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労働基準法

労働者とは

Last Updated on 2025年8月17日 by

法律の定義

労働基準法

労働基準法は「労働者」を次のように定義しています。

労働基準法第9条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

「使用されていること」「賃金を支払われる」ことが労働者の要件です。

使用されるとは、労働者が使用者の指揮命令に服して労働することと解されています。

ただし、事業又は事務所に使用されて賃金を支払われていても、同居の親族のみを使用する事業と、家事使用人には労働基準法を適用されないと定めています。

賃金とは、名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が支払うすべてのものを言います(労働基準法第11条)。したがって、ボランティアなど無償で労働を提供する者は労働者に該当しません。

労働基準法第116条
② この法律は、同居の親族のみを使用する事業及び家事使用人については、適用しない。

同居の親族と家事使用人については次のページで解説しています。

関連記事:同居の親族、家事使用人の扱い

労働安全衛生法

労働安全衛生法第2条 2 労働者 労働基準法第九条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)をいう。

労働基準法を引用して規定しています。労働基準法と同様ということです。

労働契約法

労働契約法第二条 この法律において「労働者」とは、使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者をいう。

労働契約法の定義は、少し表現が違いますが、労働基準法と同じだとされています。

労働組合法

労働組合法第3条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

労働組合法の定義は、労働基準法及び労働契約法上の労働者の範囲をやや広げた概念だとされています。

労働基準法上の労働者にはあたらないとされているプロ野球選手や家内労働者等も労働組合法では労働者にあたります。

また、「賃金を支払われる」という文言が無いので、退職した失業者であっても労働者に含まれます。

フリーランスでも労働者?

最近話題になっているのは、雇用契約でない働き方(フリーランス、ギグワーク、個人事業主扱いなど)でも、実態が使用関係に近い場合には「労働者」と判断される例が増えていることです。

たとえば裁判例では、名称は「業務委託契約」でも、勤務時間・場所を会社が指定していた、業務内容や方法を細かく指揮命令していた、という場合に法律上の労働者と認められることがありました。

これは、法律の定義が「変更された」のではなく、解釈・適用の幅が実態に合わせて広がっているというのが実際の状況です。

つまり、労務提供の対価として報酬を得ていることがあれば、契約形式が請負・委任であっても「労働者」と判断されることがあるということになります。その場合、契約書の内容を形式的に判断するのでなく、実態で判断するのが特徴です。

通常、会社等に雇用されて働いている従業員は、ほぼ労働者で間違いありませんが、会社からの注文を受けてフリーランスや業務委託という形で働いている人のなかには、労働者の定義にあてはまるかどうか微妙な者もいて、争いになることがあります。

労働者性があると認められれば

実態が雇用に近いので労働者、と判断された場合、使用者は、その労働者について使用者としての責任が生じます。

労働基準法・労災保険法・健康保険法・厚生年金保険法などのそれぞれの法律で、定義や扱いが微妙に違うため、注意が必要ですが、基本的には適用されることになります。

労働時間・割増賃金・有給休暇など、労働基準法の保護を受けられるようになります。

労災保険法の給付対象にもなります。

定期健康診断を会社費用で受けさせるよう要求できるようになります。

健康保険法・厚生年金保険法では、「適用事業所に使用される者」と規定されており、こちらも実態で判断されることになります。実態が雇用と認められれば、会社はその人を社会保険に加入させる義務を負うことになります。その場合は、保険料を事業主と労働者が折半します。

これが、労働者ではなく単なる取引先だということであれば、労働基準法の補償義務はありません。

「労働者性あり」と認定された瞬間から会社の各種義務が生じます。名目上「委託」「業務委任」でも、実態で労働者なら「保護のフルセット」を要求できるということになります。会社側からすると、形式だけ委託にして安心しているのはリスクが大きいのです。


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