応募書類の取り扱いについては適切な対応が求められます。主なポイントと一般的な対応方法をまとめました。
法律上の義務と基本原則
- 個人情報保護法:履歴書に記載されている氏名、住所、職歴などはすべて個人情報です。
- 利用目的の達成に必要な範囲内で利用:採用選考という目的が終了した後は、利用目的を達成したと見なされます。
- 目的外利用の禁止:他の目的(例:将来の募集時の参考)で保管する場合は、改めて本人の同意を得るか、最初にその目的を明示しておく必要があります。
- 安全管理措置:漏洩、滅失、毀損の防止のため、適切な安全管理措置(鍵のかかるロッカー、アクセス制限されたデータフォルダなど)を講じる義務があります。
- 労働基準法:労働関係の重要な書類は、一定期間(原則3年、または5年)の保存が義務付けられていますが、不採用者の応募書類は、この「労働関係の重要な書類」には含まれないと解釈されます。
一般的な対応方法
応募書類の取り扱いについて、企業が取る方法は大きく分けて以下の3つがあります。
速やかな返却
個人情報漏洩のリスクを最小限に抑えられるます。法的な義務(利用目的達成後の廃棄努力)を最も確実に果たすことができます。
返却されていない、というようなトラブルを回避するために、返却の記録を残しましょう。
速やかな廃棄
速やかな返却と同様に、個人情報漏洩のリスクを最小限に抑えられるます。法的な義務(利用目的達成後の廃棄努力)を最も確実に果たすことができます。
不採用になった応募者から、なんらかの問い合わせや要望があったときに、記録がないので対応しにくいというリスクがあります。
一定期間保管後の廃棄
不採用になった応募者から、なんらかの問い合わせや要望があったときに対応が容易です。
ただし、保管している間、個人情報の管理責任が発生し続けます。
推奨される手順
応募時に取り扱いを明示する
応募要項などに「不採用者の履歴書等の応募書類は〇ヶ月後に当社において責任を持って廃棄する」「返却を希望する場合はその旨を記載する」など、取り扱い方法について明記します。
保管
保管する場合は、人事担当者など特定の権限者以外がアクセスできないよう、厳重に管理してください。
廃棄(個人情報の復元不可能な処理)
重要書類の廃棄を引き受ける専門業者に依頼して正規の受領証をとっとおくと安心ですが、近隣にない場合、自社で確実に廃棄処理を行うことが求められます。
シュレッダーの選定と実行
- 推奨されるシュレッダー方式:単なるストレートカット(短冊状)ではなく、クロスカット(細断片が格子状)やマイクロカット(より細かな裁断)方式のシュレッダーを使用することを推奨します。
- 実行時の注意:処理は、人事担当者など特定の信頼できる人物が行い、他の書類や一般ごみと混ざらないよう注意して行ってください。
ゴミ収集に出す際の工夫
シュレッダー処理後の紙くずは、そのままゴミ袋に入れるだけでなく、例えば、少量ずつ分散して出す、他の紙ごみと混ぜる、不透明な袋を使用する等、さらに工夫をすることで、情報漏洩リスクを低減できます。
返却(希望者のみ)
返却は、書留など、受け取り確認ができる方法で返送しましょう。
データの削除について
入力送信されたエントリーシート等のデータ、応募者とのメールのやりとり(個人情報が含まれたもの)についても、紙の履歴書と同様に、不採用が決定し選考目的が達成された後は、適切な取り扱いが必要です。
選考情報の取り扱い(注意喚起文書)
応募書類の返却ルールや管理体制の厳守を求める、面接担当者向けの注意喚起文書のサンプルを作成しました。
応募者個人情報および面接関連資料の厳重な取り扱いについて(注意喚起)
関係各位
人事部
この度も面接業務にご協力いただきありがとうございます。
応募者の個人情報を含む面接関連資料は、個人情報保護法および弊社の情報セキュリティ規定に基づき、最も厳重に管理すべき機密情報です。特に多数の応募者様に対応いただいている現在、情報管理の徹底を改めてお願いいたします。
万が一、資料の紛失や情報漏洩が発生した場合、会社の信用失墜、法的責任、そして応募者の方々への甚大なご迷惑につながります。下記のルールを厳守してください。
1. 資料の保管と携行に関する厳守事項
- 社外への持ち出しの禁止:
- 面接関連資料は、社外への持ち出しを一切禁止します。面接直前の確認は、必ず社内にて行ってください。
- 面接会場が社外に設定されている等、やむを得ず持ち出しが必要な場合は、必ず事前に人事担当者の承認を得てください。
- 保管場所の徹底:
- 面接に使用しない時間は、デスク上に放置せず、鍵のかかる引き出しやロッカーに保管してください。
- 面接室への移動時、離席時は、資料を常に手元から離さないようにしてください。
- 電子データ化の禁止:
- 資料をスキャンしてPCやスマートフォン、クラウドサービスに保存することを禁止します。
2. 資料の複製(コピー)に関する厳守事項
- 再コピーの禁止:
- 人事部からお渡しした資料(履歴書、ES、評価シートなど)は、いかなる理由があっても、面接担当者による再度のコピーを禁止します。
- 面接担当者が別途必要なメモや評価は、人事部から提供された所定の評価シートのみに記入してください。
3. 資料の返却(廃棄)に関する厳守事項
面接が終了した資料は、面接直後(やむを得ない事情があるときは当日中)に、資料一式を封筒に入れ封緘し、人事部の〇〇(担当者名)に提出してください。資料を一時的に保管する必要がある場合、必ずその旨を人事部に報告し、承認を得てください。
資料(特に応募者の個人情報が記載された部分)を、面接担当者自身の判断でシュレッダーにかけること、または一般ごみとして廃棄することを厳禁とします。全ての資料は人事部にて一括管理・処理します。
