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労働基準法

貯蓄金管理について

Last Updated on 2023年4月12日 by

強制貯金の禁止

使用者が労働者に対して貯金を強制してはいけません。六箇月以下の懲役又は三十万円以下の罰金という罰則が規定されています。

(強制貯金)
第十八条 使用者は、労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をしてはならない。

委託による貯蓄金管理

貯金を強制することは禁止されていますが、労働者の委託、つまり労働者の希望に応じて、労働者の貯蓄金を管理する、いわゆる「社内預金」をすることは一定の規制のもとに認められています。

労使協定

委託による貯蓄金管理を行うには、労使協定が必要です。

② 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理しようとする場合においては、当該事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定をし、これを行政官庁に届け出なければならない。

労働基準法施行規則第5条の2に、労使協定に記載すべき事項が定められています。
一 預金者の範囲
二 預金者一人当たりの預金額の限度
三 預金の利率及び利子の計算方法
四 預金の受入れ及び払いもどしの手続
五 預金の保全の方法

労使協定は、当該事業場の所在地を管轄する労働基準監督署長に届出しなければなりません。

労使協定なしに社内預金を実施していると、禁止されている強制預金とみなされる可能性があります。大変危険です。

規程の作成と周知

貯蓄金の管理についての規程を定めて、周知させなければなりません。

③ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合においては、貯蓄金の管理に関する規程を定め、これを労働者に周知させるため作業場に備え付ける等の措置をとらなければならない。

利息の付与

受け入れた預金には利息を付けなければなりません。最低利率が決められています。

④ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、貯蓄金の管理が労働者の預金の受入であるときは、利子をつけなければならない。この場合において、その利子が、金融機関の受け入れる預金の利率を考慮して厚生労働省令で定める利率による利子を下るときは、その厚生労働省令で定める利率による利子をつけたものとみなす。

払い出し

⑤ 使用者は、労働者の貯蓄金をその委託を受けて管理する場合において、労働者がその返還を請求したときは、遅滞なく、これを返還しなければならない。

いつでも払い出しに応じなければなりません。

払い出しを担保するために預金の保全措置を実施しなければなりません。具体的には、毎年3月31日現在の受入預金額の全額について、その後の1年間を通じて、銀行保証などの保全措置を講ずることが義務付けられています(賃金の支払の確保等に関する法律第3条)

いつでも払い出しに応じなければならず、魅力のある利息を付けなければならず、事務的な負担も大きいので、新規に社内預金の制度を実施する意味はほとんどありません。

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