Last Updated on 2025年8月25日 by 勝
中途入社で1年経ちました。この会社は、定時で帰る人はいなくて、残業する日でなくても30分くらい仕事してから帰ります。先日、「こういうのは残業はつかないんですかね」と軽く言ってみたら、課長から「お前は貰うことしか考えていないのか。就業時間内は1分も休まず働いているのか、なんだったら手を休めている時間を測って全部差っ引いてやろうか。差し引いていないんだからグダグダ言わずに少しでも多く働け。」と脅すように言われました。あまりことを荒立てる気はないのですが、勤務中に仕事をしていない時間があれば差っ引けるものなのか、教えてくれませんか。
結論から言うと、勤務時間中に仕事をしていない時間があったからといって、その時間を給料から引くことは認められません。
労働時間とは
判例等では「労働者が使用者の指揮命令下にある時間」を労働時間とみなします。したがって、次の仕事に入る前にただ座っていた時間(いわゆる手待ち時間)も労働時間に含まれます。
勤務中に多少の休憩や雑談があったとしても、それをいちいち測って賃金から差し引くことはできません。労働時間のカウントは「使用者の管理下にあるかどうか」で判断されるため、労働者が勝手に席を外して長時間私的行為をしているなど、明確に「労務提供していない」と言える時間でなければ、差し引く根拠にはなりません。
それに、会社が従業員の給与から何かを差し引くためには、就業規則にその根拠が明記されており、かつその内容が合理的である必要があります。単に「仕事をしていない時間」という曖昧な理由で給与を差し引くことは、労働基準法第24条に定められている「賃金の全額払い」の原則に反する可能性が高いです。
つまり、課長の発言は、あなたを威圧し、残業代の請求を諦めさせるためのものだと思われます。法的な根拠に基づいたものではないため、真に受ける必要はありません。
定時後30分の慣習的な居残りについて
法定労働時間(通常は1日8時間、週40時間)や就業規則で定めた所定労働時間を超えて働いた分は、たとえ1分でも時間外労働です。法定労働時間を超えていれば割増賃金も払う必要があります。
このような場合、会社側が「指示していないから残業ではない」と主張するケースがありますが、職場の雰囲気や慣習で事実上帰れない状況であれば、会社の黙示の指示(明確な指示ではないが実質的に仕向けている)とみなされ、労働時間に含まれます。
結論
勤務中の「手を休めた時間」を会社が差し引くことは、できません。裁判ではほぼ通用しない主張です。
定時後30分の作業は、時間外労働とみなされる可能性が高いでしょう。
つまり、課長の「手を休めた時間を差し引く」という発言は、根拠のない脅し文句であって、現実に通用することではありません。
荒立てたくないお気持ちとのことですが、このような(パワハラの可能性が高い)発言が今後も続く可能性があります。また、サービス残業の問題も重要です。きちんと対応していくためには、今後は、記録(出退勤時間、日々の残業の状況、言われた言葉)を残しておくことが大切です。
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