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パート・有期雇用

無期労働契約への転換の例外

Last Updated on 2023年9月15日 by

無期労働契約への転換

有期労働契約が5年を超えて反復更新されたときには、労働者の請求によって無期労働契約に転換できます。

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ただし、「定年に達した後引き続いて雇用される有期雇用労働者」と「専門的知識等を有する有期雇用労働者」については、適切な労務管理を実施するための計画を策定し、あらかじめ都道府県労働局長の認定を受けることで、上記無期転換ルールが適用されません。

継続雇用の高齢者の特例

60歳定年後、再雇用によって有期の雇用契約を繰り返し、65歳に達した後、さらに雇用を継続させた場合、労働者から有期雇用から無期雇用への転換の申し出があれば、原則的には会社は承諾せざるを得ません。この場合、すでに定年は過ぎているため、本人が退職を申し出ない限り、いつまでも労働契約が継続することになります。

適用条件

そこで、定年後に有期労働契約で継続雇用される高齢者について、労働局長の認定を受けると、無期転換ルールが適用されない特例の規定があります。

特例の適用を受ければ、定年後の継続雇用期間は通算契約期間に算入されないので、何年継続雇用しても無期雇用転換申込権が発生しません。

手続き

継続雇用の高齢者について、有期雇用特別措置法による特例の適用を希望する事業主は、「第二種計画認定・変更申請書」を作成し、都道府県労働局(労働基準部監督課)に提出し、計画が適当である旨の認定を受ける必要があります。

無期転換申込権の行使があった後にこの特例を適用することはできません。事前の認定申請が必要なことに注意してください。

特例の対象にならない場合

この特例は、正社員等の無期労働契約の労働者が定年に達した後、同一の使用者に引き続き雇用される有期労働契約の労働者が対象です。

したがって、他の会社等で退職(定年退職含む)した後、有期労働契約で新たに雇用された 労働者や、同一の使用者との間で、以前から有期労働契約で働いている労働者は本特例の対象ではないので、5年で無期転換申込権が発生します。

高度専門職の特例

通常は、同一の使用者との有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合に無期転換申込権が発生しますが、高度専門職である有期雇用労働者を一定の条件を満たす労働契約で雇用するときは、都道府県労働局長の認定を受けることで無期転換申込権の発生が猶予される特例があります。

下記の要件を満たす高度専門職の労働者は、高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(特定有期業務。以下「プロジェクト」といいます。)に従事する有期雇用労働者(高度専門職)については、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。

ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は10年です。

高度専門職の範囲

次のいずれかにあてはまる方が該当します。

① 博士の学位を有する者
② 公認会計士、医師、歯科医師、獣医師、弁護士、一級建築士、税理士、薬剤師、社会保険労務士、不動産鑑定士、技術士または弁理士
③ ITストラテジスト、システムアナリスト、アクチュアリーの資格試験に合格している者
④ 特許発明の発明者、登録意匠の創作者、登録品種の育成者
⑤ 大学卒で5年、短大・高専卒で6年、高卒で7年以上の実務経験を有する農林水産業・鉱工業・機械・電気・建築・土木の技術者、システムエンジニアまたはデザイナー
⑥ システムエンジニアとしての実務経験5年以上を有するシステムコンサルタント
⑦ 国、地方公共団体、一般社団法人または一般財団法人その他これらに準ずるものによって知識等が優れたものであると認定され、上記①から⑥までに掲げる者に準ずるものとして都道府県労働基準局長が認める者

適用条件

□ 対象労働者は高収入(年収1,075万円以上)である
□ 対象労働者は高度専門職に該当している
□ その高度の専門的知識等を必要とし、5年を超える一定の期間内に完了する業務(プロジェクト)に従事に従事させる。この場合、毎年度行われる業務など、恒常的に継続する業務は含まれません。

都道府県労働局長の認定を受けた場合、上記に該当する高度専門職の有期雇用労働者は、そのプロジェクトに従事している期間は、無期転換申込権が発生しません。ただし、無期転換申込権が発生しない期間の上限は、10年です。(つまり、6年のプロジェクトであれば、6年間は無期転換申込権が発生しません。)

プロジェクトに従事しなくなったり、年収要件を満たさなくなった場合や、計画の認定が取り消された場合は、その時点で通常の無期転換ルールが適用され、通算契約期間が5年を超えていれば、無期転換申込権が発生します。

手続き

高度専門職について、有期雇用特別措置法による特例の適用を希望する事業主は、「第一種計画認定・変更申請書」を作成し、都道府県労働局(労働基準部監督課)に提出し、計画が適当である旨の認定を受ける必要があります。

1.特例の対象労働者に関して、能力が有効に発揮されるような雇用管理に関する措置についての計画を作成する。
2.作成した計画を、本社・本店を管轄する都道府県労働局に提出する。労働基準監督署経由で提出することもできます。
3.都道府県労働局は、事業主から申請された計画が適切であれば認定する。

認定を受けた事業主に雇用される特例の対象労働者(高度専門職と継続雇用の高齢者)について、無期転換ルールに関する特例が適用有期労働契約の締結・更新の際に、無期転換ルールに関する特例が適用されていること対象労働者に明示する必要があります。

研究者、教員等の特例

5年ではなく10年

大学等及び研究開発法人の研究者、教員等については、無期転換申込権発生までの期間が5年ではなく10年とする特例が設けられています。

「科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(科技イノベ活性化法)」によるものです。

「福島復興再生特別措置法の一部を改正する法律」により「福島国際研究教育機構」の研究者等についても、研究開発法人等の研究者等と同様に扱われます。

ただし、大学で有期労働契約を締結している教員に例外なく10年ルールが適用されるわけではありません。条件が決められおり、条件に満たなければ5年ルールの適用になります。

2023年4月以降

無期転換ルールが施行されて10年になる2023年4月以降は、無期転換の申込み対象となる方が出てきます。

2013年4月1日以降に開始した有期労働契約の期間をすべて合計して10年を超え、使用者がすべて同じで、契約の更新回数が1回以上ある場合が対象になります。

ただし、契約の間に一定のクーリング期間(6か月以上)がある場合には、クーリング期間前の契約が通算されない場合があります。


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