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雇用均等・女性活躍

取引先との懇親会に女性を参加させないことにするのは女性差別になりませんか?

Last Updated on 2025年8月21日 by

私は入社5年の女性社員です。これまでは取引先との懇親会があれば出席してきました。自分をアピールできる機会でもあり、取引先の人をよく知ることができるので仕事に役立ってきました。自分では行けない高級な店に行けるのも楽しみでした。この度、部長が、今後はこのような懇親会に女性は参加させられないと言い出しました。社会的にいろいろ事件があったからだと言っていますが納得できません。これは女性差別ではないでしょうか?

ご自身のキャリアアップや仕事の成果につながる大切な機会を奪われるのは、納得がいかないお気持ち、よくわかります。部長が懇親会への女性社員の参加を制限しようとしているのは、おそらく理由があるのだと考えられますが、部長の対応は、法的にも人事労務の観点からも問題を含んでいる可能性が高いです。

法律上の観点

男女雇用機会均等法(第6条)では、募集・採用・配置・昇進・教育訓練などの機会について、性別を理由に差別することを禁止しています。

懇親会は一見仕事を離れた場のように見えますが、実際には取引先との関係構築や情報収集、社内評価にも関わる機会であり、実質的に「仕事の一環」と位置づけられるのが一般的です。

その機会を「女性は参加できない」と一律に制限することは、性別を理由とした差別的取扱いに該当する可能性があります。

女性だけが参加できないとなると、取引先とのネットワーク形成や情報交換の機会を奪われ、女性だけがキャリア形成や評価で不利益を受ける可能性があります。

これは「間接差別」にも当たり得る行為です。

部長の意図

トラブル回避:「社会的にいろいろ事件があった」というのは、セクハラやアルコールハラスメントといった、過去の不祥事や社会的な事件を意識して、「ハラスメント防止」や「セクハラのリスク」を念頭に置いて、女性社員をそういったリスクから守ろうとしている可能性があります。会社や自身の管理責任が問われることを恐れているのかもしれません。

配慮のつもり: 悪意があるわけではなく、女性社員の負担を減らす「配慮」だと考えているケースもあります。たとえば、夜遅い時間や男性ばかりの席にいることが女性にとって精神的な負担になると、部長が一方的に思い込んでいることも考えられます。

しかし、こうした部長の考えが、結果的に女性差別につながることは否定できません。

キャリア機会の損失: 懇親会は、仕事上の関係を深める重要な場です。ここに参加できないことで、人脈形成や情報収集の機会が失われ、男性社員との間に差が生まれる可能性があります。これは、昇進やキャリアアップの機会に直接影響する可能性があります。

主体性の無視: 懇親会に参加するかどうかは、基本的には社員一人ひとりが判断すべきことです。参加したいというあなたの意思を無視し、性別を理由に一律に禁止することは、個人の主体性を尊重しない行為です。

取るべき対応

本来は「女性を排除する」のではなく、会社として適切な安全配慮やルール整備(例えば二次会禁止、深夜帯参加の制限、ハラスメント相談窓口の設置など)によって対応すべき問題です。

リスク管理を理由に「女性を外す」というのは、安易で不適切な対応です。

ただし、感情的に反発するのではなく、冷静に、かつ建設的に話を進めることが重要です。

  1. 部長に直接、意思を伝える: まずは、あなたが懇親会への参加を望んでいる理由を、具体的に部長に伝えてみましょう。「部長のおっしゃることは、私たちを守るためのご配慮だと思います。ただ、懇親会は取引先の方と関係を深めたり、仕事につなげる大事な機会だと感じています。これまで参加させていただいたことが自分の成長にも役立ってきましたので、今後は参加できないとなると少し不安です。リスクを減らしながらも、女性も参加できるような形を考えていただけないでしょうか。」などを、落ち着いて説明してください。
  2. 会社の相談窓口を利用する: 部長との話が難航する場合や、納得のいく回答が得られない場合は、人事部やハラスメント相談窓口など、会社の正式な窓口に相談することを検討してください。個人で悩むのではなく、組織としてこの問題に向き合ってもらうことが大切です。例えば「部長から『今後は女性は懇親会に参加させない』というお話がありました。安全のご配慮かと思うのですが、懇親会は仕事の一環として取引先と関係を築ける大事な場なので、女性だけ参加できないのは不公平に感じています。安心して参加できるルール作りなどで対応できないか、ご検討いただけるとありがたいです。」などを、落ち着いて説明してください。
  3. 同僚と連携する: もし同じように考えている女性社員や、あなたの意見に賛同してくれる男性社員がいれば、一緒に声を上げることも有効です。個人の意見としてではなく、部署やチーム全体の意見として伝えることで、部長も真剣に耳を傾ける可能性が高まります。

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