Last Updated on 2025年8月15日 by 勝
はい、法律上は契約期間の途中で辞めることができないことになっているのですが、現場感覚としては割にいつでも辞めることができます。順を追って説明します。
法律上の原則
1か月とか、1年のように、期間を定めて雇用することを有期労働契約といいます。
会社は、パート、アルバイトだからと簡単に雇用の打ち切りができません。期間途中での解雇は、期間終了を待つことができないやむを得ない事由があるときに限られます。
同様に、パート、アルバイトの方も、契約期間内であれば簡単に雇用関係を打ち切ることができません。
民法628条では、有期契約は「やむを得ない事由」があるときは契約を解除できるとさだめています。つまり、「やむを得ない事由」がなければ途中解約できないということになります。
(やむを得ない事由による雇用の解除)民法第628条
当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
この「やむを得ない事由」は、
健康悪化や介護、結婚や転居による通勤困難、ハラスメント被害
などが典型ですが、「他にいい仕事が見つかった」「人間関係が合わない」などは原則として該当しません。
実際にはパート・アルバイトが途中で辞めている
次のような理由によります。
会社が訴えない
途中で辞められて困ることがあったとしても、会社が裁判で争うには、コスト・時間に見合わないからです。
やむを得ない事由を主張されやすい
健康上の理由や家庭事情を理由にされると、裁判で覆すのは困難です。
労働者に損害賠償義務があっても立証困難
損害があったとしても、損害を具体的に計算・証明するのは困難です。
したがって、使用者がパートやアルバイトに損害賠償を求めて提訴するケースは非常に稀だと思われます。
実務上の対応
労働者側が「辞める」と言えば、使用者側が引き止めるのは難しいのが現実です。むしろ、厳しい引き止めをすれば、強要や脅迫にとられるリスクが有り、問題が複雑化する可能性があります。
法律上は途中解約できないとしても、実態を受け入れて、契約書やパート就業規則に「途中退職の場合は〇日前までに申し出ること」と書いて、計画的な人員手配をするのが現実的です。
ただし、この「〇日前」も強制力が弱いので、最終的には「円満退職を目指す交渉」が中心になります。
一般の社員の場合
なお、原則として解約できない決まりは「有期契約労働者」に関するもので、期限の定めのない労働者(いわゆる正社員等)からの退職申し入れは、民法の規定により14日前までに申し入れることで雇用契約は終了します。ただし、就業規則ではもう少し長い予告期間を定めているのが一般的です。
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