休憩時間を分割することについて検討してみました

労働時間

Last Updated on 2025年10月4日 by

労働基準法が定める休憩時間についての質問です。休憩時間を分割して、昼休みを30分、残りは10分を3回に分割して与える、具体的には、午前10時に10分、昼に30分、午後2時に10分、午後4時に10分、計60分とするのはどうでしょうか。

労働基準法上、休憩時間の分割自体は問題ありません。合計で60分の休憩時間(労働時間が8時間を超える場合に必要とされる法定の最低限度)が確保できています。しかし、この分割方法にはいくつかの問題点注意点があります。

問題点

ご提示の分割方法(10分、30分、10分、10分の計60分)で最も大きな問題となるのは、休憩の本来の目的が達成できるかという点です。

  • 休息の確保: 休憩時間は、労働者が疲労を回復し、労働から完全に離れて自由に行動できることが保障されなければなりません(休憩自由利用の原則)。10分という短い休憩では、食事や十分なリフレッシュ、私用を済ませるなどの自由な利用が難しく、「手待ち時間」と見なされて休憩として認められないリスクがあります。
  • 食事時間の確保: 特に昼食を含む休憩は、ある程度のまとまった時間が必要です。30分の中断はあるものの、これだけで十分な食事と休息が確保できるか、という懸念があります。一般的には、食事を含む休息は30分以上など、余裕を持たせる配慮が推奨されます。
  • 細分化の限界: 休憩を分割すること自体に問題はありませんが、細分化には限度があると考えられており、極端に短い休憩を繰り返すことは、労働者に不利益を与え、結果として不合理と判断される可能性があります。

10分の休憩についての補足

前述したように、短い休憩時間に関しては、「休憩時間の自由利用の原則」の観点から、その実効性が問題になることがあります。これについて、もう少し詳しく解説します。

労働基準法の規定

労働基準法第34条では、労働時間に応じて次の休憩時間の付与を義務付けています。

  • 労働時間が6時間を超える場合少なくとも45分
  • 労働時間が8時間を超える場合少なくとも1時間(60分)

ご提示の例は合計で60分であり、8時間を超える労働時間に対しては最低限の基準を満たしています。また、休憩時間は労働時間の途中に与える必要があります。

休憩が10分であれば休憩として認められず「労働時間」とカウントすべきという明確な法律や判例の基準はありませんが、実質的に自由な利用が不可能であれば、それは休憩とは認められず、労働時間と見なされる可能性が高まります。

労働基準法における「休憩時間」と認められるためには、以下の3つの原則を満たす必要があります。特にご質問は「自由利用の原則」に関わります。

  1. 途中付与の原則: 休憩は労働時間の途中に与えること。
  2. 一斉付与の原則: 休憩は全労働者に一斉に与えること。(ただし、労使協定や特定の業種では例外あり)
  3. 自由利用の原則: 休憩時間は、労働者が自由に利用できること

この自由利用の原則について検討します。

10分休憩と自由利用の原則

  • 問題となるのは「実質」: 10分という短い時間であっても、労働者がその場を離れたり、私用を済ませたり、食事をしたりと、業務から完全に解放されて自由に過ごせる状態であれば、法的な「休憩時間」として認められます。
  • 労働時間と見なされる可能性: しかし、「10分では着替えや移動に時間を取られ、喫煙や飲み物を買う以外に実質的な自由な行動ができない」「次の業務への準備のために結局職場の近くで待機していなければならない」など、自由な利用が事実上不可能な状態であれば、それは休憩時間とは言えず、労働時間と見なされるべきという主張や議論は起こり得ます。
    • 特に、極端な短時間の分割(例:5分休憩など)や、休息のための食事時間が確保できないほどの分割は、休憩時間の趣旨を損なうとして、行政通達や一部の判例でも問題視されています。

裁判例と行政指導の傾向

裁判例や行政解釈では、休憩時間とされている時間でも、以下のような場合は労働時間と判断されています。

  • 待機義務がある場合: 休憩時間中であっても、電話や来客に対応するよう義務付けられている、または突発的な事態に備えて待機を命じられている(手待ち時間)場合。
  • 行動の制約が著しい場合: 休憩時間中の外出を不当に禁止するなど、行動の自由が著しく制限されている場合。

企業が2時間ごとに10分の休憩を与えたとしても、それが「休憩」として認められるかどうかは、その10分間に労働者がどれだけ業務から解放され、自由に過ごせるかという実態によって判断されます。


以上の観点からまとめると、通常の昼休みの他に10分の短い休憩を入れることは全く問題ありませんが、昼休みを削って分割した休憩を追加するのは、避けることが望ましい言えるでしょう