会社法上の「役員」と、一般的な「役員」は違う?

Last Updated on 2025年9月11日 by

企業組織の中でよく耳にする「役員」という言葉。私たちはこの言葉から、社長や専務、常務といった会社のトップ層を思い浮かべます。しかし、実はこの「役員」という言葉、法律上の定義と世間一般の認識には少しズレがあることをご存じでしょうか。この違いを理解することは、会社の組織構造を正しく理解する上で非常に重要です。

会社法が定める「役員」の範囲

日本の法律である会社法では、「役員」の範囲を明確に定めています。会社法第329条によると、「役員」とは「取締役、会計参与、及び監査役」 の三つを指します。

この定義は厳密であり、これら三つの役職が法律上の「役員」として、会社に対する忠実義務や善管注意義務といった重い責任を負います。

さらに、会社法第423条では、これら「役員」に加えて、「執行役」や「会計監査人」も含めて「役員等」 と呼称しています。この「等」がついていることからもわかるように、執行役や会計監査人は、法律上の「役員」とは区別される のです。

特に注意が必要なのが、「執行役員」という役職です。会社法上、「執行役員」という役職はなく、法律上は「使用人(従業員)」 に分類されます。しかし、多くの会社では、その名称に「役員」とついていることもあり、一般的には役員として扱われます。

これは、執行役員が取締役会で決定された経営方針に基づき、業務執行を行う重要な役割を担っているためです。法的な責任範囲は異なりますが、組織内での位置づけや役割は、一般的な「役員」とほぼ同義と言えます。

社会で使われる「役員」はもっと広い

会社法が定める厳格な定義とは対照的に、一般社会で使われる「役員」は、もっと広い意味合いを持ちます。

一般的に「役員」とは、会社の経営に携わる上級管理職の総称 として使われています。具体的には、代表取締役、社長、専務、常務、取締役、監査役など、会社組織のトップに位置する人々を指します。また、NPO法人や社団法人など、法人によっては理事長、理事、監事といった役職も「役員」として認識されています。

さらに、会社によっては、部長や本部長といった上級の管理職まで含めて「役員」と呼ぶこともあります。このように、どこからどこまでが「役員」であるかという明確な法的基準はなく、その範囲は各社の慣習や規定によって異なります。

近年はあまり使われなくなりましたが、「重役」という言葉も、「役員」と同義で使われていました。「重役」という言葉は、文字通り「重い役職」を意味し、会社の経営において重要な役割を担う役員を指します。以前は「重役会議」などのように、重要な決定を行う役員が集まる場を指す言葉として広く使われていました。

共通しているのは、これらの人々が会社の経営に深く関与し、重要な意思決定を行う役割を担っているという点です。

法律上の定義と、社会的な認識の違いを理解しておくことで、企業組織の構造や各役職の役割をより深く理解することができるでしょう。


会社事務入門株式会社の仕組みと運営のポイント>このページ