Last Updated on 2025年10月1日 by 勝
編集・修正が不可欠な理由
「回答の確認・編集とナレッジの整理」は、省略できない最も重要なステップです。このプロセスを省略すると、FAQの信頼性が失われ、人事部門の業務効率化という目標を達成できなくなります。
NotebookLMのAIは非常に優秀ですが、アップロードされたドキュメントを基に回答を「生成」しているだけであり、それが法的に正確であるか、または会社の現状に即した最新かつ唯一の正しい情報であるかを保証する機能はありません。
1. 法的リスクの回避と正確性の確保
就業規則やマニュアルは、労働条件や会社のルールを定めた法的・組織的な文書です。AIが生成した回答をそのまま社員に提供すると、以下のようなリスクが生じます。
- 誤った法的解釈: AIが条文を誤解したり、文脈を無視したりして、不正確な法的アドバイスのような回答を生成する可能性があります。
- 情報源の古さ: 資料が最新版であっても、AIの解釈が法改正のニュアンスに対応できていない場合があります。
- 不完全な回答: 複数の規定にまたがる複雑な質問に対し、AIが一つの情報源からの回答しか提示せず、情報が欠落する可能性があります。
2. 会社のポリシーやトーンの統一
AIが生成する回答は、必ずしも社内文書として適切なトーン(文体)や会社の正式なポリシーを反映しているとは限りません。
- トーンの調整: 「〜〜してください」といった表現を「〜〜が必要です」や「詳細については〇〇部署に確認してください」といった人事部門の正式な回答としてのトーンに整える必要があります。
- 例外規定の追加: AIは規則の原則を回答しますが、「ただし、特定の部署や役職には例外がある」といった運用上の注意点や例外規定を追記することで、より実用的なFAQになります。
3. AIの回答精度を向上させる「ナレッジの整理」
編集・確認済みの回答をNotebookLMのメモ機能などに「正解データ」として整理して保存することが、次の利用者の回答精度向上に直結します。
この整理されたナレッジは、AIが次に同じような質問を受けた際に、アップロードされた元の文書だけでなく、「人事部門が確認・承認した回答」を優先的に参照するよう助け、回答の品質を継続的に改善していきます。
多少時間を要したとしても、このステップで「人事部門が責任を持って保証するナレッジベース」を確立することが、将来的に問い合わせ対応にかかる時間と労力を大幅に削減するための初期投資となります。
まとめ
NotebookLMを使って正確なFAQベースを構築できれば、運用段階での手間は格段に少なくなります。
導入段階で「正確なナレッジベースを構築する」という手間をかけることで、運用段階では以下のことが主な作業となります。
1. 導入段階:最大の労力が必要なフェーズ
この段階で、最も時間がかかるのが「ステップ3:回答の確認・編集とナレッジの整理」です。
導入フェーズの作業 | 目的 |
資料のアップロード | AIの回答源を用意する。 |
網羅的な質問の試行 | AIの回答の抜け漏れや、解釈の誤りがないかを徹底的に検証する。 |
回答の確認・編集 | 法的正確性、社内トーン、例外規定を盛り込み、回答を人事部門の公式見解として確立する。 |
ナレッジの整理 | 編集済みの回答をメモに保存し、AIの回答精度を継続的に高めるための「教師データ」として整理する。 |
2. 運用段階:アップデートとメンテナンスが中心
正確なナレッジベースが構築された後は、基本的な問い合わせはAIが対応してくれるため、作業負荷は大幅に軽減されます。
運用フェーズの作業 | 目的 |
規程等の変更時のアップデート | 就業規則やマニュアルが変更された場合、最新版をアップロードし直す(あるいは古い資料を削除し、最新版に置き換える)。 |
変更箇所の検証 | 変更された規程に関連する質問を試行し、AIの回答が新しい規定に基づいているかをピンポイントで確認・修正する。 |
新しい質問への対応 | これまでになかった新しいタイプの問い合わせがあった場合、その質問と回答をナレッジベース(メモ)に追加・整理する。 |
つまり、導入段階で網羅的に正確性を担保した「土台」を作ってしまえば、運用段階では「変更点の修正」と「新しいナレッジの追加」という最小限のメンテナンスで済むようになります。これが、NotebookLM導入による最大のメリットと言えます。