Last Updated on 2023年4月12日 by 勝
パワハラとは
2020年6月1日に施行された改正労働施策総合推進法に、次のように規定されています。
第30条の2 事業主は、職場において行われる優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものによりその雇用する労働者の就業環境が害されること(以下「職場におけるパワーハラスメント」という。)のないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならない。
どのようなことがパワハラになるか、具体的な解説は次をごらんください。
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指針
次のリンクは、厚生労働省ホームページに掲載されている「職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント)」のページヘのリンクです。
以下は、指針のうち事業主が講ずるべき措置に関連する部分です。
事業主等の責務
事業者の責務
事業主は、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならないことその他職場におけるパワーハラスメントに起因する問題に対するその雇用する労働者の関心と理解を深めるとともに、当該労働者が他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うよう、研修の実施その他の必要な配慮をするほか、国の講ずる広報活動、啓発活動その他の措置に協力するように努めなければならない。
また、事業主は、自らも、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、自らの言動に注意するよう努力する。
労働者が労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うように配慮する。
労働者の責務
労働者は、パワーハラスメント問題に対する関心と理解を深め、他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)に対する言動に必要な注意を払うとともに、事業主の講ずる措置に協力するように努めなければならない。
事業主が雇用管理上講ずべき措置
事業主は、職場におけるパワーハラスメントを防止するため、雇用管理上次の措置を講じなければならない。
1.事業主の方針等の明確化及びその周知・啓発
(イ) 職場におけるパワーハラスメントの内容及び職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を明確化し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
事業主の方針等を明確化し、労働者に周知・啓発していると認められる例
□ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を規定し、当該規定と併せて、職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景を労働者に周知・啓発すること。
□ 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を記載し、配布等すること。
□ 職場におけるパワーハラスメントの内容及びその発生の原因や背景並びに職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針を労働者に対して周知・啓発するための研修、講習等を実施すること。
(ロ)職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者については、厳正に対処する旨の方針及び対処の内容を就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書に規定し、管理・監督者を含む労働者に周知・啓発すること。
対処方針を定め、労働者に周知・啓発していると認められる例
□ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において、職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者に対する懲戒規定を定め、その内容を労働者に周知・啓発すること。
□ 職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者は、現行の就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書において定められている懲戒規定の適用の対象となる旨を明確化し、これを労働者に周知・啓発すること。
2.相談(苦情を含む。以下同じ。)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、イ及びロの措置を講じなければならない。
(イ) 相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること。
相談窓口をあらかじめ定めていると認められる例
□ 相談に対応する担当者をあらかじめ定めること。
□ 相談に対応するための制度を設けること。
□ 外部の機関に相談への対応を委託すること。
(ロ)相談窓口の担当者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
また、相談窓口においては、被害を受けた労働者が萎縮するなどして相談を躊躇する例もあること等その心身の状況にも配慮しつつ、職場におけるパワーハラスメントが現実に生じている場合だけでなく、その発生のおそれがある場合や、職場におけるパワーハラスメントに該当するか否か微妙な場合であっても、広く相談に対応し、適切な対応を行うようにすること。
例えば、放置すれば就業環境を害するおそれがある場合や、労働者同士のコミュニケーションの希薄化などの職場環境の問題が原因や背景となってパワーハラスメントが生じるおそれがある場合等が考えられる。
相談窓口の担当者が適切に対応することができるようにしていると認められる例
□ 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、その内容や状況に応じて、相談窓口の担当者と人事部門とが連携を図ることができる仕組みとすること。
□ 相談窓口の担当者が相談を受けた場合、あらかじめ作成した留意点などを記載したマニュアルに基づき対応すること。
3.職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
事業主は、職場におけるパワーハラスメントに係る相談の申出があった場合において、その事案に係る事実関係の迅速かつ正確な確認及び適正な対処として、次の措置を講じなければならない。
(イ) 事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認すること。
事案に係る事実関係を迅速かつ正確に確認していると認められる例
□ 相談窓口の担当者、人事部門又は専門の委員会等が、相談者及び行為者の双方から事実関係を確認すること。その際、相談者の心身の状況にも適切に配慮すること。
また、相談者と行為者との間で事実関係に関する主張に不一致があり、事実の確認が十分にできないと認められる場合には、第三者からも事実関係を聴取する等の措置を講ずること。
事実関係を迅速かつ正確に確認しようとしたが、確認が困難な場合などにおいて、法第 30 条の6に基づく調停の申請を行うことその他中立な第三者機関に紛争処理を委ねること。
(ロ) 職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、被害者に対する配慮のための措置を適正に行うこと。
被害者に対する配慮のための措置を適正に行っていると認められる例
□ 事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪、被害者の労働条件上の不利益の回復、管理監督者又は事業場内産業保健スタッフ等による被害者のメンタルヘルス不調への相談対応等の措置を講ずること。
□ 法第 30 条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を被害者に対して講ずること。
(ハ) 職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できた場合においては、行為者に対する措置を適正に行うこと。
行為者に対する措置を適正に行っていると認められる例
□ 就業規則その他の職場における服務規律等を定めた文書における職場におけるパワーハラスメントに関する規定等に基づき、行為者に対して必要な懲戒その他の措置を講ずること。あわせて、事案の内容や状況に応じ、被害者と行為者の間の関係改善に向けての援助、被害者と行為者を引き離すための配置転換、行為者の謝罪等の措置を講ずること。
□ 法第 30 条の6に基づく調停その他中立な第三者機関の紛争解決案に従った措置を行為者に対して講ずること。
(ニ) 改めて職場におけるパワーハラスメントに関する方針を周知・啓発する等の再発防止に向けた措置を講ずること。
なお、職場におけるパワーハラスメントが生じた事実が確認できなかった場合においても、同様の措置を講ずること。
再発防止に向けた措置を講じていると認められる例
□ 職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針及び職場におけるパワーハラスメントに係る言動を行った者について厳正に対処する旨の方針を、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に改めて掲載し、配布等すること。
□ 労働者に対して職場におけるパワーハラスメントに関する意識を啓発するための研修、講習等を改めて実施すること。
4.1から3までの措置と併せて講ずべき措置
1から3までの措置を講ずるに際しては、併せてイ及びロの措置を講じなければならない。
(イ) 職場におけるパワーハラスメントに係る相談者・行為者等の情報は当該相談者・行為者等のプライバシーに属するものであることから、相談への対応又は当該パワーハラスメントに係る事後の対応に当たっては、相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講ずるとともに、その旨を労働者に対して周知すること。
相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていると認められる例
□ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために必要な事項をあらかじめマニュアルに定め、相談窓口の担当者が相談を受けた際には、当該マニュアルに基づき対応するものとすること。
□ 相談者・行為者等のプライバシーの保護のために、相談窓口の担当者に必要な研修を行うこと。
□ 相談窓口においては相談者・行為者等のプライバシーを保護するために必要な措置を講じていることを、社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に掲載し、配布等すること。
(ロ)労働者が職場におけるパワーハラスメントに関し相談をしたこと若しくは事実関係の確認等の事業主の雇用管理上講ずべき措置に協力したこと、都道府県労働局に対して相談、紛争解決の援助の求め若しくは調停の申請を行ったこと又は調停の出頭の求めに応じたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者に周知・啓発すること。
不利益な取扱いをされない旨を定め、労働者にその周知・啓発することについて措置を講じていると認められる例
□ 就業規則その他の職場における職務規律等を定めた文書において、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を規定し、労働者に周知・啓発をすること。
□ 社内報、パンフレット、社内ホームページ等広報又は啓発のための資料等に、パワーハラスメントの相談等を理由として、労働者が解雇等の不利益な取扱いをされない旨を記載し、労働者に配布等すること。
5 事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関し行うことが望ましい取組の内容
職場におけるパワーハラスメントは、セクシュアルハラスメント、妊娠、出産等に関するハラスメント、育児休業等に関するハラスメントその他のハラスメントと複合的に生じることも想定されることから、事業主は、例えば、セクシュアルハラスメント等の相談窓口と一体的に、職場におけるパワーハラスメントの相談窓口を設置し、一元的に相談に応じることのできる体制を整備することが望ましい。
一元的に相談に応じることのできる体制の例
□ 相談窓口で受け付けることのできる相談として、職場におけるパワーハラスメントのみならず、セクシュアルハラスメント等も明示すること。
□ 職場におけるパワーハラスメントの相談窓口がセクシュアルハラスメント等の相談窓口を兼ねること。
事業主は、職場におけるパワーハラスメントの原因や背景となる要因を解消するため、イ及びロの取組を行うことが望ましい。
なお、取組を行うに当たっては、労働者個人のコミュニケーション能力の向上を図ることは、職場におけるパワーハラスメントの行為者・被害者の双方になることを防止する上で重要であることや、業務上必要かつ相当な範囲で行われる適正な業務指示や指導については、職場におけるパワーハラスメントには該当せず、労働者が、こうした適正な業務指示や指導を踏まえて真摯に業務を遂行する意識を持つことも重要であることに留意することが必要。
(イ) コミュニケーションの活性化や円滑化のための取組
コミュニケーションの活性化や円滑化のために必要な取組例
□ 日常的なコミュニケーションを取るよう努めることや定期的に面談やミーティングを行うことにより、風通しの良い職場環境や互いに助け合える労働者同士の信頼関係を築き、コミュニケーションの活性化を図ること。
□ 感情をコントロールする手法についての研修、コミュニケーションスキルアップについての研修、マネジメントや指導についての研修等の実施や資料の配布等により、労働者の感情をコントロールする能力、コミュニケーションを円滑に進める能力等の向上を図ること。
(ロ)適正な業務目標の設定等の職場環境の改善のための取組
職場環境の改善のための取組例
□ 適正な業務目標の設定や適正な業務体制の整備、業務の効率化による過剰な長時間労働の是正等を通じて、労働者に肉体的・精神的負荷を強いる職場環境や組織風土を改善すること。
事業主は、4の措置を講じる際に、必要に応じて、労働者や労働組合等の参画を得つつ、アンケート調査や意見交換等を実施するなどにより、その運用状況の的確な把握や必要な見直しの検討等に努めることが重要。
6 事業主が自らの雇用する労働者以外の者に対する言動に関し行うことが望ましい取組の内容
事業主及び労働者の責務の趣旨に鑑みれば、事業主は、当該事業主が雇用する労働者が、他の労働者(他の事業主が雇用する労働者及び求職者を含む。)のみならず、個人事業主、インターンシップを行っている者等の労働者以外の者に対する言動についても必要な注意を払うよう配慮するとともに、事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)自らと労働者も、労働者以外の者に対する言動について必要な注意を払うよう努めることが望ましい。
こうした責務の趣旨も踏まえ、事業主は、4(1)イの職場におけるパワーハラスメントを行ってはならない旨の方針の明確化等を行う際に、当該事業主の雇用する労働者以外の者(他の事業主が雇用する労働者、就職活動中の学生等の求職者及び労働者以外の者)に対する言動についても、同様の方針を併せて示すことが望ましい。
7 事業主が他の事業主の雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関し行うことが望ましい取組の内容
事業主は、取引先等の他の事業主が雇用する労働者又は他の事業主(その者が法人である場合にあっては、その役員)からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為(暴行、脅迫、ひどい暴言、著しく不当な要求等)により、その雇用する労働者が就業環境を害されることのないよう、雇用管理上(1)及び(2)の取組を行うことが望ましい。また、(3)のような取組を行うことも、その雇用する労働者が被害を受けることを防止する上で有効と考えられる。
(1)相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
事業主は、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為に関する労働者からの相談に対し、その内容や状況に応じ適切かつ柔軟に対応するために必要な体制の整備として、4(2)イ及びロの例も参考にしつつ、イ及びロの取組を行うことが望ましい。
また、併せて、労働者が当該相談をしたことを理由として、解雇その他不利益な取扱いを行ってはならない旨を定め、労働者に周知・啓発することが望ましい。
(イ) 相談先(上司、職場内の担当者等)をあらかじめ定め、これを労働者に周知すること。
(ロ) イの相談を受けた者が、相談に対し、その内容や状況に応じ適切に対応できるようにすること。
(2)被害者への配慮のための取組
事業主は、相談者から事実関係を確認し、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為が認められた場合には、速やかに被害者に対する配慮のための取組を行うことが望ましい。
□ 事案の内容や状況に応じ、被害者のメンタルヘルス不調への相談対応、著しい迷惑行為を行った者に対する対応が必要な場合に、一人で対応させない等の取組を行うこと。
(3)他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為による被害を防止するための取組
(1)及び(2)の取組のほか、他の事業主が雇用する労働者等からのパワーハラスメントや顧客等からの著しい迷惑行為からその雇用する労働者が被害を受けることを防止する上では、事業主が、こうした行為への対応に関するマニュアルの作成や研修の実施等の取組を行うことも有効と考えられる。
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