Last Updated on 2023年11月25日 by 勝
仕事中のケガは労災が原則
仕事中のケガには労災を使うのが原則です。
労災保険は被災者の自己負担は原則としてありません。休業の補償も健康保険より労災保険の方が有利です。労働者のためには労働災害や通勤災害は労災保険を使わなければなりません。
とは言うものの、例えば、ちょっとした打撲などのように病院へ行っても一回で済んでしまうような軽症だと、多くの労働者は会社に労災だと申告しにくいと感じるものです。
また、こうした場合には、上司も本人から言ってこないことに乗じてそのまま流してしまいがちです。
ですが、ケガの大小にかかわらず、仕事中のケガは労災にするのが原則です。
労災にしないように指導したり、暗黙のうちにそのように仕向けることは違法です。あとでそれが原因でトラブルに発展すれば相当面倒なことになります。
ですから、労働者が遠慮して労災の適用を躊躇したとしても、会社としては「それでは会社が困る、きちんと申告しなさいという」のが本来の姿です。管理職にもそのように指導しておきましょう。確かに事故によって労災保険料が上がるリスクもありますが、労災を隠して、後に発覚するリスクのほうがはるかに甚大です。
また、本人が労災を使わない場合も、休業4日以上になる労働災害であれば、会社には労災事故の発生を労働基準監督署長に報告する義務があります。
損害賠償のリスク
後日、なかなかなおらなかったり、治療費がかさんだりして、従業員の気が変わるリスクがあります。後になって従業員から労災について損害賠償請求をされた場合は、賠償額が高額になります。
労災申請をしていれば、労災から支給された治療費等は賠償の対象にはなりません。しかし、労災申請をしていない場合は、本来、労災から支給されるはずの部分も含めて賠償請求されることになるからです。
従業員の方は、自分が労災を使わないと主張していたのだとしても、会社に対して、安全配慮義務違反を理由とする損害賠償請求をすることができます。
健康保険を使用するリスク
健康保険は私傷病に対して給付されるものであって、仕事中のケガなどには使えません。使うことは禁じられているのです。健康保険から不当に給付を受けたことになります。
労災の給付を申請しないで、業務災害を健康保険で治療するのは健康保険法に違法します。100%自費で診療を受けなければならないことを説明しましょう。また、後日のためにそうした説得の経緯を詳細に記録しておきましょう。
健康保険証で受診してしまったら
一旦健康保険で治療を受けてしまっても、病院窓口に事実関係を説明して労災保険に切り替えてもらいましょう。
ただし、事務手続きが進んでしまっているなどで、切り替えが間に合わないことがあります。その場合は、その時点までの医療費の全額を自己負担したうえで、労災保険から戻してもらうことになります。
病院窓口に業務災害または通勤災害である旨を申し出る
↓
保険者(全国健康保険協会など)へ「負傷原因報告書」を提出する
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保険者(全国健康保険協会など)から医療費返納の通知と納付書が届く
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指定の方法で返納金を支払う
(つまり、健康保険が使えないのに使ってしまったため返金が必要なのです)
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返納金の領収書と病院に支払った窓口一部負担金の領収書を添えて、労働基準監督署へ医療費を請求する。
このように結構大変なので、業務災害や通勤災害のときは最初から労災保険で治療を始めましょう。従業員から問い合わせがあったときは迷うことなく労災を指定しましょう。
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