません。

意見書の提出

なお、特別の事情があるときは、次の規定により事業主の意見を提出することができます。

(事業主の意見申出)
労働者災害補償保険法施行規則第二十三条の二 事業主は、当該事業主の事業に係る業務災害、複数業務要因災害又は通勤災害に関する保険給付の請求について、所轄労働基準監督署長に意見を申し出ることができる。

事業主証明を出しにくい事情があるときは、労働基準監督署に相談のうえ、上記の意見書で対応することも考えられます。これが必要と考えられる状況にあるときは、弁護士等の専門家に相談したほうがよいでしょう。

まとめ

事実に基づいて淡々と記載します。労災かどうかは労働基準監督署が判断することなので、従業員に対して「労災ではないと思う」「君の申し出には疑問がある」というような主観的評価をしてはいけません。従業員と敵対することなく、「監督署が判断することなので、会社は把握している事実しか書けない」と事情を説明しましょう。

労災認定は労働基準監督署が行うことなので、会社は中立的に事実に基づいて協力するのが最善です。


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