Last Updated on 2025年8月26日 by 勝
従業員が破廉恥な犯罪で逮捕されました。会社としてはすぐに解雇したいのですが、当人についた弁護士は、帰宅後の事件なので会社の就業規則は適用されないはずだ、執行猶予がつくと思うし、実刑がついても数年で社会復帰する、戻ったときに仕事がないと辛いので解雇されれば不当解雇で争う。と言っているそうです。とんでもない主張だと思います。何としても復帰させないつもりですが、どう対応すればよいか教えてください。
結論から言うと、「私生活上の非行」でも、企業の社会的信用や職務遂行に重大な悪影響が及ぶ場合は懲戒解雇・普通解雇の対象になり得る、というのが裁判例の流れです。ただし、解雇有効性をめぐって争いになったときは、どのような判決が出るかわかりません。リスクが高いので、慎重に手順を踏んで進める必要があります。
会社として検討すべき事項
- 就業規則の確認
- 「社員が刑事事件を起こして逮捕・起訴された場合」「会社の信用を著しく失墜させた場合」など、懲戒解雇や諭旨解雇の条項があるか確認しましょう。社会的評価を失墜させる行為が懲戒事由に含まれている会社は多いです。
- 犯罪内容と職務の関連性の検討
- 破廉恥罪(性犯罪やわいせつ系など)の場合、会社の社会的信用への影響は大きいです。その社員が対外的に顧客接点がある職種なら、特に重大です。つまり、「私生活だから関係ない」とは必ずしも言えません。
- ただし、勤務時間外の行為そのものを懲戒対象にすることはできません。
- 処分の選択肢
- 懲戒解雇:一番重い処分。裁判になれば争われやすい。
- 諭旨解雇/退職勧奨:争いを避けやすい。合意退職に持ち込むことも選択肢。
- 休職→自然退職:有罪判決で服役する場合、「一定期間の休職期間満了により自然退職」も可能。
- 手続きの適正確保
- 就業規則に基づき、本人に弁明の機会を与える。
- 処分理由を文書で明示する。社会的信用や業務影響を具体的に示す。
主張への反論
- 「私生活上の行為でも、会社の名誉や業務に重大な影響を及ぼす場合は懲戒事由になる」→ 裁判例上も認められている。
- 「執行猶予つきなら解雇できない」→ 執行猶予の有無ではなく、事実の重大性と会社への影響が判断基準。
- 「戻ったときに仕事がないと困る」→ 会社は福祉施設ではない。会社の秩序維持・信用保持のために解雇が有効とされる余地は十分ある。
安全な進め方
- 当方も速やかに弁護士を依頼する。
- 事実誤認・冤罪の可能性もあります。早い段階で「破廉恥な犯罪を犯した」と断定して行動すると名誉棄損など別な問題になることもあります。
- 従業員・取引先への説明は最小限にしましょう。名誉毀損リスクもあるので注意が必要です。
- 本人から退職願が提出されれば通常の退職として処理できます。争いを持ち越すこと無く決着できます。
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