Last Updated on 2025年8月21日 by 勝
機械メーカーの営業課長です。従来からの慣習で、ときどき取引先との接待会食があります。相手先会社を担当している営業担当が、会食には参加したくないと言ってきました。たしかに取引先の役員は少々癖のある人です。しかし、直接の担当者が出席しないのは角がたちます。こうした場合に、業務命令だと言えばパワハラに該当するでしょうか?
取引先との会食について、営業担当者の方が参加を拒否されている状況ですね。業務命令と伝えた場合に、パワーハラスメントに該当するかどうかという点について解説します。
パワーハラスメントの定義
まず、パワーハラスメントに該当するかどうかの判断は、その行為が業務上必要かつ相当な範囲を超えているかどうかによります。パワーハラスメントは一般的に以下の3つの要素で定義されます。
- 優越的な関係に基づいて(上司と部下の関係など)
- 業務の適正な範囲を超えて
- 身体的・精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること
今回のケースをこれに照らし合わせて考えてみましょう。
1. 優越的な関係
営業課長であるあなたと、営業担当者という関係は、まさにこの「優越的な関係」に該当します。
2. 業務の適正な範囲
接待会食が、担当業務の適正な範囲に含まれるかが重要なポイントです。
一般的に、取引先との関係構築や維持を目的とした接待は、営業職の業務の一環として広く認識されています。また、この取引先の担当者がその会食に出席する必要があるという課長の判断は、業務上の合理性があると考えられます。したがって、単に「業務命令だ」と伝えるだけでは、直ちにパワーハラスメントには該当しない可能性が高いと言えます。
しかし、もしその取引先の役員が、担当者にセクハラや度を越えた嫌がらせをするといった事実があり、部下がそれに強い精神的苦痛を感じているにもかかわらず、参加を強制すれば、「身体的・精神的な苦痛を与えること、または就業環境を害すること」に該当し、ひいては「業務の適正な範囲を超えている」と判断される可能性が出てきます。
部下と話す際に配慮すべきこと
業務命令として参加を求めるにしても、一方的に押し付けるのではなく、なぜ参加が必要なのか、部下がなぜ参加したくないのかを丁寧に話し合うことが重要です。
- 部下の意見を傾聴する: なぜ参加したくないのか、具体的な理由を尋ねてみましょう。単に「気が進まない」「飲み会の雰囲気が嫌」なのか、それとも過去に何か嫌な経験があったのか、取引先の役員からハラスメントを受けたことがあるのかなど、部下が抱えている懸念をまず理解することが大切です。
- 会食の目的を明確にする: 「なぜあなたにこの会食に出席してほしいのか」を明確に伝えましょう。例えば、「この会食は、今後の取引を円滑に進める上で重要な機会であり、担当者である君が直接関係を築くことが重要なんだ」といったように、業務上の重要性を具体的に説明します。
- 課長としてサポートを約束する: 部下の懸念に対して、課長としてどのようにサポートできるかを具体的に示しましょう。例えば、あなたも同席してサポートすることや、会食中の振る舞いについて事前に打ち合わせをするなど、部下の不安を軽減する策を一緒に考える姿勢を見せることが大切です。
結論として、「業務命令だ」と単に伝えるだけではパワーハラスメントに直結するわけではありませんが、より良い解決策としては、相手の心情に配慮しつつ、業務上の必要性を丁寧に説明し、不安を取り除くためのサポートを提案することが重要です。