評価者研修について

Last Updated on 2025年9月13日 by

評価者を対象に研修を実施する

評価が公正に適切に行われるには、評価を担当する者が、評価制度についての正しい知識とスキルを持っていなければなりません。

評価は上司が行いますが、上司の立場にいる人は、通常、担当の分野については能力とスキルを持っていますが、評価者に求められる能力やスキルを兼ね備えているとは限りません。

評価はルールに基づいて実施するもので、そのルールは会社によって若干の違いがあります。したがって、評価者は自社の評価制度についてきちんと理解することが必要です。

また、人事評価には、評価者によって違いが出てしまう「評価エラー」と呼ばれるものがあります。 この評価エラーの内容を理解してもらう必要があります。

こうしたことは、資料の配布等で済ませるべきではなく、一定の時間をとってしっかりと勉強してもらうために、研修として実施することが必要です。

評価される方からすれば、自分を評価する上司が、評価制度についての正しい知識やスキルをもっていなければ、上司に対して不信感を持つことになり、それは評価制度そのものに対する否定的な感情につながるおそれがあります。

評価者研修の実施時期

評価者研修は、できれば、特別な変更が無くても定期的に実施することが望ましいでしょう。見直しをしないで評価を続けていくと評価に対する考え方がマンネリ化し、自己流になっていく傾向があります。

特に、管理職昇格時と評価制度の内容を変更したときは必須です。

評価者研修の内容

研修内容は何を主目的にするかで異なります。

初めて評価者になる人に対する研修では、評価制度そのものについての知識に時間をかけます。

すでに評価を経験している人に対しては、評価をやってみて苦労したことなどについて事前に聞き取り調査を実施し(調査は全員にやる必要はありません)、その調査結果を研修プログラムに組み込むと良いでしょう。

一般的に現場のニーズが強いのが面談スキルについての研修です。部下に確定した評価結果をどのように伝えるか、ただ伝えるだけでなく、どのように話すことでモチベーションを高められるか多くの面談者は悩んでいます。

また、目標管理制度を導入している場合には、適切な目標を設定するための知識やスキルを習得させることが必要です。

評価者研修レジュメ案:評価者の心構え

これは「評価者の心構え」のレジュメ案です。初めて評価者となる方が、公正かつ効果的な評価を行うための土台を築くことを目指した内容を提案します。


1. 評価の目的と評価者の役割

人事考課の目的は、単に優劣をつけることではありません。個人の成長を促し、組織全体の目標達成に貢献することにあります。評価者には、この目的を深く理解し、その実現に向けた重要な役割が求められます。

  • 公正さの担保:個人の主観や好き嫌いを排除し、定められた基準に基づいて評価する。
  • コミュニケーションの促進:評価面談を通じて部下の強みや課題を共有し、成長を支援する。
  • 組織目標との連動:個々の評価が組織全体の目標達成にどのように繋がるかを明確にする。

2. 評価者が陥りやすいバイアスと対策

人間は誰しも無意識の偏見(バイアス)を持つものです。評価者はこれらのバイアスを自覚し、意図的に排除する努力が必要です。

  • ハロー効果:特定の目立つ長所や短所に引きずられ、他の評価項目も同様に評価してしまう傾向。
    • 対策:評価項目ごとに個別に事実に基づいて評価し、総合評価は最後に判断する。
  • 中心化傾向:評価が甘くも厳しくもなく、すべて平均点に集中してしまう傾向。
    • 対策:評価基準を再確認し、個々のパフォーマンスの差を明確に認識する。
  • 寛大化傾向・厳格化傾向:部下への遠慮から甘い評価になったり、逆に厳しすぎる評価になったりする傾向。
    • 対策:評価の事実を裏付ける具体的なエピソードやデータを用意する。
  • 近接効果・初頭効果:評価期間の直前(近接効果)や最初(初頭効果)の出来事が強く印象に残り、全体評価に影響を与える傾向。
    • 対策:日頃から継続的に部下の業務遂行状況を記録し、客観的な事実に基づいた評価を行う。

3. 効果的な評価面談の準備と心構え

評価面談は、評価結果を伝える場であると同時に、部下の成長を促すための重要な対話の場です。

  • 準備:評価の根拠となる事実(データ、具体的な行動例など)を準備し、自身の評価に自信を持つ。
  • 対話の姿勢
    • 一方的に評価を伝えるのではなく、まず部下自身の自己評価を聞くことから始める。
    • 評価項目ごとに**「なぜそう評価したか」**を具体的に説明し、納得感を醸成する。
    • 改善点や課題については、**「なぜそれが重要か」「どうすれば改善できるか」**を一緒に考える。
  • 面談後のフォロー:面談で話し合った内容を振り返り、今後の成長に向けた具体的な行動計画を共有し、継続的に支援する。

初めての評価は、戸惑うことも多いかと思います。しかし、この機会を通じて部下との信頼関係を築き、より良いチームを創り上げていく重要なステップだと捉えれば、きっとやりがいを感じられるはずです。

評価者として、今後どのような点に特に注意を払いたいとお考えですか?


会社事務入門評価制度のあらまし>このページ