派遣労働者の苦情や相談の窓口は?

採用

派遣労働者に対応する相談窓口や苦情処理の仕組みは、主に派遣元事業主(派遣会社)、派遣先(就業先企業)、そして行政に用意されています。

派遣元事業主(派遣会社)の義務

派遣元事業主には、派遣労働者からの苦情・相談に適切に対応するための体制を整えることが義務付けられています(労働者派遣法第30条の5)。

項目内容
苦情の申出先派遣労働者からの苦情の申出を受ける者(窓口担当者または部署)をあらかじめ明確に定めておく必要があります。
苦情処理体制苦情が寄せられた際に、事実関係の調査、派遣先との連携、解決策の検討、最終的な判断、そして結果の通知に至るまでの一連の手順(フロー)を定めた苦情処理体制を整備しなければなりません。
派遣労働者への周知苦情処理体制を整備しただけでは不十分であり、派遣労働者が実際に利用できるようにするため、以下の事項を周知することが義務付けられています。
周知すべき事項
・苦情の申出先となっている担当者の氏名または部署の名称
・苦情を処理する方法や手順の概要
・その他、苦情の適切な処理に必要な事項
周知方法
これらの事項を記載した書面の交付、または電子メールや社内イントラネットなどを利用した適切な方法により、派遣労働者に周知しなければなりません。

苦情処理の手順(フロー)の策定

苦情が寄せられた際に、組織としてどのように対応し解決に向かうか、標準的な手順を定めておく必要があります。

ステップ内容
受付・記録申出を受けたら、申出日、内容、申出人の希望などを正確に記録します。
事実関係の調査申出内容に基づき、派遣労働者本人、派遣先の関係者、関連資料などから迅速かつ客観的に事実関係を確認します。派遣先の協力が必要な場合は、派遣元から派遣先へ正式に協力要請を行います。
解決策の検討・実施調査結果に基づき、法令や契約に照らして解決策を検討します。派遣先との調整が必要であれば実施し、合意された解決策を実行します。
結果の通知苦情を申し出た派遣労働者に対し、調査結果と講じた措置の内容を明確かつ速やかに伝えます。
記録の保管苦情の受付から解決に至るまでの一連の記録(苦情内容、調査結果、措置内容、解決日など)を適切に保管します。

適切な処理手続きの実施と保護措置

体制が整備された上で、実際に苦情が発生した際には、以下の原則に従って手続きを実施することが求められます。

迅速かつ適切な対応

派遣元は、派遣労働者からの苦情の申出があった場合、迅速に事実関係を調査し、苦情の内容に応じて適切に対応し、解決に努める義務があります。解決が困難な場合は、必要に応じて派遣先にも協力を求め(法第40条の2)、連携して対応します。

プライバシー(秘密)の保護

苦情の内容や、申出を行った派遣労働者の氏名など、苦情処理を通じて知り得た個人情報や秘密については、厳正に保護しなければなりません。これらの情報を苦情処理以外の目的で利用したり、不必要に漏洩したりすることは禁止されています。

不利益取扱いの禁止

派遣労働者が苦情の申出をしたこと、または苦情処理のための調査に協力したことを理由として、解雇やその他の不利益な取扱い(降格、減給、契約更新の拒否など)をすることは一切禁止されています(労働者派遣法第49条の3)。

これらの体制と手続きを通じて、派遣元事業主は、派遣労働者が抱える問題や不満を早期に把握・解決し、安心して働ける環境を確保する責任を負っています。

派遣先(就業先企業)の義務・配慮

派遣先企業にも、派遣労働者が安心して就業できるようにするための義務や配慮が求められています(労働者派遣法第40条、第40条の2)。

項目内容
苦情処理への協力派遣先は、派遣元事業主が行う苦情処理に必要な協力をしなければなりません。
セクハラ・パワハラ等派遣先は、派遣労働者に対するセクシュアルハラスメント、パワーハラスメント、妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントの防止措置を講じなければなりません。
教育訓練・福利厚生派遣先の労働者と同様の教育訓練の実施や、食堂・休憩室・更衣室などの福利厚生施設の利用機会の提供についても配慮・義務があり、これらに関する相談や不満も苦情処理の対象となります。

派遣先が行うべき苦情処理への協力は、主に派遣元の事実調査と解決措置の実施を支援するものです。

苦情の原因・事実関係に関する情報提供

派遣元が苦情の申出を受け、事実関係の調査を行う際、派遣先は以下の情報提供に協力する必要があります。

関連情報の提供: 苦情の原因となったとされる事実や状況について、派遣先が把握している情報を提供します。

例: ハラスメントの申告があった場合、その日時、場所、関与した人物に関する情報や、目撃者(派遣先社員)からの聞き取り結果など。

関連資料の提供: 苦情に関係する可能性がある、派遣先の管理下にある書類や記録(タイムカード、業務指示書、メールの記録など)の提供に協力します。

関係者への聞き取りへの協力: 派遣先の社員や管理職が、派遣元による事実調査のための聞き取りに応じるように協力します。

解決措置の実施への協力

事実関係が確認され、派遣元が解決策を講じることになった場合、派遣先はその解決措置の実行に協力する必要があります。

環境改善措置: 苦情が職場環境に起因する場合(人間関係、ハラスメント、過重労働など)、派遣先は派遣元の求めに応じて、その環境改善措置を講じることに協力します。

例: ハラスメントを行った派遣先社員への注意・指導、派遣労働者の配置変更の受け入れ、業務量の是正など。

再発防止措置: 苦情が解決した後も、同様の問題が再発しないよう、派遣元と連携して予防措置(例:派遣先社員への研修実施、周知徹底など)を講じることに協力します。

行政の相談窓口

派遣元・派遣先での解決が難しい場合や、法令違反の疑いがある場合は、公的な機関に相談することができます。

相談窓口役割・機能
都道府県労働局・労働基準監督署労働基準法や労働者派遣法などの法令違反に関する相談や情報提供を受け付けます。法令違反が認められた場合は、行政指導や是正勧告が行われることがあります。
総合労働相談コーナー労働問題全般(解雇、賃金不払い、ハラスメント、いじめなど)について、無料で相談に応じる窓口です。解決のための情報提供や、行政による助言・指導、あっせん(紛争解決手続)の案内を行っています。

派遣労働者は、職場の人間関係、労働条件、待遇(賃金・福利厚生)、ハラスメントなど、さまざまな問題について、まず派遣元の担当者に相談することが一般的ですが、問題に応じてこれらの窓口を利用することができます。