Last Updated on 2022年2月27日 by 勝
民法では2週間
退職はいつまでに申し入れる必要があるでしょうか。期間の定めのない雇用契約、一般的に定年制が適用される正社員のことですが、この場合は、定年がくるまで会社に縛り付けられるというわけではなく、会社も社員も、雇用契約の途中解約を申し入れることができます。
(期間の定めのない雇用の解約の申入れ)
民法第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができる。この場合において、雇用は、解約の申入れの日から二週間を経過することによって終了する。
会社の方からする途中解約は、解雇ということになり、労働契約法等の制約があります。
社員の方からの解除は、民法の規定により、解約の申入れの日から2週間を経過することによって労働契約は終了、つまり、辞めることができます。
また、民法には、給料計算期間による例外があって、たとえば、毎月20日が給料計算の締め切り日の場合、給料計算期間の前半分である5日までに申し入れをしなければなりません。
もし6日を過ぎて退職の申し入れをすると、次の給料期間が始まる21日から2週間後に雇用契約が解除になります。つまり、2週間から1ヶ月です。
ということで、いつでも辞めることができるというのではなく、2週間ないし1ヶ月の予告期間が必要だということになります。
いきなり明日からきませんという退職はできないということです。
就業規則との関係
さて、民法では2週間だとしても、就業規則に1ヶ月前とか、2ヶ月前と書かれていたらどうでしょうか。
裁判例などでは、合理的な理由があれば、就業規則に民法より長い期間を定めることは問題ないとされています。
2週間では引き継ぎ等の時間がとれないなど、業務の内容等によって、いろいろ合理的な理由があると思いますが、会社には、会社の運営上必要と思われる定めを合理的な範囲で定める権利があります。
ただし、あまりに長い定めは無効となるでしょう。
就業規則に退職の申し入れ時期を決めるときは、1ヶ月間であればまず問題ないと思われますが、それ以上の日数を決めたいときは、なぜそのような期間が必要なのか、合理的な説明ができるか検討しなければなりません。漠然と長い方が安心だということでは通りません。
完全月給制の場合
民法627条2項は、「期間によって報酬を定めた場合は」という規定があります。
2 期間によって報酬を定めた場合には、使用者からの解約の申入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申入れは、当期の前半にしなければならない。
解約の申し入れは、次期以後についてすることができる。ただし、その解約の申し入れは、当期の前半にしなければならない。となっています。
給料が1ヶ月20万円と決まっても、休めば引かれることがあります。これは「期間によって定めた報酬」ではありません。期間によって定めた報酬というのは、例えば、1ヶ月20万円と定めたら、何日休んでも1ヶ月20万円もらえる、いわゆる完全月給制です。(これに対し、休めばその分引かれる月給制を、日給月給制といいます。)
さて、この場合は、給与計算期間の前半に退職の意思表示をした場合は、その給与計算の終了日をもって労働契約が終了し、給与計算期間の後半に退職の意思表示をした場合は、次の給与計算の終了日をもって労働契約が終了することとになります。つまり、2週間より長くなり、申し入れ時期によって、半月から1か月半の間で決まります。
年俸制の場合
民法627条3項に、「6か月以上の期間によって報酬を定めた場合」には、前項の解約の申し入れは3か月前にしなければならない。と規定されています。年俸制がこれに該当します。
3 六箇月以上の期間によって報酬を定めた場合には、前項の解約の申入れは、三箇月前にしなければならない。
労働基準法では、賃金は毎月1回以上の支払いをしなければならないと定めています。そうしないと労働基準法違反になります。そこで、相手が労働者であれば、年俸制で契約したとしても、支払いは例えば12分割して払わなければならないのです。
その結果、前述の「月という期間によって報酬を定めた」と同じになります。
有期契約の場合
有期労働契約での途中解約は「やむを得ない」場合にしか認められないのが原則です。
(やむを得ない事由による雇用の解除)
民法第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。この場合において、その事由が当事者の一方の過失によって生じたものであるときは、相手方に対して損害賠償の責任を負う。
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