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懲戒処分

無断欠勤したので就業規則の定めに則って解雇しましたが問題ありませんね?

Last Updated on 2025年8月26日 by

当社の就業規則には3日以上の無断欠勤は解雇と明記されています。従業員の一人が無断欠勤を始めてから3日経ったので、すぐに解雇通知書を郵送しました。その後、1週間経っても返事がないので、給料の精算をして、職安や年金事務所にも退職に伴う手続きをしました。離職票などは本人に郵送しました。就業規則に書いてある通りの処分なので問題ないと思うのですが、何かリスクはありますか?

これは問題がありそうです。以下で解説します。

就業規則に書いているから良いとは言えない

まず、就業規則に「3日以上の無断欠勤は解雇」と定められていても、それだけで即座に解雇が有効になるとは限りません。

労働契約法第16条には「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定めています。

解雇について就業規則に定めるのは必要なことですが、それは、一つの要素にすぎません。実際に解雇するときは、さらに、いろいろな観点から考えて実施しなければなりません。

次に、裁判になった場合、そもそも「3日以上の無断欠勤は解雇」という規定は「短すぎる」と判断される可能性があります。

何日なら良いという決まりはありません。少し古い通達ですが、「昭和63年3月14日付け基発第150号、昭和31年3月1日付け基発第111号、昭和23年11月11日付け基発第1637号」では、労働者の責めに帰すべき事由」の一つに、「原則として2週間以上の正当な理由なく無断欠勤し、出勤の督促に応じない場合」と例示しているのが参考になるかもしれません。

事例から考えられるリスク

解雇予告のリスク

解雇するには、原則30日前の解雇予告か30日相当分の解雇予告手当が必要です(労働基準法第20条)。無断欠勤を理由に「懲戒解雇」した場合でも、予告手当が不要になるには労働基準監督署長の認定が必要です。

ご相談内容には予告手当について書いていませんが、もし払っていないなら、請求されるリスクがあります。

欠勤理由によるリスク

無断欠勤の原因が、職場でのハラスメント等にある場合があります。後日、そのような主張があった場合は、解雇無効となる可能性が高いです。

無断欠勤している理由に思い当たることがないか、本人の周辺を調査する必要があります。

無断欠勤の理由が、本人の意図しないやむを得ない事情(例えば、事故に遭った、病気で動けなかったなど)だった場合、「合理的な理由」を欠いていると判断されるでしょう。

上で述べた「病気で動けなかった」には高熱を出していた、だけでなく、メンタル不調で連絡がとれなかったという場合も含まれます。

以上のように、無断欠勤には多くの場合は理由があるので、単に何日経過したからという形式的条件を満たしたとして処分するのはリスキーです。

連絡・確認不足のリスク

無断欠勤が始まってから3日という短い期間だと、本人への連絡や状況確認が不十分だとされ、解雇が無効となるリスクが高まります。

つまり、就業規則に3日と書いてあるとしても、連絡・確認の努力をどの程度したかが後日問題になります。

  • 本人への連絡:電話やメール、書面など、複数の方法で連絡を試みる。
  • 家族などへの連絡:本人の状況が不明な場合、緊急連絡先として登録されている家族に連絡を取る。
  • 書面による警告:無断欠勤が続けば解雇となる旨を記した警告書を郵送または交付する。

これらの手続きを踏まずに、いきなり解雇通知書を送付した場合、解雇の有効性が争われる可能性があります。

懲戒手順のリスク

解雇する場合は、社内手続きをきちんと行う必要があります。特に、懲戒解雇の場合は手続きが重要です。

  • 充分に調査したか
  • 会議(懲戒委員会等)を開いて審議したか
  • 本人の弁明を聴いたか

関連記事:懲戒処分をするときの注意点

今後の対応について

解雇以外の選択肢

無断欠勤を理由に解雇するのではなく、状況に応じて、普通退職として処理することも検討しましょう。

就業規則に、「〇日以上連絡なく無断欠勤し、会社からの連絡にも応じない場合は、会社からの最終通知後〇日を経過した日をもって退職とする」という規定があれば、解雇とは異なり、会社側の意思表示がなくても退職が成立するため、解雇紛争のリスクを低減できます。

解雇不当で訴えられたら

本人が後で「解雇は不当」「退職の意思はなかった」と争ってくる可能性があります。そうした場合、「就業規則に3日と書いてある」というだけでは通らない可能性があります。会社としては、本人の欠勤理由が処分に値するものであることを説明し、解雇に至るまでに十分な努力をしたことを証明する必要が出てきます。

また、離職票には「会社都合退職(解雇)」と記載したと思われますが、このような場面では、本人の主張と食い違いがでることが考えられ、手続きがやり直しになるリスクがあります。

解雇に関する問題は、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談することもご検討ください。


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